10話 終炎を、手に(その2)
「────姉貴。1つ聞いていいか?」
「んー?なに?」
「姉貴とランツェイラは、何で知り合いなんだ?
まあ、今回はともかく。
歌姫が『天界中央局』から下へ行くなんて、なかった筈だぞ?」
「あー。それね。
てゆーか、あんたはどうやって知り合ったの?」
「ん・・・俺はまあ、その。
知り合いから知り合いを通しまくって、だな。
実際に会ったのは、これが初めてだ」
「ふーん、そっかーー。あたしの場合は」
「メイエルさんのほうが、来てくれたんですよ」
黒白ぶちの猫を抱いた天使が微笑む。
なーお、と至福の声が上がる。
「そうそう!あれは、運命的な出会いだったよねー?」
「────嫌な予感がしてきたぞ」
「ああ?」
「いや、いい。続けてくれ」
「・・・・・あのさ。
ずっと前に、話したろ?あたしが惚れた男。
この世で最強の『人間』のこと」
「────────」
「何だ、その微妙な面は!」
また不機嫌になり始める姉に、ヴァレストの視線が泳ぐ。
焦って側にいた黒猫を撫でようとするが、シャーー!!と威嚇された。
「てめっ、何で怒るんだよ!?・・・そりゃ、まあ。
こと剣技に関する話で、姉貴は絶対に嘘を付かねぇ、とは思ってるさ。
だが、幾らなんでも無理がありすぎるだろ・・・」
「嘘じゃないもん」
「いやいやいや!
何をどうやったら人間が、『爆裂暴風・超魔王』と剣を交えることができんだよ!?
おまけに、“2千撃、耐えた”とか!
前に立った瞬間、蒸発するだろ!!」
「嘘じゃないってば!!」
「夢見んのも、たいがいにしろって!
棒きれ1つで飢えたライオン100頭の群れを粉砕出来る、非常識な人間がいたとしても!
そいつでさえ姉貴の一発を喰らったら、原子分解するっての!!」
「・・・ああ、プレモリ。ちょっとごめんね」
灰色猫が、優しくソファーの上に座らされる。
「────いや────あの」
視界一杯に迫った、何かが。
ヴァレストの意識を、一欠片も残さず刈り取った。




