対して、ソウマ一行は
道中は特に何事もなく。
いや、ソウマとたたらのコントのような会話はあったが……。
順調に進んでいた。
「なにが順調だ!貴様と旅をするとろくなことにならん!」
ぷりぷりとお怒りなのは、一つ目で一本足の妖魔。一本多々良の火ノ本たたら、妖精族のティアラだ。
「道中では山賊に襲われ。町に着けばゴロツキと喧嘩になり、歩けば野良モンスターと戦う羽目になる!
貴様は本当にトラブルメーカーだな!!」
エリアの変わるところ全てで一回はなにかしらのトラブルに巻き込まれた、一行の旅は、遅々として進んでいなかった。
「しかもムカつくのが、全て人助けだという事だ!貴様は善人か!」
「結構な事じゃないか。みんな、喜んでたぞ?山賊がいなくなって、ゴロツキを町から追い出して。暴れてるモンスターをおとなしくさせたんだ」
各地で、勧善懲悪の旅路を繰り返してきたらしい。
なら工程の3分の2は終わっていなければいけないところた。
「なぜかトラブルが向こうから団体さんでやってくるんだからな!」
なぜか誇らしげなソウマ。
「そのトラブルを嗅ぎ付ける嗅覚は本当に大したものだ。
そうやってエグゼや私やティアラも巻き込まれて行くのか……」
思えば。
ソウマとたたらティアラがシスカの町を出発してから、まだ一週間しか経っていない。
大急ぎで『精霊王の剣』を作り怨敵である、ミハエル・ド・カザドに、大量の造魔をと、造魔よりさらに強い神魔まで送り込まれ、死に体でなんとか倒したのだ。
そこから二手に分かれ、ソウマ、たたら、ティアラの3人はソウマがリーダーをつとめる、反乱軍『メリクリウス』と合流するために、東北へとむかっているのだ。
そこで一旦体制を整え各地にいる、ミハエルの領地を解放しつつ、7代精霊と精霊王を探し出しエグゼが再び契約をする。
そして、魔都と化した王政グランベルトの本拠地に乗り込む。
その道のりは計り知れないほど険しく、とてつもなく長い。
それを。
「この男は!ことごとく予定を遅らせてくれる!」
ただ、わかってはいるのだ。
この男は本当に困っている人を捨て置くことが出来ないのだ。
そして人を助けるためだけに、類い稀なるその戦闘力を身に付けたのだ。
ただただ単純で純粋なその思い。
口では悪態を付いているが、たたらは嫌いではなかった。
そして実際、褒められるべきことをしているのだ。
誰かに、心から感謝をされたことなど、いつ振りだろう。
振り回されながらも、一緒に人助けに加担していた、たたらの心にも、その感謝は痛いほど届いていた。
だからこそ、こそばゆくて照れくさくてついつい悪態を付いつしまうのだが。
「それに人助けはメリクリウスのためでもある」
とポツリとソウマが言った。
確かに『メリクリウスのリーダー、ソウマ・ブラッドレイ』として人助けをしていれば、反乱軍である、メリクリウスの名声も必然的に上がる。
王政グランベルトの圧政に苦しむ人たちは、当然助けられたメリクリウスにその力を貸すだろう。
と、同時に、他の勢力からの弾圧も強くなってくる。
人間のみの国家を作ろうとする、クロス・クルセイド。
魔物のだけの国家を作ろうとする勢力。トール・ド・ルート。
この2大勢力との戦いは、避けて通れない。
その時のために、ありとあらゆる角度から、味方を作らなければ行けないのだ。
「人間だとか、魔物だとか、そんなのは関係ないんだよ。
もちろん、種族差による、差別化は必要かもしれない。しかし、それを武力を持って押さえつけたり、いうことを聞かせたり、ということは本来はあってはならないんだ」
幾多の戦場を渡り歩き、様々なモノたちの生と死を見てきたソウマ。
「抑圧された感情は、時として爆発し、すべてをマイナスの方向へ導く、か」
たたらがつぶやく。
ミハエルの圧政に苦しむ国民は、常に心の底に、表に出せない感情を抱えている。しかし、それを出してしまえば、まっているのは。
死。
のみだ。
造魔という、巨大な暴力で、民衆を押さえつけている恐怖政治。
それが、現状だ。
「俺の国でもそうだった。上は安全なところから指示を出し、自分たちはただ座っているだけ。
失敗したら現場の責任者のせいにして、すべての罪を被せればいい。そんな有様さ。
……よほど、戦場で敵として相見えた奴らの方が、俺らに近しい存在だったよ」
同じようなことが今、この大陸で起きようとしている。
「なんとしても、それだけは避けなければ行けない。今なら、まだ間に合うからな」
深い瞳で語るソウマの横顔をジッと見つめるたたら。
その大きな瞳を持ってしても、ソウマの心の奥底にある、戦いに対する思いは読みきれなかった。
「ま、どうせ長旅だ! 各地を楽しみながらゆっくり行こうぜ!」
直線的に目的地に向かうのではなく、フラフラと蛇行しながら、本隊と合流するために旅を続ける。
「全く。貴様は真っ直ぐ歩けないのか? まるで酔っ払いだな」
しかし、たたらは気づいていた。
その蛇行も、この周辺の土地を知るためにしていることを。
大きな戦いにおいて、地理を把握しているかいないかは大きな差が出てくる。
この辺りの土地を頭に叩き込み、地図に書き表し、戦略を練る。
毎晩のソウマの日課だった。
一見軽そうに見えて、実は行うこと全てに意味がある。
この数日を一緒に旅してそれでもなお、この男の底は知れなかった。
「さて、今日はあの集落で泊まらせてもらうか」
前方に見えてきた、小さな灯りの集まり。
そこに人が暮らしている証拠だ。
「おにゃか空いたよ~。ご飯まだぁ?」
今まで沈黙を守っていたティアラは、どうやら寝ていたらしい。
「ははは。もうすぐだ、ティアラ! ご馳走を作ってやろう!」
イメージに反して、料理はプロ顔負けのソウマが豪快に笑う。
助けた人たちがお礼にと、いろんな村からもらった食材がまだたんまりとある。
今夜の夕食は、豪勢になりそうだった。




