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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第3章 ファブリケイション・オブ・ロッド
22/58

第22話 サクリファイス・フォア・ロッド

「そこで見ている人たち。被害が及ばないように配慮したんだから、感謝してくれよ?」

 飯地はそう言いながら、俺たちに『杖』を向けた。

 いったい、何をするんだ!?

 『杖』に付いている玉が光る。

 途端に、俺たちを隠していた壁が消失した。

「あらかじめ壁を作っておいたんだから……な? 伊阪、それに神上未咲……」

 飯地が先程とは打って変わって、いつもの笑顔で俺を見ていた。

 顔は青ざめていて、目は虚ろであったが……

「飯地……」

 俺は飯地の前に出ていった。

 やっと、飯地とちゃんと話すことが出来そうだ。

 後ろから神上未咲がついてきて、俺の後ろに隠れた。

 神上未咲にとって、飯地は『杖』を盗んだ犯罪者だし、人をたくさん殺した危険人物だ。

 怯えるのは、当然だ。

「いったい、これはどういうことなんだ? 何で、こんなに人を殺したんだ?」

 俺の質問に、飯地はしばらく黙ったままだった。

「俺の邪魔をするからだ」

 飯地は実にあっさりとした言い方で答えた。

 邪魔をするから!?

 それだけで、殺すのか!?

 いったい、飯地はどうしちゃったんだ!?

「おい……。お前はこんなことする奴じゃなかっただろ?」

「前の俺はな……」

 さっきの出来事を、飯地が引き起こしたとはとても思えない。

「それに、結城のためだ」

 結城のため?

 そういえば、さっきも言っていたな……

「結城のためって……。結城はもう死んでいるんだぞ!」

 だが、結城は死んでしまっている。

 何故、飯地は今更結城のために動いているんだろう?

「ああ、そうだ。奴らに……『神上家』に殺されたからな!!」

 飯地が大声を上げる。

 『神上家』に殺された?

 何で、『魔女』になった結城を『魔女』を守護する『神上家』が殺すんだ?

 意味が分からないぞ?

 確かに『神上家』は、信用できなくなっているが……

「『神上家』が殺しただって? 何でそんなことを『神上家』がするんだよ」

「俺が言って、お前が理解できると思うか?」

 また飯地に喧嘩を売られた。

「じゃあ、どうすればいいんだよ!!」

 前とは違って今度は、飯地の行動にも怒っていたので、俺も大きな声を出した。

「そこに『神上家』の子供がいるだろ? そいつに協力してもらえばいい」

 飯地は、俺の後ろに隠れている神上未咲の顔を伺いながら言った。

「あたし?」

「そして、自分の目で見るといい。俺たちが『魔女』を崇拝していたことが馬鹿馬鹿しく感じるようになる」

「何でそうなるんだよ!! お前が話してくれなきゃ、どうしてそうなるのか分からないんだよ! いったい、何があったんだよ!」

「だから言っているだろ? 俺が言って、お前が理解できると思うかって」

 何としても飯地の目的を知りたかった。

 俺は、飯地に近付き胸倉を掴もうとした。

「おっと、邪魔するのなら、お前を殺してもいいんだぞ?」

 飯地は俺に『杖』を向けてニヤリとした。

 何だって……

 俺とお前は友達じゃなかったのかよ!?

「別に、結城の為ならどんな犠牲を出してもいいからな」

 飯地は平然とそんなことを言った。

 あいつはもう、俺が知っている飯地じゃないのか!?

 たくさん人を殺したり、人を奇妙な状態にしたり、俺を脅したり……

「人間をあんな風にするのも結城のためかよ……」

 俺は地蔵の近くで動けなくなった黒服を指差した。

「ああ。あれがないと困るからな」

 飯地は黒服を横目で見て、笑いながら答えた。

 しかも、あれ呼ばわりだ。

「もう、いい……」

 我慢の限界だった。

「お前のことを信じていたが、もう無理だ! お前のせいで、町の人たちが死んでいくのを黙って見てられない!!」

 どうして、こんなことになっているのか分からない。

 その理由を知っている飯地は、何も答えてくれない。

 俺はいったいどうすればいいんだ?

「じゃあ、どうするんだ?」

「お前の邪魔をする」

 俺は静かに怒りを込めて言った。

「そうか……」

 飯地は、一瞬暗い顔になったが、

「まあ、お前の事を殺す殺さないは俺の自由だし、今日のところは見逃してやる」

 すぐに笑みを浮かべて、『杖』を振るった。

ビュォォォォォォォォォォォォ!!!!!

「うわあっ!!」

「キャアアア!!」

 至近距離で突風が起こったため、俺も神上未咲も吹き飛ばされてしまった。

ヒュォォォォォォ……

 突風が吹き止んだ。

 さっきまで飯地がいたところを見ると、やはり飯地はいなくなっていた。

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