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第26話:ダンジョンコア


 敵を倒した私は、直ぐに後ろを向いた。


 振り返った私は一瞬、何が起こっているのかが分からなかった。

 剣を掴んだ魔物の腕が宙を舞っていたのだ。


 見ればノエルさんが剣を上に振り上げている。

 きっと、下から上に向かって振り上げたのだろう。

 それにしても、信じられない。


 戦った私が一番分かっている。

 あの魔物の鎧の硬さや反応速度は異常だ。

 人間がまともに相手するのですら、厳しいと思っていた。

 

 腕を失った魔物が魔術を使い、ノエルさんに向かって氷の矢が飛んだ。

 それをノエルさんが剣で弾き距離を詰めていく。


「凄い……」

 

 ノエルさんが戦っている所なんて、今思えば記憶になかった。

 十分に戦えているけれど、私はその戦い方に、何故か違和感を覚えてしまう。


 魔物が生み出した黒い剣をノエルさんが避けるも、同時に生成していたもう一方の剣を避けようとしたノエルさんが大きく体勢を崩していた。そして魔物の持つ水晶玉が光を発する。


 上を見上げたノエルさんが落下してくる岩石に気づき、自身の剣に魔力を込めた。


 ――嘘でしょ。


 避けるでもなく立ち止まったノエルさんは、魔力を込めた剣で岩石を真っ二つに叩き切った。

 そして直ぐに前に距離を縮めたノエルさんが、その剣でそのまま魔物の体を斜めに切り裂いた。


 魔物の体が地面に転がり、剣を鞘にしまったノエルさんが私の方を振り向く。


「怪我はしてない?」


「はい、私は大丈夫です。ノエルさんも大丈夫ですか?」


 息を少し切らしているだけで、ノエルさんに大きな傷は見受けられなかった。

 あれだけ接近し続けているのに、改めて凄いと思ってしまう。


「僕の方も、大丈夫かな」


 自分の身体を見渡したノエルさんが、私の方に向かって来る。


「ノエルさん、強過ぎません?」


「ありがとう。でも、君に言われても正直、困るな」


 そう言って苦笑いを浮かべるノエルさんだったが、実際かなり強いと思う。

 この人が居れば、一人でも大丈夫だった気がする。


「私なんて、ただ魔術を放ってる魔術師ですよ」


「それが強いんだよ。僕の場合は、相手が魔物だったり複数になると厳しいからね」


 そういう事か。

 私がノエルさんの戦い方を見て覚えた違和感は、それが原因だ。

 この人の戦い方は、訓練で得られる型にハマった対人想定のお手本なんだと思う。

 相手の体がこう動けば、決まった動きを返す。


 それを極めてるんだ。

 だから、剣術大会とか対人戦は強いのだろう。


「それでも十分、強いですよ」


 お世辞抜きで、十分だと思う。

 強い敵というのは、大抵が個体だ。

 今みたいに二体居る方が極めて少なく、雑魚であれば数が多くそこまで強くない事が多い。ノエルさんの場合そういう相手に対しては部隊を率いれば問題なく、強い個体のみを相手にすれば良い訳で、今までどうやって来たかが少し分かった気がする。


「君が居てくれて、助かったよ」


「こちらこそ、二体同時だと戦い方が限られますから、助かりました」


 神殿を巻き込んだ大爆発なんて、ごめんだ。

 自分の身体を守った所で、悲惨な事になるのは分かりきっている。


「それよりもノエルさん、どうしますか……」


 私がそっと視線を向けた先で、台座に乗せられたダンジョンコアが目に入る。

 守護していた二体の騎士は居ない。


 私とノエルさんが台座の前で、立ち止まった。

 手を伸ばせば、帝国の歴史上もっとも大きいであろうダンジョンコアが手に入る。


「ダンジョンコアって、普通に触っても大丈夫なのかな」


「大丈夫なんじゃないですか? じゃないと、今までの人も大変な事になってたと思うので」


 流石に分からない。

 元々、ダンジョン専門家でもない私は、ただの魔術師に過ぎない。

 ダンジョンコアを元に、魔力を取り出している魔道具の仕組みを多少は知っていて、使えたとしても一から作れと言われたら無理と断言した方が良い程度には分からなかった。


「触れた途端に、魔力が逆流して身体が飛び散ったり」


「流石に、しないんじゃ……」


 言い切れない……。

 確かに、膨大な魔力を直接身体に注ぎ込めば爆発はしてしまう。


「まぁでも、触れてみない事には分からないよね」


 そう言って、ノエルさんが手を前に出した。


「君なら、もし何かあってもどうにかしてくれるよね?」


「分かりました。片腕一本ぐらいは失うかもしれませんが、助けてみせます」


 断言なんて出来ないものは出来ない! ノエルさんごめんなさい。


「それで良いよ、頼んだ」


 あっさりと了承したノエルさんがコアに触れた。

 ――途端にコアが光り輝き、辺りに膨大な魔力が流れ出す。


 眩い光に阻まれながらもノエルさんの身体に魔力が入りこんでない事を確認し続け、暫くするとダンジョンコアの輝きが収まった。――そして台座のある場所から更に奥に進んだ場所で、光り輝く転移陣らしきものを見つける。


「やっと、帰れる」


 それを見た途端に、私は自然と呟いていた。


 第26話を読んでいただき、ありがとうございます。

 もう一度だけ、新作短編のリンクを掲載させて下さい! 


作品タイトル名:

 『浄化の聖女だけど、水源の湖を綺麗にしてたら水遊びと言われ王子に婚約破棄されました。なので次こそは、のんびり過ごしたいと思います。ちなみに、湖の水は私以外だと浄化出来ないと思いますよ?』


 https://ncode.syosetu.com/n8949kx/


 何卒、読んでいただけますようお願い申し上げます。

 明日からはまた、静かに作品の更新をさせていただきます。


 いつも私の作品を読んで下さり、本当にありがとうございます。



 ――海月花夜――

 

 

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