亡者の障子 Ⅲ
小夜、小夜、
私を呼ぶひと。誰?
目をこすりながら、周囲を回した。誰かいる。大きな身体をしていて、それからーー
朝日の光に埋れて顔が見えない。
「どなたさまですか」
「おぬしを守らなければならないという義務を与えられた身よ」
光からゆっくり離れる同時に顔がはっきりと見れた。背中に大きな白羽が生えており、少し赤味が残す整えている顔立ちだった。
大きいというより、はるかに大きいという表現が正しいと言えようか。そんな雰囲気が漂っていた。今まで見てきた男というものは、少し小柄で、弱々しいだと思っていた。小夜がこう思い込むのも仕方ない。小夜に限らず、身内にも何人か身体が弱かったのだ。
そのために、周囲から「亡者家」とも呼ばれていた。亡者家なのだから、ここにあるものは全て亡者なんとかと皮肉に名付けられた。亡者箪笥、亡者布団、そして、小夜の目に映る障子も亡者障子だと呼ばれていた。
その亡者障子から出てきたというのは、やはりあの世からきた者であろうか。私を連れて行くつもりなのだろうか。しかし、不思議なことにその大きい身をしている人に恐怖心を抱えなかった。むしろ温かみを感じられたのだ。
「また私も貴方のことを守らなければならない身でございますね。良かったら、名前を教えていただけませんか」
「夜行という者だ。おぬしは小夜であるな」
「はい、同じ漢字があるというのはまた運命かもしれませんね」
「これぞ運命よ。ただ、幼いおぬしを何故守らなければならないのか、何故この時期なのか、我は理解できない」
長く悩んでいるような様子が見られ、小夜はそう述べた。
「それは私がもうすぐこの世から去るからなのではないでしょうか」
幼い身から重い言葉を発するとは思えないが、小夜はもう理解出来ていたのだ。




