生存の意義
いつでも変わらない景色にそろそろ見飽きて、二人に気になることを尋ねた。
「二人さんは、何故群れから離れたのですか?」
小夜の質問にどう答えれば良いのか、二人は同時に顔を合わせ、どう答えればいいのかと悩んでいた。
「まずは私」
弦は先ほど言ったように、鶴の妖であり、鶴は昔から神の賜物だといわれていた。そのために人間は鶴を敬い、物を捧げて身の平和を願っていた。鶴からも、人間のために何かをしようと考えていた。その具体例が「鶴の恩返し」と論じれば、分かりやすいだろうか。鶴というものは決して、表の場に出ることをしなかった。弦も表に出ようなど、初めから考えていなかったが、ある日を機会にそう思うようになった。人間の少女に恋してしまったのだ。少女に会いたいだけに、表に出ることを罪に思わなかった。同時に、少女は弦の美しさに惹かれ、弦しか見れなくなってしまった。毎日弦と会わないと気が済まなく、いつでも共にいようとした。そのひねくれた気持ちが高まり、ついには、弦を永遠に私物にしようと殺害を考えていた。銃を持った男を連れて、弦に標的を当てようとしていた。それに気付いた弦の仲間が、弦を押し出し、身を投げた。結果、弾が仲間に貫通して、間も無く亡くなってしまった。仲間たちは全ては弦のせいだと、悲しみに暮れ、追放しようとした。弦にも、自分に責任があると思い、群れから離れたという。
「人間に恋してしまった私もどうにかしていたのです。禁断の実はどんな味なのか、気になっていたのがいけなかったのです」
自身の行動を責めるように、弦は声を落としていた。人間は欲望の塊である。それに気付かずに、表面に惹かれた私も未熟だった。
「俺も似たことがあったな」
雅は弦を見つめながら、話し始めた。
猫の仲間で、数がはるかに多かった。大体は生まれすぎて、飼い主が育てられないという理由で捨てられたのがほとんどだった。似た境遇に置かれたために、お互いに親近感が湧き、全員家族だと思えるような関係を築いていった。ちゃんとした親はいなかったが、親のような存在がいた。時々、心優しい人間が家族の一員を拾い、大事に育てる様子が見られた。私達もそれを嬉しく思ったし、少し寂しいが、静かに見守っていた。ある日、大人の女性が雅を見つめて、飼うか迷っているようだった。雅にも、女性に良い雰囲気を感じ、是非共にしたいと思っていた。雅から女性に近づき、可愛らしい鳴き声を出した。女性も好まれていると嬉しく思っていた。そして、女性は雅を抱きしめ、雅は家族とお別れした。しかし、その選択をしたのは失敗した。女性は最後まで責任を持とうとしない、最悪な人でもあった。初めはちゃんとご飯を与えられていたが、段々くれなくなってきた。雅はそのままでは死ぬと、危機感を感じ、逃げることを決断した。そのまま家族のところに戻ろう。心温まるところまで走ると、そこには誰にもいなかった。全員殺されたのだ。猫があまりにも多いため、退治しようと毒ガスが散布されたらしい。どうせなら、俺も共に逝きたかった。
生きる理由を失われた二人に、夜行が現れて、生まれ変わるのを決断したのが今に至る。小夜も何ともいえなかった。そんな悲しみが存在してはならない。夜行にくれたこの命を大事にしていこうと、強く決断した。また夜行にも、今後にもこの三人、他にもいる仲間たちも大事にしていこうと強く思っていた。




