エピローグ
ーーある、小さな料理屋での出来事を雲の上から楽しそうに眺める男がいた。
男は背中から生えた真っ白な翼をパタパタとはためかせ、スカイブルーの瞳を嬉しそうに細める。
「いや~、今回の転生も上手くいったようだね。それにしても、健一くんに与えた《この世は美男美女ばかり》ていう恩恵はちょっとやり過ぎだったかな?」
男は空中にぷかぷかと浮かぶと、何やら考えるように顎を掴んだ。
「ま、いっか!美形がたくさんいた方が目の保養になるし、その方が観てて楽しいしね!」
あくまで自分本位な考え方である。男は観ている自分が楽しければ良い!と結論づけて、にかっと笑った。
「アークディノス、一体いつまで、サボっているつもりですか?まさかまた、人の人生を観察して楽しんでいたわけじゃないですよねぇ?」
背後から地を這うような声が聞こえる。
アークディノスと呼ばれた男はビクっと肩を震わせると恐る恐る後ろを振り返った。
「や、やだなぁ~シルベリスタ。僕は世界の秩序と平和を見届けるモノとして転生させた人間の行く末を見守っていただけだよ~」
「ほぉ、ならば《天界》の秩序と平和を護るためにもこちらの責務もしっかり果たしてもらいたいですね」
白髪に銀縁眼鏡をかけた美貌の男はにっこりと背筋が凍るような笑みを貼り付け、どこからともなくドン!と書類の山を目の前に現す。
軽く2メートルは超えているそれにアークディノスは「うげっ!?」と上擦った声を上げた。
「あなたが呑気に地界を観ている間に溜まった書類です。全部重要書類ですので、今日中に終わらせて下さい。では私はこれにてーー」
男は最後に冷酷な笑みを浮かべるとすっと姿を消す。
ーーヤバイ!今日中にこの書類終わらせないと間違いなく天界の平和が危ない!てか自分の命が終わる!!
そう直感で悟ったアークディノスは急いで書類の山を自分のデスクへと転移させると最後にもう一度だけ、地界を覗いた。
『おかえりなさい、ギルーー』
そこには幸せそうに微笑む彼女の姿があり、彼女の視線の先にはいつの間にか買い物を済ませた男の姿がいてーー
「黒川 沙羅ーー君の人生はこれからもっと幸せなものになるよ」
サラの魂を転生させた張本人は彼女の中に光り輝くもう一つの命を見つめ、穏やかに微笑んだ。
もともと短編小説にしようと思っていたので、これでこの話はお終いです。
後は、書ききれなかったところをエピソードに纏めそれぞれのキャラクターの視点で番外編を書いていきたいなと思っています。
今までご愛読してくださり、ありがとうございました。
番外編でも、宜しくお願い致します。