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1.

一部、元の方にもフィードバックしながら書き直していきます。しばらくお付き合いください。

 カサカサと葉が擦る音に、窓を開けたまま寝てしまったかと思いながら目を覚ますと、そこには青々した葉と青空がのぞく隙間のある壁が見える。天井にも見覚えがないし、部屋は散らばっているはずの物が全くなくて。


(……ん?……な!ここ、どこ?!え、ちょ、ちょっと待って!あれ?なに?どういうこと?昨日、私、何してた?!てか、メガネ!メガネ!)


 いつものように枕元近くに目を向ける。いつもの赤いフレームが見えない。それどころか、なんかいつも以上にはっきりと見えている気がする。


(無い!?無いじゃなくて!かけっぱなし!やっちゃった!?て、………え?かけて……無い?え?え!)


「えぇ!?視力回復?!!!?」


『ゴホン!よくぞ目覚めたって、え?そっち?!』


(ひゃぁ!誰かいた?!……ん?誰も……居ないよね……でも、何か聞こえたけど?)


 思わず出た声に重なるように聞こえてきた声に慌てて周りを見渡す。人影は見当たらない。ボロボロの壁から射す光や光景から隣に部屋がある可能性はないだろう。そしてやはり見覚えがないことを再確認する。あれだ。どう見ても廃屋。ホラーやサスペンス、ミステリーといった映画かドラマで良くあるような廃屋だ。壁には穴が開いているが、天井や板間に傷んだ部分はない。板間の奥に土間があり、そこには竈と台、水瓶があるだけだ。そこだけ見れば、時代劇の長屋、その土間と炊事場というところか。水瓶の横には外が見える出入り口が開いてある。

 逆に板間の上には私が今いるベッドと背の低い本棚。そして部屋の真ん中にドデンとおいてある……あぁっと、あれだ。庭のインテリアとしてある植木鉢とか載せる……飾り台と言っただろうか。ローマ風の円柱にちょっとしたものを置くような形の台で、その上に真っ赤な小さいふかふかしてそうな座布団に水晶玉ぽい物が乗っている。占い師とか持ってそうなイメージのあれだ。ただオパールのような虹色の光を点滅させている時点で、水晶玉ではないし宝石でもないだろう。

 

『ん~~っと…………そんなに見つめちゃイヤ~~ン?』


(!?うわぁ……なに?あれ……)


 やっぱりというかなんというか、あれから聞こえてきていたようだ。それにしても茶目っ気だろうか?声が高いとはいえ、男の声で言われるとなんかムカッとするんだが。それはまぁ、置いといて、どうやらあちらからこちらは見えていると見て良いだろう。推定カメラ内臓式通信機……言いにくいのでやはり「何か」で良いか。さて、「何か」の話を聞くのは色々物色してからでも良いだろう。


「さて、まずはぁ?って、え?えぇぇ!?」


『ちょ!無視はやめて!本気で泣いちゃうから!』


(なんで?どうして?どうなってんの!?)


 「何か」が何か言っているが、それこそ今はどうでもいい。ベッドから降りようと見下ろした手足を見、もう一度、部屋の中を見渡す。が、鏡のような物は無い。水瓶はあるが、水が入っているか分からない。それよりまずこれで覗けるのかはなはだ疑問だ。

 仕方ない。ベッドの上で、もう一度自分の体を見、触る。どこもかしこも見える範囲で小さくなっていた。手足などプニプニだ。考えようによっては、どこぞの高校生探偵みたいに若返ったと見るべきか。さて、この状況を説明できるのは、「何か」となるが。原因もその「何か」である可能性は高いわけで。まぁまずは、かぶっていた布団を床に落とす。これで、降りても大丈夫かな?

 

「何か……ヒビでも入れれる物無いかな……」


『!!! すみませんでした! 壊さないでください! 消えてしまう!』


 床におりながら、ぼそっと呟いた言葉に慌てた様子で何か口走った「何か」。なんとなく雰囲気的に土下座しているようだし、許してやるか…。


「それで?」


『え……そ…それでとは?』


「それで何?」


『え、あ、と…ゴホン! よ・良くぞ、目覚めた! 我が娘よ! 我がそなたの父ぞ!』


(はぁ!?娘?父?……何言ってるの?これは)


 つまり私をこうしたのは、この「何か」で間違いないという事と解釈できるわけだ。てか、何というかムカつくんだよなぁ 何か…でもなぁ、私が扱えるものと言ったらこのマク……おや?枕を少し持ち上げ、そこに在る物に気が付いた。なかなか良い物がそこにある。寝てるときはそんなものあるようには思えなかったが、まぁ、良いか。少々片手でこれらを持つのはずっしり来るけど。何とか持って動ける重さだ。それらを背中に隠しつつ私はその台座に近付き、座布団に手をかけた。


『おぉ、我の偉大さが分かってくれるのか! では、我の言の葉にしたがぅぁ! <ゴトン、ゴロゴロッ> うぅぅっん? なにが、て! え? うそ! なぜそれが! てか、待て待て待て待てぇぇぇ! 何かわからないけど! 僕が悪かったから! 頼むからそれ退けて! そっち振り上げないで!!! お願いだか <ガチンッ> ぎゃぁぁ! 割れる! 壊れる! 死んじゃう! 人殺し! あぅ、ごめんなさい、ごめんなさい! 本当に僕が悪かったから! すみませんでした! 調子に乗り過ぎました!!!! <ゴトッ> ひぃぃ!』


 座布団を引っ張り、「何か」を床に落とす。転がっていった「何か」を座って太腿で挟んで。ノミをあてて、小槌を軽く振り下ろす。目測誤って手にぶち当てないように軽くだ。うん。第二弾を打つまでもないか。腕も怠いし、振り上げていた小槌を床に振り下ろす。

 その音に「何か」はビクッと震えたような感覚が挟んでいる足とノミを当てていた手に伝わってきた。もしかしたら、この「何か」が意思を持った石玉という事なのだろうか?それであれば、それこそSFかファンタジーではないか。

 ちなみに確かめる方法としてはこの「何か」を割って中身を確認するぐらいしか今の所、手はない。「何か」の中身が機械であればSF、普通の断面や生き物が出て来たらファンタジーである。だがそれをすれば「何か」との意思疎通ができなくなり、この状況の説明を聞けなくなるという事でもある。

 さっきの座布団を引っ張り落とした時も、太腿で挟んでノミと小槌で割ろうとした時も、その危険性があったのだが。まぁ、その時はその時。何とかなったのだし、今は良しとするべきだ。


「さて……で?」


『え?えぇっと………でっとは? ひぃ! すみません! すみません! 壊さないで!!!』


「……はぁ…そうねぇ。まずは……私がなぜここに居るのか。あんたの言い分聞かせろ」


『えっと! うんと! あわわゎぁわぁ! 僕のマスターになってください!』


「はい?」


『えぇとえぇとですね。僕は一人では何もできないダンジョンコアなのです! ですから、僕を使ってくれるマスターを長年探しておりました。しかし! こんな辺鄙な処にくる者たちは考えなしの野蛮人が多く、僕を使うことはとてもとても……。ですから、そこでですね。異世界から魂を呼んで小さい頃から育てればっと……ひぃ!ちょ!やめ!』


(……うんと…それは……あれか?源氏物語か?)


 ノミの角を木魚を叩くように叩きつけ光り方を見つつ考える。自分に都合のいい主人が欲しかった。そういうことだろう。で、異世界から魂を呼ばれたと。つまり、若返ったではなく、生まれ変わったということだろうか?それはそうと、この「何か」。ノミをあてる都度一様に光ってるけど時折ひと際光る筋があるんだけど。もしかして、そこにノミ当てて叩いたらパカッて割れないかな。


『ひぅ! なに!なに!なんか寒気が!』


「まぁ、良いか。で?……元の世界で私、どういう扱いになってるの?」


『え……えぇと…し…死亡しております』


「それ、あんたが?」


『え?いえ!け!決して!僕がどうこうしたってことではないんです!決して!魂だったあなた様を拾ってきただけで!あとあと……あ!その体についてはその時に得た情報から作らせていただきました!』


 つまり召喚系じゃなくて転生系か。あ、転移系だっけ?まぁ、ジャンルは置いといて。生まれ変わる前のことについて思い出してみる。散らかった部屋。端の方に固めて置いてある漫画に文庫本の数々。今もそうだろうがコレクター気質なのか、途中で止まって読まないで積みあがっている本の数々に見ることのなかった限定版付属のDVD。うん。もったいないと思うのも……。はて?それと両親に妹……。うん。家族や友達の名前や本の題名が出てこない。パソコンや時計といった道具の名称については普通に出てくるのだが。本の内容やジャンルとかはわかる。全体的な名称とかもなんとか。だが、人名、タイトル、企業名あたりは思い出そうとしても出てこない。自分についてもこういう性格、こういうことをしていたってのはわかるが、名前が分からない。


「ちなみに名前が出てこないのは?」


『へ?え?わ、分かりません。本当です!信じて!どうか信じてください!!』


 この慌てようは何も知らないのか、隠そうとしているのか。分からないといえば、自分の最後についてもわからない。寝て起きたらここでしたという感覚だから。でもまぁ、良いか。この世界で生活する分には支障は出ないだろう。たぶん。それよりも今後の生活だ。まぁ、選択肢は一つだけなんだが。どんな世界かもわからない、生きていく知識なんて皆無。「何か」の話をけってそうですかと追い出された日には、うん。胸張って言える。数日で押っ死ぬね。絶対。


「じゃ、最後。契約事項とかある?」


 まぁ、私ほとんど読まずに契約するほうだけどと考えつつ、「何か」を見る。反応がない。ペチペチッと叩いてみる。


『へ?え?……あ!マ、マスターに……マスターになってくれるのですね!!ちょっとお待ちください!』


 嬉々として、書類か何かをひっくり返しているような「何か」の様子にため息をつきながら、これからのことを考える。衣食住の中で一番に考えないといけないことは食だろう。まだまだかかりそうな「何か」をそのままにして部屋の中を物色することにする。ノミと小槌みたいに使えるものあるかもしれないしね。



~・~・~・~・~・~・~・~



(退屈だにゃぁ……)


 部屋の探索して分かったことは、この小屋からは出られない事、食べ物はないが水はある事。あとはいくつかの物を見つけたことか。竈には取っ手の無い鍋と羽釜。竈と一体化した台の上にはまな板と包丁が数本。届かない奥の方に置いてある。水瓶付近には数段の踏み台と柄杓。これで一応水瓶を覗いたり水を飲んだりできる。あと、虫が湧いている様子はなかったし、今のところお腹を壊した感覚はない。まぁ、壊したのならそのときはそのときだ。で、水瓶の横にある出入り口は嵌め殺しというのだろうか、透明な壁があって出られなかった。便宜上、今後も出入り口と呼ぶが。最後に本棚の中身だが、お椀が二つと平たいお皿、お箸が一揃えがあって、その上に読めない本が一冊。何か書かれているのはわかるのだが、読めないのであれば仕方がない。飾り台は何の変哲もない台だった。

 これだけ調べるのにそんなにかからず、「何か」を床に置いた座布団に載せたり、ベッドに上りなおして布団を引き上げたり、ゴロゴロしたり、それから読めない本のページをめくったり、いろいろして気が付けば壁の隙間や出入り口から射す光が茜色になっていた。その間「何か」は黙ったままである。ときおり、あぁでもないとかうなり声とか上げていたが気にするほどでもなかった。とはいえ、やることがない。ゴロッと壁の方を向いて目を閉じ。


『あはは、えっと……そういうのないかな。たぶん』


ふいに明るくなったと思ったら「何か」が起動したようだ。へぇ、無いのか。ふぅん。そうか。こんなに時間費やして。無いか。枕元に置いてある小槌を持ってベッドを降り「何か」の前に座る。そのまま小槌を両手で頭上まで持ち上げ。


『えっと、あの、ちょ!待っ!<ゴゥン>てぅい!いやっちょっと!待って待って!落ち着いて!ね!僕が分かることは何でも話すから!ね!<ガゥン>ひやふぃ!へっ変なとこに入った!!ほらほらあれだ!僕が壊れたら君もお陀仏だよ!ほらね!冷静に!冷静になってね!そんな物騒な物下ろして!お願いだから!』


 もう一度振り上げようとし動きを止める。「何か」が言ったことももっともだ。この世界が元の世界とどれだけ違うかなど分からないし、このままポンと放り出されても生きていけないのはさっきも考えていたことだ。それよりまずここから出られないて事もあるのだ。まだもやもやっとするが仕方ない。てか、今更だけどマスターという者になる以外の選択肢ないじゃないか。


「…はぁ。じゃ、分かった。マスターでもなんでもなってあげるから、これからどうすればいいの?」


『ただ僕を抱えて寝るだけだよ!それだけで明日には君もダンジョンマスターだ!いや、ホントホント。それにそろそろお眠の時間だしね!ついでだよ。つ・い・で。あ、いや、一緒に寝たいとか思ってないから!信じてね?ね?』


 胡散臭い話だが出入り口の方を見る。もう外は真っ暗だ。そして「何か」を見下ろす。目を焼く感覚はないが、その明るさで部屋の中どこに何があるかぐらいには見える。パソコンの液晶画面ぐらいには明るい。この光源を抱えて寝るか。まだ眠くないが、まぁ、仕方ない。小槌を枕元に戻し、「何か」をベッドの上に放り投げ、踏み台を使いベッドによじ登る。そして布団に「何か」を押し込む。うむ。月が出ているのかそこに何かあるぐらいには見える程度だ。これなら寝れるか。「何か」をもう少し押し込んで布団に潜り込み横になり……。



~・~・~・~・~・~・~・~



―――――――

―一部初期化および最適化終了

―**より【*****】への接続許可申請

―***より承諾

―【*****】へ常時接続開始



『【***********】ダウンロード開始します』


―【***********】フォルダ作成


―――

―――――

―――――――


―【***********】ダウンロード完了


『【***********】ダウンロード完了しました。続けて【***********】インストール開始します』


―【***********】解凍開始

―――

―――――


―【ダンジョン制作プロジェクト】フォルダ作成

―――

―――――



~・~・~・~・~・~・~・~



―【ダンジョン制作プロジェクト】起動

―【言語相互理解プログラム】起動

―【***********】インストール完了


『【***********】インストール完了しました。覚醒シーケンスに移行します』



~・~・~・~・~・~・~・~



 目が覚めるとさわやかな光が目に飛び込んでくる。さわやかな朝だ。まったく寝た気になれないが、まぁ、さわやか朝だ。見たくもないテレビを見ていた気がするし、聞きたくもない解説を聞かされていた気分だが。ベッドの上でボーっとしていても仕方がない。布団を勢いよくめくりベッドの上に出入り口の方を向いて仁王立ちし……。


「ふざけんな!私はパソコンか何かか!!!」


 足元に転がってきた「何か」をベッド下に蹴り落したのは仕方がないだろう。



【*****】:この世界のアカシックレコード

【***********】:この世界の魂に元から刻まれているプログラム


今後出てくることはたぶんないです。

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