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第35話:護衛役

 

「ブレンダさん、大丈夫ですか!?」


 急いで私が駆け寄ると、ブレンダさんは頭を抑えながらゆっくりと身体を起こしていた。


「えぇ……どうにか」


 攻撃を行った私としては、手放しで喜ぶわけにはいかない。

 ブレンダさんの手足の先まで目視で見て、目立った外傷がない事を確認する。


「頭が痛かったり、クラクラしてたりしませんか?」


「そういうのは……ありません、大丈夫です」


 こういう時に治癒出来ないのがもどかしい。

 もし使えたら、とりあえず回復魔術を連発する自信はある。

 私が疲れる分には、一向にかまわない。


「何かあったら、直ぐに言ってくださいね」


「ありがとうございます」


 ブレンダさんから離れ、私は少し離れた場所に居たルークの元に向かう。

 起き上がったルークは直ぐに周りを見渡し、状況を把握しようとしていた。


「お疲れ、ルーク。もう終わったよ?」


 私が戦闘が終わった事を告げると、ハッとしたルークが直ぐに頭を下げる。


「あっ、はい。ありがとうございました!」


「こちらこそ」


 そこまでするのは、君ぐらいだよ。


「それにしてもルーク、あの魔術の使い方は、自分で思いついたの?」


「……駄目、でしたか?」


「ううん、寧ろ良かったよ。頑張ってるじゃん」


 火属性から離れていなかったのは、素直に喜べないけど。

 お願いだから、早く違う属性の魔術も使おうね? じゃないと安心出来ないよ。そんな事を思っていた所に、ノエルさんがアレクシスさんを連れて近づいて来る。


「クローディア。それにルークも、お疲れ様」


「お疲れ様です! ノエル殿下。それからアレクシス副団長」


 適応が早いルークが、アレクシスさんの事を直ぐに副団長と呼んでいた。

 早いものだ。

 私なんて、まだどう呼ぶかも決められていない。

 というか、この人から圧を感じる。


「あの……何か?」


 じっと見つめてくるアレクシスさんに、私はそっと話しかけてみた。

 すると、一度目を伏せてから答えてくれる。


「いえ、あれ程動かれたのに、随分と余裕そうでしたので、少しばかり驚いておりました」


「アレクシスも、手合わせするかい?」


 ノエルさんのその言葉で、周囲に緊張が走った。ノエルさん、流石にそれは不味いです。

 止めて下さい。


「いえ、遠慮させていただきます」


 アレクシスさんが断り、私は内心、かなり安堵していた。

 この人と戦うのは骨が折れる。いや、戦うと本当に折られるかも……。

 尚更遠慮したい。


「ノエルさん、団長と副団長を戦わせようとしないで下さい」


「ごめん。つい、ね。それよりも無事に、団長として認められたみたいで良かったよ。これで晩餐会にも、堂々と出席出来る」


 すっかり戦闘で忘れていた私は、そんなものもあったなと思い出していた。


「ブレンダ、君にはクローディアの護衛を任せる」


「承知いたしました」


 いつの間にか起き上がっていたブレンダさんが答える。

 そして、ノエルさんの視線がルークに向いた。


「それから、ルーク。君にも加わってもらうよ」


「ノエル殿下。自分が、護衛に……ですか?」


「クローディアの攻撃を受けて、一番最初に起き上がったからね。護衛としては十分だよ。それに、ブレンダ。君が居るんだ、ルークでも問題ないね?」


 そう言ってノエルさんが、ブレンダさんの方を見た。


「はい、問題ありません。一人では死角になりやすい背後など、ルークには快く壁役になってもらいます」


「壁役……ですか」


「嫌なの?」


 ブレンダさんの言葉を聞いたルークに、私が聞き返した。

 慌ててルークが、首を横に振った。


「いえ、嫌ではありません。喜んで、引き受けさせていただきます」


「よろしくね」


 少し張り切った様子のルークを、ブレンダさんが無表情で眺める。


「ミスは許さないからな」


「はいっ!」


「二人とも、護衛と言っても宮廷内だ。あまり気を張らずにね」


 張り切るつもりの二人にノエルさんが釘を刺してから、私の方を見た。


「クローディアも、気楽にね」


「良いんですか? ご迷惑、お掛けするかもしれませんよ?」


「大丈夫だよ。君なりに、楽しんでくれたら」


 つまり……好きなだけ飲み食いして良いって事ですよね?

 護衛にこの二人が居てくれるなら、そっちも大丈夫だろう。

 そもそもノエルさんの言う通り、宮廷内なのだから騒動が起こる事の方がないに等しい。


 今回に限って、騒動が起こるはずがない。

 だからこそ、この護衛は新しい団長である私を周囲に見せる為のものでしかないのだ。

 きっと……そうだよね?


「……分かりました。頑張って、楽しんでみます」


 私の発言を受けた三人は喜ぶでもなく、少し不安そうにするのだった。



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