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劇薬  作者: いのり
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5/5

(番外編)劇物

多く強い悪感情が含まれますので、閲覧の際はお気を付けください。

普段は劇薬というタイトルで文章を起こしていますが、今回は劇物です。違いですが、強い効果を持つということが共通していて、医薬品の類に含まれるか否かだそうです。

 私は人前では誰にでもいい顔をしようとする。決して苦手な人間がいないということはないが、無理にでも笑顔で接しようというのがポリシーだ。

 憎たらしい人間は様々いれど、あやつだけは許しておけぬ、一生をかけても私に害をなしたことを後悔させてくれようという人間がいる。もちろん理由としては、私の最愛の人にその汚れた手を伸ばした愚かさゆえである。

 今思い返しても腸が煮えくり返る。貴様ごときがこの私の大切なものに手をかけてよいはずがなかろう。私は愚かしい人間をひどく見下している。特に身の程を弁えられず、持たざる者が喚いている様子は憎たらしく、滑稽で、生物学上同じ種族であることが嘆かわしい。貴様には何があろうか。私には少しずつの積み重ねで得られた上々の未来設計図がある。好きな人を大切にしようという確固たる意志がある。愛する人に愛されるための努力がある。それが彼奴には欠けていて、身の丈に合わない欲深さばかりが一人前で、多くの人に迷惑をかけることを躊躇しない。

 その劣悪な遺伝子は一刻も早く淘汰されるべきである。残せるほどの機会も無いだろうが、直接根絶やしにしてくれよう。今となっては昔の事のはずだが、殺意は今も滾々と湧き出してくる。

 ある日その顔を再び見てしまったのだ。忘れかけていた私の醜悪な憎しみが噴きあがった。言葉を交わしたわけではないが、最愛の人の近くにいた。貴様のような劣等がどういった了見で同じ場所に存在しているのか。今度こそ直接息の根を止めてくれようか。

 人間というのは、食事でエネルギーを獲得して動くいわば熱機関に例えられる。熱機関に1のエネルギーを入れたとき、1の分まるまる仕事をすることは出来ないというのが熱力学である。そこから、何でもいいが人の役に立てない限り、人を幸せにしない限り、生きているだけで資源を無駄にするごくつぶしにしかなれないとも言えてしまうのである。これは極端な話であるが、つまり他人に迷惑をかけながら存在し続けるというのは大きな罪であり、地球の敵であると言える。(無論他の人にこんなことを言うつもりはない。彼奴があまりに多くの人の鼻つまみ者であるという話である。)


 最愛の貴方が過去に何をしていようが、私の知るところではない。それでもひと時心が離れてしまい、私以外の手が触れていたという事実は私を千尋の谷に突き落としてしまう。幾度這い上がろうと、ふとした拍子にそれを思い出させられるというのは、存外摩り減ってしまうようだ。

 愛しているがゆえ、すべてを投げだしてしまうという選択肢も絶対に取れない。背負い込むという覚悟が燃え尽きてしまうのが先か、それともその毎日をこの腕の中に迎え入れられるのが先か。


 もしあなたがこれを読んでいるのであれば、優しい嘘をついてください。幻でもいいので、愛したのはお前だけだと教えてください。現実がどうであろうと、知る由もなければ何を意味することもありません。都合がよいだけの相手でもいいので、しばし手を取り踊ってください。

 兎にも角にも共に在りたいのです。例え繋がっている運命の糸が、マリオネットの操り糸であろうと構いません。その手が離れないことを切に願います。

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