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04-Ⅰ

皆さん、100ですよ!ブクマが!

いや、ありがたいです、ほんと

 ······難しい。

 私は今、錬金術を用いて件の設計図の銃を作成している。しかし、製作にあたって僅かな歪みも許されないので慣れない数値思考で錬成しているのだが、これまた難しい。イメージによる錬成とはまた違った難しさがあり、上手くいかないのが現状だ。


 大体の外装パーツは完成してはいるのだが、今やっているような魔方陣を刻む必要のあるパーツに苦戦している。それも当然、マイクロ単位の精密作業だから苦戦して然るべき、ってわけ。

 失敗してはやり直し、失敗してはやり直しを繰り返し、たぶん三桁は越えたが詳しく数えていないので分からない。

 何度投げ捨てて放り出したくなったことか。今の私を突き動かすものは、ただの意地だ。イライラ棒をしている時にもこんな気分になったものだ。


 今刻んでいるのは、電気に変換した魔力を効率的に運動エネルギーへと変換するものだ。ローレンツ力がどうとか説明しづらいので詳しくは省略する。

 つい夢中になって時間を忘れて没頭する。失敗の回数はどんどん増えていく。そしてその分意地になる。そんなスパイラルが繰り返されているのだ。


 それにしても、こんなに楽しいのは久しぶりな気がする。魔法の練習も楽しかった。描写したことはないが、調薬も楽しかった。それでも、ここまでのめり込むことはなかった。やめられない止まらない、とはこの事かと初めて実感した。師匠が研究室から出てこない気持ちも今なら分かる気がする。


 そう、私はこの時気付いていなかった。先程師匠の気持ちが分かるくらいのめり込んでいる、と言ったが、つまりそれだけ周りが見えていないということ。

 そして、この家で料理が出来るのは私だけ。師匠の料理の腕は新種の魔物を産み出すほどに壊滅的だ。


 つまりは、そう言うことである。



 部屋から出ると師匠がリビングでぶっ倒れていた。

 なんで?


「ぉ、おお。ミリアかぁ······早速で悪いんだが、ごはん、作ってくれ······!」

 ガクリ、と再び倒れ伏した。


 「いや、流石に死ぬかと思ったよ」とは四人前くらいを食べ終えた師匠の言葉である。ちなみに、私も一緒に二人前ほど食べた。

[大袈裟じゃないですか?]

「大袈裟なもんか! 私はミリアのご飯を一食でも抜いてしまえば魔法も発動出来ない体になってしまったんだぞ!」

 流石に大袈裟だと思う。

「いや、本当だ」

 お、おう······そんなに真剣な眼差しで見つめられても困るというかなんというか。

「まさかミリアが二日も出てこないとは思わなかったよ」


 ······二日? そ、そんなに経ってたのか······私もお腹が空いていたわけだ。

「私もよく五徹とかしたものだが、それでも食事はちゃんと摂っていたぞ? まぁ、よく徹夜のし過ぎだと師匠に叱られていたがな」

 懐かしそうに宙を見つめる師匠。

「······その度に霊峰に単身放り込まれたものだ。そもそも自分でもソロ攻略出来ないような人外魔境に可愛い弟子を放り込むとか頭沸いてるよ本当ウフフフフフフフフふぇんりるのむれこわい」


 ガクガクガクガク! と燃え尽きて幼児退行しながら膝抱きで震える師匠。どうやら自分でトラウマを刺激してしまったらしい。はっきり言って、ただの阿呆だ。

 仕方ない。

 ここにただとてつもなく苦いだけの雑草『ニガナジェルド草』、通称『ニガ草』の濃縮液がある。苦そうな名前だがとんでもなく苦い。食後なら確実にリバース······いや、食前でも確実にリバースするような代物だ。それを磨り潰し、煮詰めて濃縮した液体だ。さらに苦味が増し、数日間味覚が死滅するに至っている。そもそも私の味覚は機能していないので、一気飲みしても大丈夫だった。

 こんなニガ草濃縮液だが、強力な殺菌作用などがあるため傷口に塗ったり風邪の時薄めて飲むなどの用途がある。


 その瓶の口を師匠の口に突っ込んだ。

「ぐぼぉふ!? ん"~!? ん"、ん"ん"!?」

 三口ほど飲んだのを確認して、瓶を口から離す。

「うぶっ。ミィア、こえあしゃえにあらない······うぐぶぉ······」

 口元を押さえて、顔の色が混沌に変化したままトイレに駆け込んだ。


 頑張れ師匠、貴女のことは忘れない! 敬礼!

 死んでないけどね。


 師匠が帰ってきた。しかもポーションを飲みながら。

[万能薬(エリクサー)って、勿体なくないですか?]

「それほどの劇薬をミリアは飲ませた自覚はないのか······?」

[私、味覚ないですし]

 万能薬(エリクサー)は、その名の通りあらゆる状態異常を癒すものだ。ついでにHPも全回復する。貴重な材料と特殊な製法によって精製されるため、世界でも片手で数えられる人数しか作ることが出来ない。師匠もその内の一人だ。


「ミリアめ、一応お前は私の奴隷だってこと、忘れてないか?」

[忘れてませんよ。ほら、あれです。好きな子に意地悪したくなるのと同じです]

「子供かっ!」

 正直師匠に言われたくない。

「私ってそんなに威厳無いか?」

[はい、とっても]

「······そんなにストレートに言わなくてもいいだろう······」

[落ち込まないで下さい、師匠]

「落ち込ませたのはお前だぞ······!?」

 なんのことやら。

「······はぁ。もういい。吐いたらお腹空いたから、また何か作ってくれ」

[分かりました]


 さて、また腕を振るいますか。

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