第21話 ホロコースト・ロッド
神上未咲が見つけた壁は、俺たちにとってとても都合が良かった。
俺たちをちょうど隠してくれる大きさな上、壁に穴が開いているため、俺たちはそこから壁の向こう側の状況を見ることができた。
何で、こんなところに壁があるのかは分からないけど……
「飯地久彦君。もう、君の目的は分かっているんだ。諦めて『杖』をこちらに渡してもらえないかな?」
『神上家』の人たちと飯地は対峙したままだったが、しばらくして神上達雄が口を開いた。
「それは私たちにとって、とても大切なものなんだ……」
先程の威厳さとは全く違う不気味さを神上達雄は発している。
「その私たちってのは、木丈霞町の人たちって意味か?」
対する飯地は、虚ろな目、青ざめた顔で言葉を返した。
他の人があの飯地を見たのなら、とても不気味に思うだろう。
だが、俺があの飯地を見るのはもう3回目で、慣れてしまった。
「もちろん。木丈霞町のためにいるのが、我々『神上家』だ」
神上達雄はそう言いながら、飯地に近付いていった。
目を凝らしてみると、飯地の背後からも『神上家』の黒服が近づいている。
「それが本当だったらどれほど良かったか……」
飯地は、ニヤリと笑いながら言った。
「結城をあんな風にして、よくそんなことが言えるな!!」
そして、手に持つ『杖』を振るった。
ドゴォォォォォォォォォォォン!!!
空が晴れているというのに、突然雷が落ちてきた。
その雷が直撃したのだろうか、飯地の背後では『神上家』の黒服たちが白目をむいていた。
「物騒だな。突然人を何人も殺すとは、常人の発想とは思えない」
神上達雄は、その雷の直撃を回避しており、再び飯地に近付いていった。
「もう、常人じゃないからな。まずは、その口を身体ごと封じてやる」
飯地はそれに対して、露骨に嫌な顔をして『杖』を振るった。
もう、常人じゃない?
『魔女』じゃないのに、『杖』を扱っているからか?
「くっ!! ガッ!!」
神上達雄が苦しそうな声を上げて立ち尽くした。
身体を動かそうとしているようだが、神上達雄の身体はビクともしない。
飯地が言っているように、身体を封じられてしまったのだろう。
「達雄様!!!」
『神上家』の黒服たちは、それを見るなり、飯地に突撃していった。
「ガッ!! ガッ!!」
神上達雄は、何か言おうとしているが、何も声になっていない。
また、飯地が『杖』を振るった。
ビュォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!
ドゴォォォン!! ドゴォォォン!! ドゴォォォン!!
飯地の周りを突風と雷が吹き荒れ、飯地に近付いていた『神上家』の黒服たちを吹き飛ばした。
「俺たちを馬鹿にし続けた罰だ」
更に飯地は『杖』を掲げた。
ドグォォン!!
ドガァァァァン!!
ビシュゥゥゥゥン!!
辺りを雷が駆け巡る。
『神上家』の黒服たちは、その雷の直撃を受けて倒れていった。
「あ……あ……」
その中に1人だけ、まだ倒れていない黒服がいた。
その黒服は腰を抜かしていて、飯地に恐怖しているようだ。
飯地は、その黒服に近付き、『杖』を向けた。
途端に、何かに突き飛ばされたかのように、黒服の身体が宙を舞う。
「ブスッ!!」
黒服の身体は、地蔵のすぐ近くに落下した。
「『神上家』の1人なら、結城の為の犠牲になれ……」
飯地がそんなことを言い、『杖』を掲げた。
ズドーン!
ズドーン!
ズドーン!
ズドーン!
ズドーン!
その光景は、拷問のようにしか見えなかった。
『杖』の力で、黒服に連続して雷が落とされ、黒服は遂に倒れ伏した。
それを見た飯地は、とても嬉しそうな笑顔を浮かべた。
その笑顔は俺が知っている飯地の笑顔とは程遠いものだった。
まるで、悪魔……
その表現がピッタリとあてはまる笑顔を、飯地は浮かべていた。
俺は飯地に目的があるのではないかと思っていたが、とてもそのようには見えない。
いったい、あいつは何を考えているんだ?




