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翌日付処理番号は、退職済み保守印の翻訳欄を読了済みにしません

翌日付処理番号。


その数字が、緊急補完命令の翻訳欄の端に、細い紫で押されていた。


私は封筒を閉じたまま、机の上に四つの札を並べ直した。夜番外套。南門通過札。マルタの賃金札。ミリアの読了欄切除写し。


「エリナ、処理番号があるなら、命令はもう通っているということではないの」


セリアの声は不安で揺れていた。窓の外では、祝典準備の鐘が一つ鳴る。王宮の人間は、鐘の数だけ仕事が終わったと思いたがる。


けれど、衣装室の仕事は鐘で終わらない。


誰の肩に布が乗り、誰の足が門を通り、誰の名で賃金を受け取り、誰が自分の欄を読んだのか。そこまで戻って初めて、返却札は閉じられる。


「番号は、命令が生活に届いた証明ではありません」


私は青い未発令札の右下に、小さく書き足した。


――処理番号あり。生活影響明細なし。


王太子側管理室の使いが、眉をひそめる。


「王太子殿下の確認番号だ。衣装係が止める権限などない」


「止めていません。まだ、どこへ動く命令なのか読めないのです」


私は針箱から白い糸を一本取り出し、命令書の封蝋に触れないよう、番号の写しだけを別紙へ縫い留めた。偽物だと叫べば簡単だった。けれど偽物という言葉は、また誰かの名前を犯人欄へ押し込む。


私が見るべきなのは、番号が本物か偽物かの前に、その番号で誰の生活手順が閉じられるかだった。


「翻訳欄を見せてください」


「王宮機密だ」


「では未発令です。翻訳欄を読めない命令は、読了済み欄を補完できません」


使いの顔色が変わった。


そのとき、王妃陛下の侍女が静かに一枚の薄い控え紙を差し出した。


「祝典翻訳控え棚から、同じ番号の控えが見つかりました。王妃陛下より、返却窓口で照合するようにと」


紙は古かった。少なくとも、今朝押されたばかりの命令書より先に棚へ入っていた紙だ。


私は息を止めた。


控え紙の上部には、たしかに同じ処理番号がある。けれど件名は、候補者衣装緊急補完命令ではなかった。


――祝典翻訳欄・旧保守印写し保存。


その下に、退職済みとなった私の旧保守印の写しが縫い付けられている。さらに横には、翻訳担当者欄が空白のまま、読了済みに似た紫の細印が押されていた。


「私の印で、誰が読んだことになっているの」


声が、自分でも驚くほど低くなった。


ノアが南門通過札を押さえた。


「この番号で、門の記録も閉じられています。マルタさんはまだ帰着確認を書いていないのに」


マルタが震える手で、自分の賃金札を持ち上げた。


「賃金も、受領済みになっています。でも、私は受け取っていません。外套を返したら払うと、言われて」


セリアがミリアの読了欄切除写しを見つめる。


「ミリア様の欄も……同じ番号で補完済みになるのですね」


「ええ。でも、この番号は誰の読了でも、誰の帰着でも、誰の受領でもない」


私は四つの札を控え紙の下へ差し込んだ。番号は強かった。強い番号ほど、弱い欄を一気に閉じてしまう。


だから私は、番号の上からではなく、下から縫った。


夜番外套は、マルタ本人の肩が帰るまで閉じない。

南門通過札は、本人が名前を書いて戻るまで閉じない。

賃金札は、硬貨が本人の手に渡るまで受領済みにしない。

読了欄は、ミリア本人が読むまで補完済みにしない。

そして、退職済み保守印写しは、私が引継ぎ先を読まない限り、翻訳済みにしない。


「返却窓口規則、追加します」


私は青札板へ、新しい一行を縫い付けた。


――処理番号は、生活到着条件を代わりに読まない。


その瞬間、使いが命令書へ手を伸ばした。


「それは王太子側で預かる」


「預けません」


私より先に、マルタが言った。かすれた声だったが、彼女は自分の賃金札に名前を書いた。


「私はまだ受け取っていません。だから、その番号で閉じられたら困ります」


ノアも南門通過札に、帰着未確認と書き入れた。セリアはミリアの控え写しの空白を、透明な保護布で覆った。


泣いている者はいなかった。


ただ、閉じられかけた欄が、一つずつ自分の名前で止まり始めていた。


使いは唇を噛み、ついに命令書から手を離した。


「……王太子殿下に報告する」


「報告するなら、こちらも添えてください」


私は、まだ封蝋を破っていない命令書と、控え紙と、四つの生活札を同じ布の上へ置いた。どれか一枚だけを持ち去れば、また『処理済み』の言葉だけが先に走る。だから三人の証人名も、布の端に縫い付ける。


マルタは賃金札の横へ、震える字で夜番外套未返却と書いた。ノアは南門通過札の横へ、本人帰着未確認と書いた。セリアはミリアの読了欄切除写しの横へ、本人未読保護と書いた。


番号は王宮のものでも、到着条件は本人たちのものだ。


私は控え紙の裏を示した。


そこには、細い鉛筆で別の棚番号が書かれていた。


祝典翻訳控え棚、一番奥。


ミリア採寸控え写しより先に発番された、候補者同意翻訳原簿。


私は青札板の前で、針を握り直した。


次に読むべきなのは、命令ではない。


その番号が、まだミリアの名前を借りる前に、誰の同意欄として作られたのかだった。

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