第49話 マーダー・セイント・フォア・ロッド
扉を開けると、そこにはおびただしい数の機械が立ち並んでいた。
部屋の中央にはモニターがあり、それで本当の『魔女』の社の中を監視しているみたいだ。
「入りましょう」
俺と神上未咲は部屋の中に入った。
部屋の床は、おびただしい数の配線で埋め尽くされていて、歩くのにとても苦労する。
「キャッ!」
神上未咲が配線に足を絡み取られ転びそうになった。
「大丈夫か?」
「はい。何とか……」
数分後、俺たちはモニターの前に辿り着いた。
ふう……
しかし、凄い部屋だな……
モニターには、本当の『魔女』の社の中が映されていた。
本当の『魔女』の社の中は、以前見た外側と同じくとても簡素で、床はコンクリート剥き出しのようだ。
何で、『神上家』はこんなところに『魔女』を隠しているんだ?
せめて、『魔女』の為にもう少し綺麗にするべきなんじゃないのか?
「えーと、これをこうして……」
神上未咲が何やらパソコンを操作している。
「準備できましたよ! これで、記録を見ることができます!」
しばらくして、神上未咲が笑顔で俺に言ってきた。
しかし、馴れた手つきだな……
俺と飯地が喋っているところのデータを引き抜いていた辺り、日頃から監視カメラ弄りをやっていたのかもしれない。
俺は神上未咲に、結城が『魔女』になる儀式に行った日と俺たちが下校した時刻を教えて、その日の記録をモニターに映してもらった。
モニターに『杖』を持った女性が映し出された。
多分、結城の前の『魔女』なんだろう。
『魔女』は、本当の『魔女』の社の中で微動だにせず『杖』を持ち続けていた。
しばらくすると、本当の『魔女』の社の中に神上達雄が入ってきた。
「今日は、あなたが『魔女』でいる最後の日です。もうすぐ『杖』から解放されますよ」
そう言って、神上達雄はすぐに出ていってしまった。
『杖』から解放される?
いったい、どういう意味なんだ?
神上達雄は微妙に笑みを浮かべていたが……
しばらくすると、神上達雄がまた入ってきた。
その後に続いて、結城と飯地が入ってくる。
「まさか、外の『魔女』の社が偽物だったなんて……」
モニターの中の飯地が、本当の『魔女』の社の中を見渡しながら言った。
「結城、頑張れよ! ずっと応援しているから……」
「うん、大丈夫。心配してくれてありがとね……」
飯地が結城を心配し、それに結城は笑顔で返した。
「これから儀式を始めるので、飯地久彦君は端の方に座っていてください」
「あ……はい、分かりました」
神上達雄の指示で、飯地は『魔女』の社の隅の方に行った。
「では、これより儀式を始めます。『魔女』、『杖』をこちらに……」
神上達雄の号令の下、『魔女』を継承する儀式が始まった。
『魔女』が神上達雄に『杖』を差し出す。
「今まで、お役目ご苦労様……」
神上達雄がそう言うと、『魔女』は砂になって消えていった。
『魔女』に対して、随分と尊大な言い方だな……
「結城花帆君、こちらが『杖』です」
「はい……」
神上達雄が『魔女』から受け取った『杖』を結城に渡した。
「『魔女』になりたいと目を閉じて念じて下さい。その間に私があなたを『魔女』にする呪文を唱えます」
「分かりました」
神上達雄の指示で、結城は『杖』を抱えて目を瞑った。
『魔女』にする呪文?
そんなの初めて聞いたぞ。
「全ての民のためにあなたは『魔女』となる。例え死すともその心、我ら民のためにあらん……」
神上達雄が呪文を唱え出した。
その呪文は、『魔女』の偉大さを称えた歌のように聞こえた。
「『杖』をもって我ら民の願いを叶えよ。例え朽ちるともその意志、我ら民のためにあらん……」
呪文を唱えながら、神上達雄は腰から何かを取り出した。
それは拳銃だった。
「あなたの心は民のため、あなたの意志は民のため……」
カチャリ……
結城の頭に拳銃が突きつけられた。
だが、結城は念じているせいなのか、そのことに全く気が付いていない。
そして、
バシュン!!
本当の『魔女』の社の中に血が飛び散った。




