第35話 コンフューズド・ロッド
「とりあえず、君の質問に答えられるのはここまでだ」
本条さんが俺に言った。
「ここまで」と言われたが、俺にとっては充分な回答だった。
とにかく、飯地の次の行動が分かっただけでも収穫はあった。
「ありがとうございます。とても、参考になりました」
俺は本条さんにお辞儀をして言った。
「お安い御用だ。また、何かあったら訊いてくれ」
本条さんが笑顔で言った。
「飯地先輩の目的が分かって良かったですね!」
「飯地……先輩……?」
アレックスさんが、俺たちを睨んだ。
さっき俺は、飯地の名前を伏せて質問したんだった。
「いえ、何でもないですよ」
俺は笑って誤魔化した。
「そろそろ戻りましょうか、竜司先輩!」
神上未咲が俺に言ってきた。
壁にある時計を見ると、もう2時を過ぎていた。
「そうだな。帰りが遅くなり過ぎるとバスが無くなるし……」
「え!? 竜司、帰っちゃうのか!?」
じいちゃんが驚きの声を出した。
さっきの話を聞いていなかったのか?
「そうだよ。俺は木丈霞町で起きている事件を追っているんだから」
俺の回答を聞いたじいちゃんは、残念そうな顔をした。
「じゃあ、せめて木丈霞町まで送っていってやる」
「それは、私がやりますよ」
じいちゃんの発言を遮り、アレックスさんが言った。
「え、でも……」
「正、今日はあなたに散々振り回されました。今日の正はボケています。ボーイたちのことをあなたに任せては置けません」
アレックスさんは、じいちゃんを非難した。
確かに今日のじいちゃんの行動は褒められたものではない。
俺も振り回されたし……
「い、いや……本条ぉ……」
じいちゃんは、本条さんに助けを求めた。
「悪い! これから用事があるんだ!」
本条さんは、自分の荷物を急いで抱えて立ち去ってしまった。
顔には冷や汗が見える。
絶対、嘘だ……
「いいですね、正?」
アレックスさんが、手をボキボキ鳴らしながら言った。
「はい……」
じいちゃんは、静かに返事をした。
結局、俺と神上未咲は、アレックスさんの車で木丈霞町に帰ることになった。
「ところで、ボーイ」
運転中のアレックスさんが、俺に話しかけてきた。
「木丈霞町で事件を起こしている犯人というのは、あなたの知り合いなのですか?」
やっぱり、さっきの神上未咲の発言でばれていたか……
「……そうです」
俺は、しばらく考えてから肯定した。
「何故、さっきは隠していたのですか?」
アレックスさんが訊いてきた。
特に言う必要はなかったから……だと思う。
「知り合い……いや、その感じだと友達だからですか?」
友達だから……
『杖』を持った飯地と対峙した時、あいつの邪魔をすると決めたのに……
「もし、そのことを私や正、晄に教えてくれたら、もっと教えられることがあったはずなのに……」
アレックスさんが、呟くように言った。
何だって!?
「それはいったいどういうことですか?」
俺はアレックスさんに訊いた。
「あなたが晄にした質問から察するに、あなたは犯人の動機が分かっていないようです。ですが、あなたの知り合いという前提があれば、もっと良い解答を私たちは出すことができました」
アレックスさんが静かに強く言った。
「質問する時に隠し事をしてはいけませんよ、ボーイたち」
「はい……」
俺たちはただ返事をすることしかできなかった。
「教えて下さい。あなたたちに何があったのかを……」
俺はアレックスさんに事情を話すことにした。




