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ーー眠りの歌ーー

 神殺樹(シンサツジュ)。それは神すらも殺すと言われる伝説の樹。

 眠りの森を疾走するセウォルツ。

 彼女の見慣れた風景はもうどこにもない。

 眠りの森を抜けた先に見えたのは小さな都市であった。

 辺境都市 就眠街(スリーピア)

 ここは閑散とした風景が広がる眠りの街。


 眠りの森に近いからか行き交う人は皆、眠たげな表情を浮かべている。


 あまりに活気がないため、訪れる者は少ないが、眠れない人にとってはよく眠れる街として好評のようだ。


 そんな就眠街に、ある者たちが足を踏み入れる――


 『ここが眠れる街スリーピアか!!! 最近寝足りなくて絶望したぜ!!!』


 陽気に声を上げるのは姉のミザディ。


 『姉さん......あまり寝ないと死ぬよ......?』


 心配そうに見つめる双子の弟アルロイを、彼女は笑い飛ばす。


 『心配すんなって♪ アルを一人にさせるわけにはいかないだろ? 死ぬときゃ一緒さ』


 『姉さん......』


 『それにしても寝てる人多いなぁ♪ これは期待できそうだ♪』


 (......にしても ......道であんなに眠れるもんかね?)


 街を歩いていると、遠くからこちらに向かって歩いてくる少女が見えた。


 『ちょっと......!!! そこの嬢ちゃ〜 ん......!!?』


 少女に向かって走り出したミザディだったが、目が合った瞬間、力なく倒れ込んでしまう。


 『......姉さん? 姉さん!? しっかりして!!?』


 慌てふためくアルロイを、少女はじっと見つめ、静かに話しかける。


 『大丈夫?』


 ーー場面は神殺樹に変わるーー


 『大変だ......!!! セウォルツが眠りの森を抜けたようだ!!! ......ってあれ?ヘルヘイム?』


 神殺樹と陸の孤島(ホワイト・アース)を行き来するヘルヘイム。

 彼女は陸の孤島で神堕ち人(カミオチビト)に付きっきりのダルヘイムを後にし、神殺樹の護衛を務めていた。


 (セウォルツが森を抜けた...... ということは、あの者たちとも会っているのでしょう)


 ヘルヘイムは僅かに思いを巡らせる。


 ーー運命の七連星ーー


 北斗七星をその身に宿す者たちの中で唯一連星と呼ばれるその存在

 運命の奈亡星 ミザディ&アルロイ

 双子合わせて一星となる特異な星には別名がある


 ーー奈落のミザディ 亡念のアルロイ


 (絶望ちゃんと亡き虫くんに眠り姫...... 確実に運命の存在は揃ってきましたね)


 ヘルヘイムは微かに胸を躍らせる。


 (問題はミザディとアルロイが運命の存在を知らないことですね...... 何か問題が起きなければいいのですが......)


 ーー就眠街に場面は変わるーー


 『ふわぁあ...... よく寝た♪』


 『姉さん!!!』


 ミザディは半日も路上で眠っていたようだ。

 辺りを見ると、心配そうに見つめるアルロイのすぐ側に、あの少女が立っている。


 『嬢ちゃん...... 名前は......?』


 『嘘!? 君も話せるの!? ......私 ......セウォルツ! セウォルツって言うの!!! よろしくね!!!』


 嬉しそうに話す少女、セウォルツを見てミザディは気分が高まる。


 『嬢ちゃんのおかげか......!? よく寝られたぜ!!! ありがとな!!!』 


 セウォルツとミザディはすぐに意気投合し、食べ物を分け合った。


 『今日は気分が良い!!! ぱっ〜とやろうぜ!!!』


 アルロイも入り混じってのパーティーが始まる。

 三人は食を共にし、気分が高まり歌い出す――

 就眠街(スリーピア)が眠れる歌に包まれてゆく。

 人々のイビキが木霊し、三人の出会いを祝っているかのようだった。

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