最近の魔法少女は魔法を放たない。
全く未知のことであったが、日加理にはどうしたらいいのかが自然とわかった。
何の機器も使わず身一つで空を飛ぶという体験に現状も忘れて気分が高揚する。
「ひ、日加理君、魔法の使い方がわかるのかい!?」
酷く驚いたような声で八坂が尋ねてくる。
「そ、そうか。だが魔法も無限に使いつづけられるわけじゃない。MPの消費には気をつけて!」
…そんなものがあるのか。ますます虚構感が増してきたような気がする。
「…MP。マジックポイント?」
一応尋ねてみる。
「いや、マネーパワー(大人の力)だ。大抵のことはできるが、魔法でも出来ないことはある。油断しないようにね」
いや、何が出来て何が出来ないのかちゃんと教えて欲しいんだけど…
そこでちょうど程よい高さになったので、態勢を替えて前方へと移動する。距離があるが、身体を巡る光を両目に集中すると、その姿がはっきりと映る。
白熊芳一。
日加理の頭に思い浮かんだのはそれだった。
全身をミミズののたうちまわったような黒い模様が覆っている。
その場に留まっているのは恐らくは日本へと再び渡ろうとしているのだろう。
芳一(仮)の頭上に辿りついたところで魔法による浮遊を切る。重力に引かれる身体はきりもみ状態になりそうなのを必死に制御し、緩めるどころかむしろ加速する。
ーーー気付かれて避けられないように。
上空30M程で芳一は異変に気づき顔を上げたが遅い!むしろ好機だ。瞬間に魔法で自分を単一の存在にすると同時に、落下速度も全てのっけて芳一の眉間を貫く。
「せぇっけん、づきぃいいい!」
ドンっと音が響いて、灰色の土煙りが舞い上がり、視界は一切見えなくなる。
「ええええええぇええ!?」
研究所でモニターしていた職員たちが一斉に疑問の声を上げた。
煙りが拡散し薄れてくると、人影がボンヤリと見える。傍に倒れ伏す芳一を見下ろしていて、一切怪我とかはないように見えた。
「ごめんね」
口元が動いたものの、その声はモニター室には届かなかった。




