生まれ変わりの挨拶
景色は白色で塗りつぶされ、それ以外の色が存在しない。後ろから何かが聞こえる。
「夜行様!夜行様!」
二つの影が段々大きくなっていく。やっと姿をみせると、夜行に負けないぐらいの大きな身体をしている者が二人いた。しかし、夜行のようなご立派な白羽ではなく、小さな羽が背中に生えていた。元々この二人は別の妖だったらしく、夜行の力を少々授けることでこういう現象が出るそうだ。既に、私にも小さな羽が生えているが、まだ飛べる程度ではない。儀式を済ませて、訓練すれば自由に飛べるという。飛ぶ自体がどういうものなのかと期待しながら、三人の会話に耳を傾けた。どうやら私のことを話しているらしい。
「やけに帰りが遅いと思ったら、この少女を連れてくるとはどういうことですか。夜行様」
「別にいいだろう。禁止されることでもなかろう」
「周囲からの評判は厳しいと思いますが」
「おい、それをどうにかするのが俺たちの仕事だろうよ」
「私の言葉に口出しする権利はない、この野良猫め」
「野良猫っていうな!おまえこそいつでも恩返しするが良いわ!弦!」
「鶴の恩返しと私は無関係だといつも論じているだろう。君に学習能力がないとは、前から知っていたが、まさかここまで低いとは思わなかったぞ」
口論が止まらない様子に、笑いがこらえなかった。
「仲良いのですね」
「仲良くない!」
「野良猫と同じにしないでもらいたい」
同時に言ってくるのもまた可笑しくて、笑いが止まなかった。雅という者は、猫の妖で、弦は、呼び名の通りである鶴の妖だそうだ。二人とも、群れから離れてしばらく一人で暮らしていたが、ついに狩るための気力も無く、心も身体も弱まっていた。そこに夜行が現れ、力を授けたおかげで、二人とも健康になった。今後は夜行のために生きていこうと、部下として生きる道を選んだ。この二人も小夜と同じで、夜行に命を助けられたのだった。
「雅。弦。まだ何にも知らないこの小夜を守りつつ、色々なことを教えていただけぬか。お願い致す」
二人に頭を深く下げた夜行の行動に、二人は驚きを隠せなかった。
「承知致しました。ただ、我らよりあの女がふさわしいと思われます」
「責任転嫁かよ!」
「決してそうではない。あの女の方が知識に限らず、色々知ってる者だろう。それにあの女は、教えるのを非常に好むということを君にもよく分かっているだろう」
「確かにそうとも言えるな。成長するたびに、女同士で話したいことも増えるだろうしな。あの女の方が色々やりやすいと思うね」
「そこまで考えていたか、雅。少しの少しだけ見直してやろう」
「少しの少しって何だよ!器小せえな!」
「せっかく見直してあげると親切に述べたのに、それを拒否するのか。礼儀無い野良猫め」
また恒例のように口喧嘩が始まった。
「夜行さん、二人がさっきからあの女って言っていますが、一体どなたさんなのですか?」
「多分、椿という者だろう。花の妖で、知識豊富だ。小夜にとってはいい刺激になるかもしれんな」
雅と口喧嘩している時に、弦が何かを思い出したように夜行にこう言った。
「話が脱線してしまいました。夜行様に言われた通り、儀式の準備を終えましたので、早速いらっしゃってください」
「了解した。小夜、そこに椿という者がいるから、早速紹介しよう。二人も来るが良い」
「御意」
夜行は小夜を優しく抱きしめ、また飛び続けた。




