03-Ⅲ
夏休み、太りそう
この世界の歴史。前は創世記と勇者についてを行った。
では今回は?
「今日やるのは、今から百年ほど前の出来事だ」
てことは、師匠は100歳ちょいって頃か。
「この世界に邪神がやって来た。そこで、規律と破壊の女神は異なる世界の人間を招き、加護を与えて邪神を討たせることにした。招かれた人々を私達は渡界人と呼んだんだ」
異世界の人間? 勇者召喚的なものか?
「渡界人は、元の世界とこのエインリヴァブルを行き来しながらレベルを上げていった。さっき教えた精霊憑依も渡界人の一人が編み出したものだ」
行き来する? 勇者召喚とは違うのか? 勇者召喚もののテンプレなら目的を果たすまで帰れないか、そもそも帰る手段が無いかだ。
行き来する、それも多数の人間が。それは勇者召喚ではありえないのではないか。
待てよ。そもそも師匠は一度も渡界人のことを勇者とは言っていない。では渡界人とは一体なんなんだ?
「渡界人が何者なのかは、私でも詳しくは知らない。ただ、ぷれいやーがどうとか言っていたのは覚えているが」
ぷれいやー、プレイヤーか? つまり、ゲームか何かだと?
ゲームアバターのまま異世界転移やゲームの世界に転生ではなく、ログイン先が異世界ってことなのか?
「まぁ、なんか精霊視の魔眼を持ってる奴に精霊魔法の手解きをしてやったこともあったぞ。そいつはまぁ、気が付いたら精霊種・エルフになっていたが」
[エレメンタリィ?]
「簡単に言うとエルフでありながら精霊でもある存在とでも言っておこうか。当然、精霊でもある分精霊との親和性は高かったし、精霊憑依を組み上げたのもそいつだしな」
へぇ。渡界人ってスゴいね。やっぱり異世界知識というか、ゲーム知識? かな。それは異世界でも大いに役に立つ。
この世界は、ファンタジーでよくある科学技術が未発達な世界だ。いや、魔法がある分科学技術の発達が遅れていても成り立つ社会が既に形成されているのだ。だからこそ科学技術の発達した世界の住人である渡界人や、元住人である私にはその分のアドバンテージが存在する。
あらゆる現象を科学的に解明された社会で生活していた私達は、魔法においてもその知識を活かすことが出来る。魔法によって生じる現象も、現れてしまえば科学となんら変わらない。
魔法で大体なんとかなってしまうため、薬品や医療技術なんかもいまいち発達してないのは問題だと思うが。
「そして渡界人の中でも特に強い者達を、私達は十英傑と呼んでいる。全員覚えろとは言わないが、せめて精霊幻想と紫電ぐらいは覚えておいた方がいい」
精霊幻想? 紫電?
「所謂二つ名だよ。精霊幻想は精霊憑依を創った。紫電は雷系に特化した魔法使いで、無詠唱を得意としていたらしい」
なるほど。二人も私の持ち得るモノの先達、と言うわけか。声が出ないので無詠唱は私には必須だし。
「あとは第一位の流水剣だな。神竜様に直接剣を教わったらしく、他の者とは隔絶とした差があったらしい」
その後も、流水剣に関する逸話が語られていく。
曰く、魔法を斬った。
曰く、白い狼型の魔物をテイムしていた。
曰く、ヒュリテ森の爪痕を残した。
曰く、神竜様のお気に入り。
などなど。
ヒュリテ森って今暮らしてる家がある森だよね? 爪痕って家から十分ほど歩いたところにある地面に走る一文字だよね?
てか百年近く前からあったのか、あれ。
「現代にも英雄と呼ぶに足る人物はいるが、古代の勇者や十英傑には劣ってしまう。勇者は魔王討伐に他種族との講和を。十英傑や渡界人は神殺しを成し遂げた者達。竜殺し程度じゃ到底敵わない功績だ」
師匠の声色にはどこか自嘲が含まれているように感じる。
[でも、竜殺しでも十分だと思いますよ。それに、前も言いましたが師匠は私の英雄です]
「······そうか。なら、英雄らしくしなくっちゃな」
[そうやって背伸びするところが師匠らしいです]
「せせせ背伸びちゃうし! せめてカッコつけって言ってくれ!」
なんか関西弁っぽい言葉が出た師匠。それとカッコつけなのは認めるんだ。
[そういえば、師匠に二つ名ってあるんですか?]
十英傑の二つ名が幾つか出た時から少し気になっていたのだ。さっきの発言から竜殺しをしたっぽいし、何かしらの二つ名があるのではないかと思ったのだ。
「わ、私の二つ名か······?」
珍しく嫌そうな顔をする師匠。うげっ、とでも言いたそうだ。
しかしこの反応、何かしらの二つ名があるっぽい。是非聞いてみたいのでコクコクと頷く。
「う、うぅむ······しかしだな、今の話からは関係ないから、また今d」
[にはしません]
「分かった、分かったからこんな時に微笑むな怖い」
失礼な。私みたいな超絶美少女(師匠談)の微笑みが怖いだなんて、ちょっと愉悦してただけじゃないか。
[それで、どんな二つ名だったんですか?」
内心わくわくしながら問い掛ける。
「······────だ」
うん? 聞こえんなぁ(愉悦)
「だ、だから、────、だ」
もっと大きな声で!(愉☆悦)
「だから! 永久少女だ!」
······、······。
······、······うん。なんというか、ね。
ごめんなさい、師匠。笑いが止まりません。
フヒヒヒヒヒヒ、アハハハハハハハハハ! ダ、ダメ、お腹いたい、少女て、師匠にピッタリすぎグフォ、クフフフフフフフフフフフフフフ!
「だから言いたくなかったんだよぉぉぉぉぉおおおおお!」
叫びながら部屋を飛び出していく師匠。でも笑いのツボに入った私は追いかけることもままならない。
私が師匠を追い掛けに行ったのはそれから十分後で、拗ねた師匠の機嫌を直すのに夕飯を豪勢にしたとだけ言っておこうか。
よく考えたら、ほとんどの話がギャグテイストで終わってね?
ということに今気付いた作者。
修正はしませんけどね?




