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02-Ⅲ

今回の話には、作者が書いている「竜の軌跡」という作品で書いていない世界の創世記的な内容が含まれます。

時代は違いますが、同じ世界という設定なので。

こちらの方が未来です。

 食器を洗っていると、なんだか鼻歌でも歌いたくなってきたのだが、私は声が出せないので前世で好きだった歌を口パクする。

 二曲ほど口パクしたところで皿洗いが終わった。


 濡れた手を布で拭い、与えられた自室へと戻る。これから行うのは、この世界の歴史の復習だ。


 まず、世界に二人の女神が現れる所から始まる。

 妹の神は「生物は規律正しく過ごすべし」とし、姉の神は「生物は自由に、己が成したいことを成すべし」とした。

 妹の神は「蛇足なモノは破壊すべし」とし、姉の神は「蛇足であろうとなかろうと、創造するがいい」とした。

 これらの事から、姉の神を自由と創造の女神と、妹の神を規律と破壊の女神と呼称するようになった。


 妹の神は人間(ヒューマン)を生み出し、管理した。姉の神は亜人種や魔物や魔獣、ドラゴンなどの人外を生み出し、放任した。


 妹の神は魔法やスキルを世界の(ルール)として組み込んだ。姉の神はそのために魔法やスキルを作り出した。


 これがこの世界の創世記だ。


 次に歴史的に重要な出来事は、今から約三千五百年にあった魔王大戦である。魔王大戦とは、魔族と呼ばれる、悪魔や吸血鬼やアンデッドなどの種族の長である魔王が、世界征服を企み全世界に宣戦布告したことから始まった。魔王は、世界征服を成そうとするだけの力はあり、人間は一度敗北。

 そこで規律と破壊の女神が、自らの加護を青年に与え、勇者とした。勇者は確かに強かった。しかし、魔族はポテンシャルが高く、一度敗北した人間(ヒューマン)に抗戦は不可能。

 勇者は人間(ヒューマン)以外の種族に助けを求めることにした。当時ほとんどの人間(ヒューマン)は人間至上主義だったため、反対の声は多くあったが、無理矢理押し切った。

 勇者の働きのお陰で多種族と同盟を結ぶことが出来た。そして勇者は、同盟のための旅で集めた仲間と共に、ウルカヌ霊峰へと向かう。

 そこで神竜と出会い、師事することになる。登山前とは比べ物にならない程の力を付けた勇者とその仲間達は、見事魔王を討ち滅ぼした。

 その後勇者は人間至上主義の撤廃に動き、結果、一つだった国は二分された。勇者の主張を拒否した者達は留まり、神聖国になった。勇者の主張を聞き入れた者達は移住し、王国となった。

 その後、王国では後継者争いやらなんやらがあって、帝国と公国が生まれた。


一先ずこれくらいにしておこう。皆もある程度は理解できたよね? ······てか皆って誰?


 メタい考えはこれくらいにしておいて、洗濯物を取り込みに行こう。


 乾いていることをちゃんと確認してから、籠に入れていく。

 にしても、今日は本当にいい天気だ。洗濯物を取り込んでいるだけで額に汗が滲んできた。汗を手で拭いながら作業をしていると、馬車らしきものの音が聞こえてきた。


 もしかしてエイソンさん? でも、師匠は明日だって······。もしかして師匠、間違えてた?

 いつもは、エイソンさんが男性なので師匠が対応してくれているが、今日は私が対応するしかない。

 う、なんだかもう体が震えてきた。我慢、耐えるんだ私。


 馬車が木々の間から目に入るようになってきた。近付いてきた馬車が、私の姿に気付いたのか家を覆う結界の手前で止まった。御者をしていた男性、エイソンさんが馬車から降りて声を掛けてくる。


「エイソンだけど、ヘレーネさん呼んでもらってもいいかな?」

 私はチョークを取り出して、文字を書こうとしたところで手の震えに気付く。


 大丈夫、大丈夫だから。エイソンさんは大丈夫、大丈夫。


 三十秒ほど自己暗示に費やして、未だ微かに震える手で文字を書く。

[師匠は今、研究室にいるので手が離せません]

 書いた文字をエイソンさんの方にゆっくりと飛ばす。

「えぇっ、今日だって伝えたハズなんだけどなぁ」

 やっぱり師匠の勘違いか。

 しばらく呟きながら考えていたエイソンさんは、やがて口を開いた。

「代金は次回にまとめてでいいから、荷物だけ置いていってもいいかな?」


 断る理由もないので、頷いた。

[食材は私が運びます]

「別に気にしなくてもいいよ? でもまぁ、せっかくだしお願いするよ」

 エイソンさんと共に荷台へと向かう。エイソンさんとの距離は五メートル以上空けたまま。

 五メートル。これが顔見知りで、かついい人との接近限界だ。


「よっと」

 荷台から鉱石の入った箱を軽々とは運び出すエイソンさん。気による身体強化が、30kg以上ある箱を軽々と運ぶことを可能にしているのだ。

 エイソンさんが歩いていったのを確認してから、野菜の入った籠を、魔力で体を強化してから運び出す。


 全ての荷物を降ろし終え、馬に水を与えてからエイソンさんは帰っていった。手を振られたのでお辞儀して見送った。



「エイソンが今日来てた?」

[代金は次回でいいそうです]

 夕食中にそんな会話を交わす。

「いや、すまないな。私の勘違いだったようだ」

[いえ、師匠ならいつか起こると確信してましたので]

「ひ、酷いぞ。しかし、男性恐怖症も大分マシになったんじゃないか?」

[そうですね······エイソンさんから五メートル以上離れないと錯乱しそうでしたけど]

 これは事実だ。廊下で対面した時なんか魔法で攻撃するところだったし。


「でも、筆談でもコミュニケーションが出来たんだろう? なら大きな進歩じゃないか」

 確かに、いつもは物影から覗いているだけだった。今回のことで少しでも勇気が持てた、のならいいな。


[それから、師匠······今夜、一緒に寝てもいいですか?]

 なんだか久し振りに男性と会ったからか、あの悪夢を見そうで、今日に限っては一人じゃ耐えられなさそうで。

 師匠は少し眼を見開いてから、笑顔で答えた。

「別に、毎日でも構わないんだぞ?」

 性的に襲われそうなので却下で。

基本的にはこんな感じで進めていこうと思ってます。

「竜の軌跡」のネタバレにならない程度に世界観の説明なども入れようと思ってます。

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