第72話:堅牢なる障壁
久しぶりの投稿となり、申し訳ありません。
そんな中で大変恐縮ではございますが、皆様にご報告させていただきます。
この度、本作の書籍化が決定いたしました。
それに伴い、本作のタイトルを『旧題』、
【連載版】魔術師団の団長ですが、婚約者である副団長に役立たずと言われ追い出されました。愛想が尽きたので他国でのんびり生きます。ですが、私が夜な夜な相手していた魔物は強いですからね?
上記から『新題』、
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【Web版】追放された魔術師団長クローディアの愛され無双
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への変更となりました。
活動報告にも記載させていただいております。
また、Web版である本作の更新は引き続き行っていきますので、どうか何卒よろしくお願いいたします。
――海月花夜―― 【2026/05/27】
聞き違いだと思いたかった。
けれど、もう一度聞いたルイスさんの声で確信してしまう。
「だから、この街から出られないとは、どういう事なんだ!」
助にと城塞都市に突入した私達も、街から出られないのだと。
「フィーランド伯爵様も通られた、あの障壁が原因ですよ……」
ルイスさんの近くに居た人が、魔物を遮断している壁を指差していた。
私の魔術を受けても、破れなかった障壁。
それを物理的に門を開いてもらって、私達は城塞都市の中に入って来た。
「あの、すみません」
恐る恐る私が声を出すと、機嫌の悪そうなルイスさんと、周囲に居た人達がいっせいに私の方を向く。
「普通に扉を開けて、出れないんですか? あの障壁って、壁の開閉に合わせて、部分的に解除されますよね?」
「これだから魔術師は」
吐き捨てるように言葉を放たれてしまう。
目を細めたまま視線を向けると、そこまで長くない灰色の髪を無造作に立たせたままの男がいた。その手には、見間違うはずのない酒瓶が握られている。
「門を開いて消えるのは、内側に対して流れるのを遮断する壁だけだ。外に向かう壁は、あのクソ領主が居なくなって起動した時から、一度だってなくなってねぇんだよッ」
「ライジャ、助けに来てくれた方々に、その言い方は――」
詰めよろうとしていたライジャと呼ばれた人の前に、一人の男性が割って入っていた。
深い青色の髪は寝かせられ、ライジャさんもそうだったけど兵士みたく少し鍛えられた身体付きをしている。
「何が助けに来ただ、出られなきゃ意味がねぇだろ。それに出た所であの数の魔物をどうするってんだ……どのみち、もう助かんねぇんだよ」
そう言ってライジャさんが立ち去っていく。
二人揃って兵士とも思ったけど、去っていく歩き方からは兵士らしさは感じられなかった。
いくら酔ってるって言っても……ね。
「すみません。あいつも普段は良い奴なんですけど、今はちょっと……」
「いえ気にしてませんから」
「フィーランド伯爵様も失礼いたしました。どうか、許してやってください」
「構わん。それよりも、外に向かう壁とは何だ? 私も初耳だ」
「我々も、詳細を知ったのはこの事態になってからですので、詳しい事はあまり」
「だったら、この街に残っている一番詳しい人間と会わせろ、どこにいる?」
答えずとも、目の前にいた人の視線が自然と中央に向く。
そこには、盛り上がった街の中心に作られ領主の屋敷が見えていた。
「誰が残っている?」
「この都市の専属従者が、残っています」
「だったら話は早い、そいつに会いに屋敷まで行くぞ」
「お待ちください!」
「何だ――」
さっきライジャさんを止めていた人が同じようにルイスさんを止めた事で、下から見上げるようにルイスさんに睨まれていた。
背が低いから威圧感がないとかは関係ない。
相手は、違う領地のお貴族様だ。
普通に考えて止めて良い筈はない。
いざとなれば私が止めるつもりで、自然と身構えていた。
「じき、夜になります。そうなれば屋敷に入れないどころか、障壁によってフィーランド伯爵様に危害が及ぶかもしれません。明日、明日の昼頃には専属従者立ち合いの元屋敷には入れますので、それまでどうかお待ちくださいっ――」
ルイスさんの前で頭を下げていた。
止めようとしてくれている。
理由は詳しく分からないけど、悪い感じはしない。
私は止める事にした。
「ルイスさん、良いじゃないですか。明日で」
「誰が勝手に決めて良いと言った」
「テレンスさんも、ルイスさん危険が及ぶかもしれないのは、よろしくないですよね?」
同意を求める様に近くに居たテレンスさんの方を見ると、目を細めてから頬も少しばかり緩めたテレンスさんが口を開き始める。
「そうですね。できれば、このまま子供らしく休んでいただけると、私としても喜ばしい事ではあります」
「おいっ――テレンス貴様まで」
「だそうです、ルイスさん。ほらほら、向こうにお菓子ありますから」
「誰が子供だ。いい加減にしろ!」
必死の抵抗虚しく、助けに来た住人の方々と問題を起こされるぐらいならと、私はルイスさんの肩に手を置いてお菓子のある方へゆっくりと押していた。
「大人は聞き分けが良く、無駄なリスクはおいませんよ? 明日で良いですねか?」
「ちっ、面倒なやつだ。帝国の連中には、お前とテレンスで伝えておけよ」
「勿論です」
「かしこまりました」
私とテレンスさんが承諾した事でルイスさんがそのまま歩いて行ってくれる。それを見てから私は、テレンスさんや他の方々と目を合わせていた。
「というわけで、明日になりました。明日になったら会えるんですよね? これで会えなかったら、私もろとも逆鱗にさらされて大変ですけど、大丈夫……そうですか?」
今更ながら、少し不安になってしまう。
そもそも、何で今は入れないのかも分かっていない。
「屋敷に入る事に関しては、問題ありません。ただ……」
「ただ?」
「屋敷も同じように、入ったら街へ出る事はできません」
「えっ――」
そんな事を想定していなかった私は、間抜けな声を出したまま何度か瞬きを繰り返すのだった。
明日2026/05/28も、投稿予定です。
引き続き本作の応援、何卒よろしくお願いいたします。
――海月花夜――




