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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第6章 クオリファイア・オブ・ロッド
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第52話 トゥリーズン・トゥ・ロッド

 俺たちは、監視カメラの映像を早送りで見た。

 しばらくして、神上達雄が本当の『魔女』の社から出ていった。

 結城は、1人になっても微動だにせず『杖』を持ち続けている。

 それ以降、本当の『魔女』の社の中は結城1人だった。

「何もありませんね」

 神上未咲が呟いた。

 と、同時にモニターの中の『魔女』の社に動きがあった。

 神上未咲は慌てて巻き戻し、普通の速度で再生した。


「『魔女』は馴染みましたかね?」

 神上達雄が『魔女』の社に入ってきて言った。

「そろそろ、あなたの記憶を消すことができますよ」

 結城の頬を撫でながら、神上達雄が笑みを浮かべた。

 結城は、やはり微動だにせず、神上達雄の手を受けている。

「待て! 貴様ぁ!」

 その時、『魔女』の社の外から『神上家』の黒服の物と思われる声が聞こえてきた。

ドッダッダッダッダッダッダッ……

「結城ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 男子の大声が響いた。

 これは、飯地の声だ……

「はあ……全く、子供というのはどうしてこうも頭が回らないかなぁ……」

 神上達雄が呆れ顔で、『魔女』の社の入口に寄った。

 次の瞬間、飯地が『魔女』の社の中に入ってきた。

 手には包丁を握っている。

「おらぁ!!!!」

 神上達雄は飯地の頭を掴み、勢いよく壁にぶつけた。

 飯地はそれでも、結城の下に向かおうとしたが、今度は神上達雄に頭を押さえつけられ動けなくなった。

「君はヒーローにでもなりたいのか? あいにく、そこにいるのは囚われのお姫様じゃなく、『魔女』なんだがなあ!!」

 もがく飯地に神上達雄は皮肉を言った。

「ちょうどいい。君を実験台に『魔女』がどれだけ『杖』に馴染んでいるのかテストしよう」

 神上達雄が不気味に笑いながら、飯地を押さえていた手を離す。

「『魔女』よ、その男を磔にしなさい」

 そして、結城に命令した。

 すると、結城は今まで動かなかったのが嘘のように、『杖』を振るった。

 『杖』の先端が飯地に向いた。

「ガッ!! ア……」

 突然、飯地は何かの力によって壁に激突し、そのまま動けなくなった。

「上等上等。後少しすれば、結城花帆の記憶をこの町からきれいさっぱり消せるな……」

「結城の記憶を消すだって……」

 神上達雄が笑いながら、『杖』の魔法で苦しんでいる飯地に近付いた。

「さあて、君はどうするかなあ? 刃物持っているし、記憶を消して訳の分からなくなった君を適当な理由を付けて刑務所にぶち込むってのも面白いかもなあ! ヘッヘッヘッヘッヘッヘッ!!」

「俺は……結城を助けるんだ……」

 神上達雄の残酷な宣告は、飯地の耳に入っていないようだった。

 飯地は何とか動こうともがいている。

「ああ、それまでの余興で、お前を苦しめればいいかあ。『魔女』よ、この男を更に苦しめなさい」

 神上達雄が不気味な笑みで、結城に命令した。

 結城は再び『杖』を振るった。

「ガハッ! ウオッ! アアァ……」

「いいねえ……。『神上家』に歯向かう奴をこういう風に懲らしめるのは!!」

 神上達雄は飯地が苦しんでいる姿を見て、ご満悦のようだ。

「『魔女』にも、ちゃんと見せて差し上げないとなあ」

 神上達雄は、飯地と結城が互いに見られるように飯地から少し離れた。

 結城を助けようと苦しんでいる飯地と、無表情のまま飯地を苦しめている結城が、互いを見る。

「結、城、……ゴホッ! ガハッ!」

 飯地は結城の名前を呼んだが、結城は何の反応もしない。

「結城……やめてくれえ……」

 飯地の悲痛な叫びが、『魔女』の社の中に響いた。

 すると、結城が再び『杖』を振るった。

 神上達雄の命令がないにも関わらず……

「えっ!?」

 飯地は突然自分が磔から解放されたことに驚いた。

 飯地の包丁の先には『魔女』となった結城がいた。

 包丁が結城の胸に突きつけられた。

 そして、飯地が壁から離れた時の力がかかり、結城が倒れた。

グサッ……

 結城は心臓を刺され『杖』を手放した。

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