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アネモネ  作者: 宮っぴー
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5/9

余白

付き合って三ヶ月。

最初の頃は、どんな日でも連絡があった。


「おはよう」


「今日会える?」


画面の向こうに、ちゃんと彼がいた。

それがいつの間にか、少しずつ減っていった。


「今日バイト忙しいかも」


そう言われる日が増えた。

忙しいなら仕方ない。

そういうことにしていた。


思うことでしか、納得できなかった。

会える回数も減った。

週に一度だったのが、二週に一度になり、そのうち予定は「また今度」に変わった。

それでも、会ったときは変わらなかった。

笑ってくれて、手をつないでくれて、少しだけ頭を撫でてくれる。

その時間だけは、前と同じだった。

だから、まだ大丈夫だと思っていた。


ある日。

待ち合わせの時間が過ぎても、彼は来なかった。


「ごめん、今日無理になった」


短いメッセージ。

理由はなかった。


「わかった。」


それだけ返した。

送信したあと、少しだけ画面を見つめた。

次の約束は、なかった。

その次も、そのまた次も。

気づけば、「また今度」が増えていった。

会えない日が続くのに、彼の言葉はいつも同じだった。

優しくて曖昧でどこにも引っかからない言葉。


ある夜。

スマホを見ていた。

特に何かを探していたわけじゃない。

ふと、既読のつかないメッセージが目に入る。

送るのをやめた。

そのまま画面を伏せた。

しばらくして思った。

忙しいのかもしれない。

本当にそうなのかもしれない。

でも、違うのかもしれない。

どちらも、証拠はなかった。

ただ一つだけ分かっていた。

前より、彼の時間に私はいない。

それだけだった。

最後に会った日。

彼はいつも通りだった。

少し遅れて来て、少しだけ笑って、少しだけ手を握った。

その「少しだけ」が、ずっと続いている気がした。


帰り際。


「また連絡する」


そう言って背中を向けた。

その言葉は、昔より軽かった。

私は何も言わなかった。

言わないまま見送った。

夜、部屋に戻る。

スマホはやっぱり静か。

静かなのが普通になっていた。

電源を消して裏返しにした。

部屋の明かりが少しだけ白く感じた。


「忙しいのかな」


そう呟いてから、少しだけ間を置く。


「それとも――」

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