03-Ⅰ
今日も無事に朝を迎えることが出来た。いや、師匠に食われるかと思ったよ。性的に。
少し甘えすぎたのがいけなかったのだろうか。いや、でもさすがにかみなりぱんちは不味かっただろうか。でもまぁ、ぐっすりと気絶してたし、大丈夫······じゃないかな。あとで謝っとこう。とりあえず朝食の支度をしないと。
まだ気絶している師匠を起こさないようにベッドを抜け出して、自室にていつものエプロンドレスに着替えた。
選択を終わらせ、朝食の準備が済んだら、師匠を起こしに行く。
師匠の部屋に行くと、珍しく師匠が起きていた。しかもなんかジトッと見られていた。
[どうかしましたか?]
「······悪魔め」
[いきなり何を言い出すかと思えば。私はクォーターエルフですよ]
「違った、小悪魔だったか」
師匠は、親の敵に逃げられたような表情で呟いた。
[馬鹿なこと言ってないで支度をしてください。朝食抜きますよ?]
「くっ! 毎朝そうは言うが、結局抜いたことはない! ならばこれはただの脅し文句で、私の朝食を抜くつもりはさらさら無いに違いない! そうだろうミリア!」
[そうですか。なら師匠の朝ごはんは森の肥料にしてしまいましょう]
「私が悪かったからちゃんと食べさせて下さい!」
師匠がすがり付いてくる。服がはだけるので止めてください。
[では早く支度してくださいね]
「Yes,mom!!」
そそくさと服を脱ぎ始める師匠。私は鬼教官か何かですか?
「いや、なんだか朝から疲れたよ」
あっはっは、と笑う師匠。
[自業自得です]
「ふぎゅっ!?」
配膳途中に師匠の頭頂に手刀を落とした。変な鳴き声を上げて頭を抑える師匠を放置して、配膳を続ける。
「ミ、ミリアが、私に暴力を······!?」
[いつものことです]
「······言われてみればそうだな」
どこか納得したように師匠は頷いて──
「って違う! これも照れ隠しなのか!? そうなのか!?」
うがー! と頭を抱える師匠。
[もう食べてもいいですよー]
「わーい! ······って何を言ってるんだ私はー!?」
ノォォォォ! と悶絶する師匠。最近師匠が子どもっぽくなることがたまにある。ギャップ萌えってやつ? なのかな。
そんなことがあったが、朝食は無事に終わった。
「今日も錬金術だったが、予定変更だ。今日は精霊魔法と精霊憑依について教える。······とはいえ、まだ資料がまとめ終わってないから、昼からだな」
今までもたまに予定変更はあった。その時は歴史なんかをメインに教わった。
[分かりました。では、また昼食時に]
「あぁ。私は地下の資料室にいるからな」
師匠を見送って、家事を行う。
*
「さてと。どこに閉まったかなー······。確かこの辺りに······あれ、この裏だったか? それともこっちの棚だったか······。あ、あった。でも、うへぇ。まぁ、慎重に取り出せば大丈夫だな、たぶん、きっと、メイビー。よし、行くぞ······ってウォア!?」
*
お昼になった。師匠を呼びに行かなければ。地下室の階段を下っていけば、ジメッとした空気が肌を撫でる。ツンとしたカビ臭さに眉をひそめながら、資料室の扉を開ける。
資料室の中は結界で守られているので、資料の劣化なんかが起こりにくい空間になっている。カビ臭さなんて欠片もしない。
そんな資料室の中に、何やら山がある。見た感じ、紙や本で出来ている。なんとなく想像がつくが、一応確認しなければ。
山に近付くと、もぞり、と動いた。
「う"ぅ"······ミリア······たす、けて······」
よく見ると山から手が伸びていた。あぁ、やっぱりか。師匠、妙なところでドジッ娘属性を発揮するからなぁ······。
とりあえず私は師匠を救出するために山を片付けることにした。まぁ、昼食の時間が二時間近く遅れたとだけ記しておこうと思う。
どうでもいいかもしれませんが、ミリアーナ・ステアーという名前の、ステアーという部分は狙撃銃から取っています。
なんとなく銃の名前を入れたかっただけなんですが。
さて、次回語られる精霊魔法と精霊憑依。文字通りなんですが、若干歴史的な部分も交えながら説明していきたいと思ってます。