第52話 レアリティ変更士
『アイテム【ただの木の枝(SSS)】とスキル【聖女の願い(ユニーク)】を【合体】させます』
【ただの木の枝(LR)】+【聖女の願い(ユニーク)】=【ユグドラシルの木剣(GR)】
「この力は……」
【ただの木の枝(LR)】→【ユグドラシルの木剣(GR)】
持つだけで力が溢れてくる。これがレアリティ変更士の新たな機能――【合体】――の力なのか。
『おめでとうございます。GR……ゴッドレアのレアリティに到達できました。あなたは神の力の一端を所有する唯一の人間となりました』
ゴッド……古文書に記されていた神の名前がゴッドと記載されていた。そのゴッドとなにか関係があるのだろうか?
『注意:スキル【聖女の願い(ユニーク)】との【合体】は熟練度が足りないため、5分間しか維持できません』
五分なんて使わない。この攻撃を全身全霊で――僕が持てる全てをぶつける。
「僕は……みんなを不幸になんてしたくないんだ!」
僕は【四連撃(LR)】を放つ。たった4発しかないが経過時間は刹那。
『ナンダ!? 先程トハ全く違ウゾ!! カ、身体ガ再生シナイ!? ヤメロ! ソンナ物ヲ食ラッテシマエバ死ンデシマウ!!』
これがレアリティを変更士の新しい機能――【合体】の力!! 勝てる! これなら絶対に!!
「お前はこの世界の生物を殺そうとしてるんだよね? 今更虫が良すぎるよ!!」
僕は【四連撃(LR)】×10000を放つ。一振り一振りが細胞レベルで消滅させる神の刃。その数なんと――40000連撃。
「負けてたまるかぁぁああああああ!!!!!」
腕が千切れそうだ。でも今止まる訳にはいかない。カンユウを……邪神アスタールを倒して、世界が変わらずに平和で過ごせるように!
光の刃がまるで球体のように広がっていく。
一振り一振りはただの斬撃かもしれない。でもこれが平和に繋がる攻撃なのだ。
『グワァァァァァアアアア!!!』「邪神アスタール様!! お赦し下さい!!」『「まさかコンナ矮小如き人間にやられるなんて!」』
赤く巨大な蛇――もとい邪神アスタールは跡形もなく消滅した。最後ところどころ人格が戻っていた……言い換えれば邪神アスタールが完全にこの世界から消滅したことを意味している。終わった……本当に終わったんだ!
「やった……! やったんだね! アーク殿!!」
「ありがとう……! リュミエールの力のおかげだよ……!」
リュミエールは首を横に振った。
「ううん。世界が平和を取り戻したのはアーク殿のおかげ……君はおとぎ話に出てくるどの勇者よりもかっこよかった……! ありがとう……! 私が大好きなこの世界を救ってくれてありがとう……!」
僕はおとぎ話に出てくる勇者ほど、世界を救いたいなんて崇高なことは思っていない。
僕が救いたいのは僕の手が届く範囲の大事の人だけ。王国とジャポリの街の民。そしてここにいるラティ、ユリナ、リュミエール達だけだ。
だから世界を救ったのは、たまたまなのだ。だから僕はおとぎ話の中に出てくる勇者ではないし、かっこよくもない。
「アークくぅぅぅううううん!!!」
「ら、ラティ!? ……うぐっ!」
ユリナは僕に全力で抱きついてきた。
「すごい! すごいよ! 私信じていたよ! アーク君が勝つって!!」
ラティは泣いていた。
「ごめんね……心配かけて……だから泣かないで?」
「泣いてない!」
ラティはそう言いながら、僕の胸の中で涙を流していた。
ラティの身体はとても熱くて、僕の方が火傷しそうだった。
泣かせちゃうくらい心配かけたのは本当に申し訳ないと思う反面、ちゃんと勝てて良かったと思っている。
「さすがです……本当にさすがです……! アーク様!」
「ユリナも心配かけたね」
「し、信じてました。アーク様が勝つって……!」
ユリナは泣きそうなのを我慢し、僕に微笑みかける。
僕と出会った当初なら泣いていたはずだ。この数か月でユリナは本当に強くなったと思った。今ではジャポリに欠かせない大切な人だ。
「う、ううっ……」
カンユウはまだ生きていた。生きているのが奇跡に近い状態だけれども、今のままでは何をしなくても息絶えるだろう。
「まだ息があるなんてね……分かった。私が全てを終わらせてあげる。それがせめて楽にしてあげるね……」
リュミエールは自身の小さな手でカンユウの首に手をかけようとしていた。
「リュミエール……待って欲しい。そんなことをしてはダメだ」
「でも……」
「君が手を下す必要はない。然るべき場所に引き渡そう。そして法の元で裁いてもらうんだ。それが彼もできる唯一の償いだと思うんだ」
今、リュミエールがカンユウを殺してしまえば
「だから、死なない程度に回復魔法をかけてほしい」
「……わかった。今回の立役者はアーク殿だから、お願いを聞いてあげる……【ライトヒール】」
リュミエールは必要最低限の回復魔法をかけた。
それでもカンユウの呼吸は安定し始める。これで死にはしないだろう。
あとは王様とかに任せよう。きっと、カンユウの罪に対して最大限に罰を与えてあげてくれるだろうから。そうして、真の意味でカンユウは真の聖職者になれるのかもしれない。今後は人々の平和を祈って生きて欲しい。
「じゃあ、もうジャポリに帰ろうか」
これにて一件落着――
「待て!! アーク!!」
――かと思っていたが、僕は怒号と共に名前を呼ばれた。名前を呼ばれ振り返った先には……、
「ドネイクお父様……」
「お父様だと!? この親不孝ものが!! 知っているからな! お前が強いのはこの地で採れる木の枝が強いからだろ!? この卑怯者が! 絶対に殺してやるからな!」
元お父様――ドネイクは木の棒を握りしめる。
すると僕の眼の前に青いウインドウが表示された。
『【湿った木の棒(N)】のレアリティは最低のため変更できません』
「本当お前は馬鹿だよな! 木の枝より木の棒の方が強いに決まっているだろう!」
でも元お父様……それはただの木の棒なのです。
「では死ねぇぇぇぇええええい!」
僕はあえて受ける選択をした。
【湿った木の棒(N)】が僕の身体に当たった瞬間にぺキッ! と音と共に折れた。湿っているからなおの事、折れやすくなっていたのだろう。
「なぜだ!! なぜだぁぁぁああああっ!」
元お父様は変わられてしまった。僕を追放する前はこんなに惨めではなかったのに。
僕以外のラティ、ユリナ、リュミエールの三人はすごく哀れな目でドネイクを見ていたのだった。
「突然で申し訳ない!ジャポリ領の領主、アーク殿とお見受けする!」
男が片膝を地に着け、僕に頭を下げる。僕はこの男に見覚えがない……誰何だろう。
「は、はい……? 僕はジャポリの街の領主アークですが……あなたは……?」
「我はクロイド帝国の帝王をさせてもらっているクロイド・ユーリウスである! 我がクロイド帝国はジャポリ王国の属国にさせて頂きたい!」
何故、ユーリアスはジャポリ王国と言ったのだろう。その真意は分からない。
ただユーリウスの瞳は何かを怯えていたのだけは理解できた。
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