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第28話:美味しいパン


 帝国のパーティーってどんなだろう。

 そう思った私は一人で街に出ていた。


 別に着て行く衣服に関しても、別に持っている物でも良いと思う。

 だからこういう場合は、殆ど気持ちの問題でしかない。


「なに買おうかな」


 ぼーっと考えながら私が歩いていると、目の前で立ち止まっている子供と目が合った。

 少女は、籠いっぱいに丸パンを詰め込んでいる。


「あの、パンはいりませんか?」


 少女が私に向かって声をかけた。

 ……こうなった時の私の答えは決まっている。


「一つ頂戴」


 私は、見るからに柔らかくただ丸くて美味しそうなパンを買った。

 沢山買うなんて事はしないけれど、お腹がすいていれば迷う必要もない。


「ありがとうございます」


 少女が頭を下げてから私にパンを手渡して来る。

 お腹が減っていたから買っただけなのに、申し訳ない様で嬉しい様な気持ちになってしまう。


 渡されたパンを一口食べてみると、見た目通り柔らかった。


「美味しい」


「ほんとですか!? ありがとうございます」


「私、食べ物に関しては、嘘つかないから」


 初対面の子供に何を言っているんだと、自分でも思う。

 でも、喜んでいるみたいで私としても嬉しかった。


「また、お願いします」


 再び頭を下げた少女が次の人へ、声をかけていく。

 少女の小さな背中が人ごみに紛れ、少し目を離すと分からなくなる。


「うん。美味しい」


 もう一口食べても、パンに対する感想は変わらなかった。

 中は驚くほど柔らかく、小麦の香りがふわっと広がる。


 そこまで大きくないパンを食べ終えた私は、街の喧騒を耳にしながら歩く。

 石畳の上を走る馬車の音や、店先で話をしている声。

 何処を見ても人が居る。


 沢山の人を見て、尚更ノエルさんに迷惑をかけないか心配になってしまう。

 私が団長だった王国であれば、私が一番偉いのだから誰にも迷惑がかからなかった。

 正確には違うけれど、責任を持つのが私であれば良いって話だ。

 

 ――だけど、今は違う。


 私を帝国に連れて来て、軍での仕事を手配してくれたノエルさんが、私の行う事に対して責任を持っている。そんな状況で私が下手な事を言えば、迷惑が掛かる事は分かり切っていた。


 ダンジョンでの事をノエルさんがどう伝えているかで、話が変わってしまう。

 でもノエルさんが、全てを自分の手柄にするとも思えなかった。

 というか『ダンジョン踏破の功績者』とか何とか、――書かれてた気がする……。


 つまりノエルさんは、私がある程度は関わっていると報告済みって事になる。


「気が重い……」


 自然と小さなため息が出てしまう。

 

「まぁ、なんとかなるよね」


 いくら考えた所で、どうにもならないのだから、勢いに任せる事も大事だ。

 そう簡単に割り切れていたら、私はこんなにも悩んでいないのだろうけど。

 今は、考えていても仕方がない。


「さてと。食べ物以外を探しますか」


 余りのんびりしていると、時間が無くなってしまう。

 無理やり気持ちを切り替えた私は、呼び出しの時間まで街を散策するのだった。


次話のエピソードタイトルは『帝国議会』です。

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