第49話 ブレスレットの意味(SIDEカンユウ)
私は意識の中いた。意識の中は暗闇だった。
アークとかいうガキに手も足も出なかった。しかもあの忌むべき悪魔よりも下だと馬鹿にされたのだ。絶対に許さない。憎悪が止まらない。力が……力さえあれば……!
『チカラガ欲シイカ』
「この声は私の中の神様……!? ついに私の助けを求める声に、お応え下さったのですね!」
私は初めて、私の神の御姿を謁見することが叶った。
私の中にいた神は赤い蛇の姿をしていた。ただ普通の蛇とは明らかに異質。鱗一枚一枚に小さな蛇が蠢いている。
『世界ヲ思イ通リニスル為ノ、憎キ相手ヲ壊ス為ノチカラヲ』
「欲しいです……! 私を馬鹿にしたジャポリの領主も! 散々コケにしてくれた聖女も……! 全てが許せない! 全てを壊してやりたい……!」
『ヨカロウ。ナラ契約ヲ結ベ』
「このまま目を覚ましても私は司法の名の元に殺されてしまうでしょう……それならば受け入れましょう」
『契約。チカラノ代償ニ、汝ノ死後ハ我ノ供物ニナル』
「供物!? 死後なお私の神のために命を捧げることができるのですね!? 私は……誰よりも幸運だ。これも日頃に行いが良いからだ……!」
嬉しくて笑顔が止まらない。
『デハ……ソノ身果テルマデ、我ト同体二成ル栄誉ヲ与エヨウ』
「あぁ……ありがたき幸せ」
これを幸せとしてなんと呼称すればいいのだろう。いや。そもそもこの幸福に名前をつけることすら無粋だ。常人が到達することができない幸せに酔うことができる。
『デハ、誓エ』
「私、カンユウは貴方様に全てを捧げます。私の生涯は貴方のために。私の死後は貴方の供物として使命を全うすることを誓います」
『契約成立ダ』
まさか……本当にこんなことが……! こればっかりはアークとかいうガキに感謝をしなければ……せめて苦しまずに殺してやろう。
『我ハ邪神アスタール』
アスタール様が二股に別れた舌をチロチロと出す。私はその舌に向かい腕を伸ばしていた。
『契約ニ従イ、貴様二世界ヲ壊ス為ノチカラヲ授ケヨウ』
アスタール様は私の腕に舌を絡ませる。
「う、うわぁぁあああああ!」
私の身体に、血管に、細胞に、精神に……あらゆる私という概念に力が注がれる感覚。まるで暴力。神聖なる神の力が私を構成あらゆる場所に入ってくる。
その結果、私を構成する全ての細胞がアスタール様と同じ蛇に変化した。
我が君、邪神アスタール様……私の中の神の真名はあまりも美しい。
『GUAAAAAAA!』
さあ、この世界に新たな秩序と救済を与えよう。
邪神アスタール様と共に。




