闘技場
「ん? 護衛?」
流れような青い髪を後ろで結んだケンタウロスの少女に声を掛ける。
ビスタ・ブエナ『メリクリウス』の№3で、凄腕の槍使いだ。
「そう、鉱石を手に入れたら、僕はエクレア山で精霊と契約するから、先に鉱石をもって帰って欲しいんだ」
「まぁ、ここで訓練ばかりに明け暮れててもしかたない。私も一緒に行こう。ところで、私の髪型をどう思う?」
「え?いつもと変わらない、可愛いポニーテールだと思うけど?」
「そう、ケンタウロスの私がしているのだ。これが本当のポニーテールだ」
私は馬で、ポニーではないがな、などと真顔でよく訳の分からないことを言っている。
普段は真面目な武人気質だが、たまに残念な思考回路になるのが玉に瑕だ。
「あとはハピナと、何人かに動向してもらおう」
メンバーを選出し、旅支度を整える。
『メリクリウス』のメンバーとしてはまだ新参者のエグゼだが、四天王である『剣神・ダムド』を終始圧倒し、ソウマですら倒しあぐねていた神魔『神剣聖・ラファエラ』を倒したことにより、英雄的扱いを受けていた。
そして、今はなき聖エルモワールでは、10万の魔法騎士団を束ねるまさに現代の勇者である。
あっという間に幹部になってしまったのだ。
(本当は、もう人と関わらないでいようと思ったんだけどな)
ミハエル・ド・カザド。
謀反の王として、この大陸を支配している。
復讐。
その二文字の為に生きているのだ。
しかし、組織力と言うのは侮れない。
7大精霊と精霊王。そのすべてと契約しても、倒せるかどうかすら分からないほどの戦力をミハエルは秘めているのだ。
この大陸の力、全てを結集しないと、この戦争は勝てないだろう。
そう思うとこの出会いは必要だったのかもしれない。
「よし、取りあえず、準備が整い次第、出発しよう!」
ソウマとユーノと妖精族のティアラ。
三人は一気にラマダの町に来ていた。
大陸中央南に位置するこの町は、海沿いであり温暖な気候ということもあり、町人のみならず旅人にも人気が高い活気ある町だ。
また東には『武器使用不可地域』を抱えているため剣技だけではなく、格闘技も発展している。
「なかなかいい町じゃないか」
新鮮な海の幸の盛り合わせを食べながら、ソウマは楽しそうにしゃべっている。
「おいしいっ」
天真爛漫なユーノも、料理に舌鼓を打っている。
「こ、こんなことしてていいのかな」
本体なら天然ボケをかますティアラが突っ込んでいる。
「なに、『クロス・クルセイド』との会見はまだ、3週間後くらいだからな! さすがに連中もこんなに早くおれたちが到着するとは夢にも思わないだろう!」
本来なら、ツクヨミからラマダまでは三週間はかかる道のりだ。
ソウマはそれを三日で走破したのだ。
化け物というほかない。
「少しはお金も稼いとかないといけないしな」
この町の大きな特徴。
それは闘技場にある。
人間同士はもちろん、モンスター対人間、などの危険極まりない見世物もある。
観戦に来た人は、白熱した試合を見たい人間もいるが、それ以上に人間が魔物に蹂躙されるところを楽しみにしているのだ。
「まったく、悪趣味な話しだ。ま、俺は容易くやられてやる気はないけどな」
命の危険しかないが、その分勝った時の賞金もとんでもない金額になる。
「これ食ったら、早速行ってみるか」
魚の姿蒸し、貝類をふんだんに使ったパスタ、魚介の出汁のスープ。
どれもこれもおいしくて、ついつい食べ過ぎてしまうのだった。
町一番の賑わいを見せている闘技場近辺。
チケットのダフ屋から、勝敗の賭け事まで、様々な人々が行き交っている。
少しがらが悪いのはご愛嬌だ。
「登録をしたい」
まずは選手登録をしないことには、闘技場では戦えない。
「登録、ありがとうございます。対人戦がご希望ですか?それとも、対魔物戦がご希望ですか?」
「対魔物戦で頼む。あ、出来れば一番強い奴で」
受付嬢が目をむく。
「いきなり、一番強い魔物ですか? 少し無謀かと……」
「なぁに、かまわん! どうせ俺が勝つ」
「は、はぁ。ちなみに、何人のグループでのご参加ですか?」
対人戦は基本一対一だが、魔物戦に限っては、パーティーを組んでの参戦が可能である。
「いや、俺一人だ」
「ひ、一人!? あなた、ここの最強の魔物がどんななのか知ってていってるんですか!?」
普段は事務的に受付をこなす彼女も、さすがに声を荒げてしまった。
「せ、せめて今日、その魔物に対戦があるので、それを見学してからのほうがよろしいかと」
「まぁそういうなら、見学だけはしとくか。でも、選手登録だけはしておこうかな」
「はい、わかりました……」
胡散臭げにソウマを見つめながら、後は事務的に仕事をこなすのだった。




