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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
●書き下ろしSS
428/433

SS7『変なもの』

 ある日。

 雅ヶ丘付近のファミリーレストランにて。




「なあなあ! センパイ」

「どうしました、今野(こんの)林太郎(りんたろう)くん」

「センパイって、バイトとかしたことある?」

「……あー。ありませんね」

「えっ。一度も?」

「ええ」

「そーなんだ。ちなみに俺っち、ここでバイトしてたこと、あるんだぜ」

「ここって、――いま私たちが休憩してる、このファミレスですか?」

「ああ」

「へえ。ちょっと意外だな。林太郎くんが、まともな仕事を……」

「っつっても、すぐ首になったけど」

「えっ、なんで?」

「ちょっと小腹が空いたから、野ネズミをここのキッチンで捌いて喰ったんだ」

「ネズミって……ええ……」

「っつっても、モチロン生じゃないぜ? ちゃーんと火を通したさ」

「いやいやいや。そーいう問題じゃないでしょ」

「えーっ。山ン中じゃあ、ヘーキで喰ってたけどなあ? 調理器具の消毒もちゃんとしたし。何が問題かわからん」

「……ねえ、林太郎くん」

「ん?」

「もし今後、あなたが料理の腕を振るう時がきたら必ず、素材に何を使ったか教えて下さいね」

「いいけど……あ、ひょっとしてセンパイも喰いたい? ネズミ。たぶん探せばまだ、この辺にいると思うけど……」

「ノー。永遠にノー」







 後日。

 雅ヶ丘高校、とある教室にて。




「なあなあ、センパイ」

「どうしました、林太郎くん」

「この前の探索中さ、ちょっと話、したじゃん。俺っちの料理の腕がどーとかって」

「探索中? ……ああ、ファミレスで」

「そうそう。そんでさ、ちょっと思いついてさ。作ってみたんだよ。料理を」

「はあ」

「ってことで、……じゃーん! 近所の公園に生えてた野草だけで作った天ぷら!」

「あっ、ごめんなさい私、ちょっといまお腹の調子が悪くて」

「まあまあ! そう言わないでくれよ! これ、集めるのに、コースケや明日香にも手伝ってもらったんだから」

「さよならっ」

「待てよ、待てって、……うわあ、すごい力!」

「離して……離して! 私はまだ、綺麗な身体でいたいの……」

「ちょ、ちょ、ちょちょ、誤解されるようなこと、言わないでくれ! 理津子に聞かれたら殺されちまう!」

「でもぉ……」

「安心してくれ! ちゃんとよく水洗いしたし、変なものは一切入ってない。ヨモギとか、ユキノシタ、三つ葉とか、そんなんだよ!」

「それなら、……テレビで食べてるの、聞いたことあるかも」

「あと、こっちの水筒には、タンポポの珈琲が入ってる。有名なドラマでも飲んでたやつ。これがうまいんだ。みんなにも好評でさ」

「ううむ」

「ほら、ほら! 天ぷらの味付けは、ちょっと塩を振るだけで大丈夫だぜ」

「そこまで言うなら……(もしゃ、もしゃ)」

「どうだ?」

「うーん。……まあ、食べれないことも、ないですね」

「だろ?」

「でも、ヨモギはちょっと香りに癖があるというか。ユキノシタはなんかモチモチしてて気持ち悪いし。三つ葉はこれ、歯ごたえがありすぎて……噛みきれない」

「センパイ、都会ッ子だなぁ」

「おっしゃるとおりの都会育ちでございます」

「でもこれで、都内の野草でも食えるものがあるって、わかったろ?」

「……はあ」

「こういう知識って、意外なところで役に立つからさ。……特にセンパイたちにとって、食えるものとそうでないものの情報は、ギリギリのとこで命を救うんじゃないかって……」

「なるほど。”魔力切れ”のことですか」

「ああ。新入りのあの娘に聞いたんだ。食い物が足りなくなった”プレイヤー”は、例のあの、不思議な力をなくしちまうって」

「……心配してくれたんですね」

「そんなとこ」

「ありがとう。林太郎くん」

「へへへっ」

「それじゃ、タンポポの珈琲もいただきましょう」

「これはうまいぜえ。みんなも喜んでくれたからな」

「へえ(ごくり)。……おや、これなんか、甘いツブツブが……」

「ああそれ? 隠し味だぜ」

「えっ?」

「ついでに採れた蜂の子を甘露煮にしたんだ」

「はち……のこ……?」

「ああ。たしか、瓶詰めにしたものがポケットに……これこれ」

「……………ッ」

「どした?」

「――虫じゃねえか!」

「へ? 何かまずかったか?」

「変なものは入ってないって、そう言ったのに!」

「蜂の子のどこが”変なもの”なんだ? 山間部ではわりと有名なタンパク源だぞ」

「……ううっ。うううう! もういい! 知りません、林太郎くんのことなんか!」

「あれ? 俺っち、なんかやらかしたか? ちょっと待ってくれよ! おーい、センパーイ……」


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