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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第4章 プラン・オブ・クリミナル・ポゼッシング・ロッド
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第37話 マトリサイド・ロッド

「もうすぐ、木丈霞町ですよ」

 アレックスさんが俺たちに言った。

 もう、トンネルか……

「正は木丈霞町のことが嫌いで、ボーイを歩かせているようですが、私はちゃんと家まで送っていくのでご安心を」

「何でそんなことを知っているんですか?」

「いえ、ただの憶測です」

 アレックスさんが答えた。

 憶測でそんなことが分かるのかよ……

 アレックスさん、怖い……

ガヤガヤガヤガヤ……

 トンネルを抜けてすぐのところにある横断歩道を、たくさんの人が渡っていた。

 何処かに、人が集まっているみたいだ。

「何かあったんですかね?」

 アレックスさんが不思議そうに言った。

「竜司先輩! すぐ近くに南の端の地蔵があります! きっと、飯地先輩がそこで事件を起こしたのです!」

 神上未咲が俺に言った。

「何ですって! すぐに向かいましょう!」

キ、キィィィィィィィ!!!

 アレックスさんが急ブレーキをかけて、車の向きを変えた。

「うわあああああああ!!」

「キャァァァァァ!!」

 俺と神上未咲は驚いて、思わず叫んでしまった。

 アレックスさん、他人が乗っているんだから、もう少し穏やかに運転してください。

 ものの数分もしないうちに、人々が集まっているところに着いた。

 その近くには、やはり地蔵があった。

「ここですね」

 アレックスさんはそう言いながら、車を降りた。

 俺と神上未咲もそれに続いた。

「いったい、何があったんですか?」

 アレックスさんが見知らぬ人に声をかけている。

 俺にはとても真似できない行動だ。

「今日、『神上家』がここに集まるっていう噂が流れて、町民の何人かが集まっていたんです。そうしたら……」

「そうしたら?」

「突然、『杖』を持った男が現れて、町民の1人を動けなくしてしまったんです」

 飯地が、また人を犠牲にしたんだ!

 俺は急いで、人だかりの中に入っていった。

「ちょっと、竜司先輩!」

 神上未咲もついてきた。

 俺は人だかりをかき分けて、奥へと進んで行った。

 人だかりの最奥部まで行くと、1人の女性が倒れていた。

「嘘だろ……」

 俺はその女性を見て絶句した。

「母さん……」

 その女性は、俺の母さんだった。

 何で、母さんが生贄にされているんだよ。

 何で、飯地は母さんを生贄にしているんだよ。

「ボーイ、どうしましたか?」

 アレックスさんが後ろから来て、俺に訊いてきた。

「これが『杖』の生贄になった人の姿ですか。ちょっと失礼」

 アレックスさんはポケットからカメラを取り出し、母さんを撮った。

「あれ? この人、何処かで見たような……」

「俺の母さんです」

 俺が言うと、アレックスさんが沈黙した。

「まさか、竜司先輩の母さんがこんなことになるなんて……」

 神上未咲が母さんを見て言った。

 俺たちはそのまま黙ってしまった。


 それから、アレックスさんに家まで送ってもらった。

 家に帰って、インターホンを押しても、母さんが返事をすることはなかった。

 俺は鍵を使って家に入った。

 家の中は、異様な静まり方をしていた。

 もう母さんに会えないという実感は、まだ湧いてこなかった。

 飯地……

 絶対に許さないぞ……

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