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第21話:神殿


 魔物を倒した私とノエルさん達は、他の魔物が寄って来る前にと直ぐに移動を始めていた。

 先ほどと違い、静かに終わらせたが魔力を使った事に変わりない。

 魔力の動きに敏感な魔物が居れば、それだけで気づかれてしまう。


 魔力があるこの世界では、人はどこか劣っている気がする。


「って、うわぁああッ――」


 小さな小石と思って足がぶつかると、とてつもなく大きな石の先端部分だったのかびくともせず、代わりに私の方が当たり負け態勢を崩してしまう。


「おっと、危ない」


 横に居たノエルさんが咄嗟に腕を伸ばし、私の肋骨辺りに腕を置いては支えていた。


「大丈夫?」


 ノエルさんの肩に手を置いて横を見ると、倒れない為に引き寄せられていた身体は思っていた以上に近く、ノエルさんと至近距離で見つめ合う形になる。


「……すみません。少し考え事をしてて」


「気を付けてよ。君、いつも迎え打つだけだから、歩く方は少し苦手でしょ?」


 ダンジョンの夜間警備や、王国でも毎日同じ場所で戦っていた。

 それが何故かノエルさんにバレていた。

 いや、考えれば分かる事なんだろう。


「そうですね。戦闘中だったら、大丈夫なんですけど、ただ警戒している時は……探知は怠らないんですが、身体の方がちょっと……」


「抱きかかえて、歩こうか?」


「ん?」


 嘘、夢? 私は、何を言われてるの。

 ノエルさんにもしかしなくても、からかわれてる? そうだよね。

 じゃないと、変だもん。


「良いんですか?」


 ノエルさんを困らせる為に、提案に乗ってみた。

 これで、真顔で、断られたら気持ち的にもう辛い。

 何やってるんだろう私、普通に遠慮すれば良かった。


「じゃ、このまま」


 そう言ってノエルさんが私の背中に、もう片方の手を当て始めた。


「――やっぱり、大丈夫です。はいっ、こういうのはその……無事に帰った時にでも、ってそしたらやる意味がないですよね」


 必死にはぐらかしながら、私はノエルさんから一歩離れた。

 危ない。

 他の人が居るのに、本当に持ちそうだったよ。

 危うく、索敵なんて無理なぐらいの羞恥が始まる所だった。


「そうだね。また、今度。そういう機会を作るとするよ」


「え……はい」


 ノエルさんとの約束が増えてしまった。

 これはこれで危険な気がします。

 段々と包囲されてるような……気のせいですよね。

 だって、平民と王族なんだから。


 私が考えるべき事は、この人を無事に帰す事だ。 


「ノエルさん、敵が来ます」


 直ぐに敵の方を向いた私は、迎え打つ態勢に入った。

 二頭の腐狼が止まる事なく一直線に迫り、氷の壁を生み出して行く手を阻む。


 そのまま氷で押し潰せば、直ぐに戦いは終わる。

 

 けれど、敵が引き寄せられない訳ではない。

 戦闘に気づいたオーガが居れば、私達の元に向かって来る。


 それも一体でなく、二体であれば面倒でしかない。

 ノエルさんに伝えて全員を下がらせ、布陣から私だけ抜け出す。


「フロスト・フィールド」


 手を地面に触れさせ、その地点から周囲に氷を広げていく。

 瞬く間に、辺りがアイススケートリンクの様に一面が氷になり、茂みから現れたオーガそのまま足を踏み入れた。途端にバランスを失ったオーガが滑り、背中を強打させその場でもがき始める。

 何度も起き上がろうとしては滑り、やがて地面に拳を突き立て、氷ごと深く拳を突き刺しながら起き上がった。けれど、起き上がっただけで動けてはいない。


「凍れ――」


 オーガの周りに漂った白い靄が、オーガの動きを止めた。

 そのまま動かなくなったオーガの目から、やがて光が消えていく。


「急ぎましょう」


 敵を倒して直ぐに、氷の足場を解いて移動を始める。

 先ほどから戦闘を最小限にしているつもりが、次第に魔物が集まって来ていた。

 まるで――私達の場所が、魔物に伝わっているみたいだ。


「この先に、大きな広場か、建物があります」


 木々にも魔力が宿る。

 だから、何も魔力が感じられない場所は、広場か建造物のどちらかだ。

 戦うにしても、広いならやりやすい。

 

 私達は、急いでその場所を目指した。

 途中何度か魔物と遭遇したものの、私が何をするでもなく直ぐに倒される。

 

「もうすぐです」


 警戒しつつ進んだ先で、私達はようやくその場所に辿り着いた。

  

 目の前にあるのは巨大な建造物。

 ダンジョンの最奥に位置するその場所には――神殿の様な物が造られていた。


「どうしてこんな所に、神殿が……」

 

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