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イネアさんの異世界冒険記  作者: 秋月イネア
2、テッドの章
9/9

6 いろいろあって閉所戦闘訓練

 朝起きた。そう朝起きた。


 確か夕方寝たはずだった。随分と長く寝たようだ。

 つまり事件に巻き込まれてえーと3日目の朝?かな?

 

「おはよう、まずは体を洗おうか。」

 そだね。きっと臭いし、僕もなんかやな感覚だ。


 水浴びじゃないが体を洗える所まで移動し、井戸水で体を洗う。

 服もその辺に干す。


 朝食を宿で食べて荷物を整える。

「という訳で、正直に言って対応してもらうのよ。」

「え、僕が?」

「リーダーさん頑張ってね?」


 まあ血路―オークとゴブリンの血だが―を拓いたのはイネアちゃんだし、いいだろう。

 きっとそこからは僕の仕事だと言うことだ。


「頑張るか…」

 軽く打ち合わせをした後、領主の館へ向かう。


 領主そのものに会う必要はない。

 要するに濡れ衣を着せられてジーンの町で手配が回ってる。そして町ぐるみで犯罪を犯している可能性を指摘すればいい。

 

 そしてその後の僕らの処遇については、まあ相談って所か。


 そうして門番の居る所まで行く。どうして門番はだいたい二人組なんだろうな。

 まあそんな益体もない事を考えていると、誰何すいかされた。

「ここは領主の館だが、何用か?」


 一見ハンターであろうとも、無下には追い返さない所が好感触だ。


「えっとですね、実は町ぐるみの犯罪に遭いまして、其処からは逃げれたのですが、それのご相談があって来ました。」

「ふむ…」

 門番さんもいきなりコレじゃ判断付きにくいだろうな。


「簡単にどんな犯罪を?」

「簡単に言いますと、街に入る時いきなり拘束して来て、どうも売り飛ばそうとしてたようです。」


「それは…ひどいな。」

「それで、どうしましょう。」


「暫く待て。判断できる者を呼んでくる。」

「ありがとうございます。」


 今のところ感触はいい。

 悪くなったら直ぐに逃げれるようにしないとな。


 後ろの黒ローブは不気味なくらい静かだしな!

 ちらっと見たら、立ちながら寝てた。


 ぉぃい!!! 

 なんて、器用な。


 もしかして、面倒な所を全部押し付けられたか?

 いや言うまい。森のなかでは足手まといだったんだ。

 そしたら、こちらの折衝は僕の仕事だという事だ。

 

 そうして待っていると、もう一人の門番と会話する。

 

 何処から来たのか、何が目的かーなどである。

 雑談ではあるが、まぁこれから根掘り葉掘り聞かれる前段階であると思っておこう。


 そうしていると、執事風の男性。年寄りな方と若い方の二人が門番と一緒に来た。

 

 側近とか部下とかかな。そして世代交代を考えて若いのを育てているとかだろうか。

「お話をお伺いしましょう。中へどうぞ」

 ほっ、良かった。

 少なくとも、参考にしますって云われて追い返されることはなかった。

 

 軽く会釈すると一緒に着いて行く。

 あ、そういえば寝てたローブはどうしてるかな?そう思って振り返ると普通に起きていた。

 なんだかなー


 屋敷の中に入ると大きなロビー。色々調度品があって、どれもこれも壊れたらヤバそうな値段がしそうだ。

 そこから右の通路に行き、個室に入る。

 簡単なソファーがあるので、割りと身分の低いもの向けの応接室なのだろう。

 たぶん。


 いや、簡素でそう見えるだけで、もしかしたら高いのかも。

 うーん怖くて座れない。


「どうぞお座りください。」

 どうにも許可を得るために待っていたと思われたらしい。


 執事風の男性。その老人の方から聞いて来た。

「それで、町ぐるみの犯行があったとか。」

「はい」


 そうして、僕は語り出す。回りくどくなるが最初から話すか。どうせ門番とも話した内容も含まれているのだ。


「まず僕らはチノの町で活動していた、駆け出しのハンターです。」

「ふむ。」

 若いほうが何やらメモを取る。


「この迷宮都市の迷宮で稼ごうかと移動していた、その道中でですね。

 チノからこちらへ向かう道中、ジーンの町とその前に村がありまして。」


 カリカリとメモを取る音がする。


「その村で意気投合?したレンジャーの人と此処へ向かう事にしたんです。

 

 その野営の時に一服盛られまして、こちらの魔法使いの子は偶然そのスープを飲まなかったので寝なかった訳ですが、

 そのレンジャーの子と他男三人に回収されて、奴隷として売られる所だったわけです。」


 睡眠薬が効かなかったではなく、飲まなかった事にした。

 効かなかったっていう説明は面倒だしね。


「そして、寝てないこちらの魔法使いの子が、奇襲でそいつらを打ちのめして、捕縛したわけです。


 それで、そいつらを連れて町まで言って、衛兵に突き出しますとですね、

 捕まっていたソイツらが、僕らがその男たちを襲った事にして捕まえようとしたんです。


 追加の衛兵は最初から僕らを包囲してましたし、男たちの名前を衛兵が知っていた事から、グルだったと判断しました。


 それから即座に逃げ出してなんとかここまで来て、ご相談に来たわけです。」



「ふむ…聞く感じでは確かに町ぐるみのような気がするが、単純に衛兵とその男たちがグルなだけという話と、

 本当は君たちが盗みを働いたのに、あべこべに町人達を捕らえて証拠隠滅を図る。という見方もできるわけだが。」


「え!?」

 なんでそんな見方ができるのだろう。え?どういうこと?


「いや、あくまで可能性の話だよ。まあその反応を見るに、犯罪を犯していたという訳ではなさそうだが。」

「は、はぁ…」


 いきなり、犯罪者にされそうになったと思って焦った。またかと思ったよ。

「とは言え、君たちが証拠を持っていない事も事実。」


 証拠、そうか証拠は確かに無い。

 うーん確かに弱いなぁ。証言だけだと。


「しかし、以前から人身売買組織がある事は認識していたから、その尻尾というかその貴重な情報源である事も間違いない。」


 どうにも、以前から気にしていた事らしい。

 それならそれで一気に解決してもらいたいものである。


「もし、君らの言うことが正しいのであれば、まず君たちの手配がいずれこちらまで回ってくるだろう。

 必死に此処まで来れたのだから一日か二日かの猶予はあるだろうし…」


 まあ突っ切ったとか言わないほうが良いので、猶予は結構あるんですけどね。多分。


「そういう訳で、牢屋に入れとは言わないが、解決するまでは町に居ないほうが良い。

 そうだな、窮屈な思いをするかもしれないが、この屋敷に滞在して欲しい。

 どうだろう?」


 ここは、嫌とは言えないか。

 しかし解決とはなんだろうか。どうするかは兎も角、屋敷に滞在という事は、あまり長い間拘束するつもりはないだろう。食費とかかかるからね。


 僕は静かに頷いた。

 

「まずはチノのハンターギルドに問い合わせだな。ギルドカードを見せてくれ。」

 僕とイネアちゃんはソレを差し出した。


「7級と10級か。なるほどなるほど。」

 何がなるほどなんだろうか。まあいいや。


「あの、屋敷から出なければいいんですよね?」

「うん?何かしたいことでもあるのかな?」


 なんでかイネアちゃんが会話に割り込んでくる。


「いえ、何もしないでお屋敷に軟き…居続けるのは流石に暇ですので、お庭か何処かで戦闘訓練をしたいんですよ。迷宮潜りたいですし。」

「ふむ、なるほど。確かに暇つぶしには良いだろうな。」


 いま軟禁って言おうとしなかった?いやまあ、軟禁なんだろうけどさ。

 しかも訓練か。うーん日常だな!

 体が鈍るのは良くないよね!


「宜しい、では何かと手配しておこう。もしかすると一緒に移動してもらう可能性もあるので、その時はその時でお願いするよ。」

「はい。」


 こうして、滞在が決まった。

 メイドさんに連れられて一人一部屋な客間に通される。

 ご飯は小広間とか云われてる所だそうだ。


 なんか…客扱いがすごいな。

 すごい待遇が良いような。


 今は朝だし、荷物を宿屋から回収すると再び屋敷に。

 もちろん宿屋から回収するときは監視役の人が付いてきてた。


 それで、訓練を始めようと庭に…いや訓練場に行くと数名の兵士が連携の訓練をしている。


「へぇ、良かったじゃない。訓練相手が居るわよ。」

 まあ、そうね、この撲殺女じゃ相手にならないしね。僕が。

 とは言え、訓練は受けてくれないだろうな。


「さて、ショートソードは槍程じゃないけど訓練してたと思うけど、今度からはこちらを中心にやります。」

「ああ、迷宮内だとショートソードが良いって話だったからね。」


「そう、そしてこの軽めの盾と併用すると、平時は槍も使えるし、ショートソードも使えるようになるかな。」

「盾かぁ」


 まあ両手に剣を持っても扱いづらいしな。


「後は閉所での連携の確認かな。」

「連携か、そうだね。」


「まーまずは基礎訓練。あっちの兵士さん達に使っていいか聞きに行きなさい。」

「イネアちゃんはどうするの?」

「魔法使いが剣のお稽古ですか?」


 鼻で笑われた。あーそうだねよ、一般的にはそうだよね。

「まあ、私は準備でもしてます。」

「了解。」


 準備ってなんだろう。まあ…何時もの如く理不尽で大変な目に遭うんだろう。何時ものことだ。


 とりあえず返事をした手前、ショートソードと盾を装備して練習場へ行く。

「すいません、僕も訓練したいんですが、僕も使わせて貰っても良いですか?」


「ん?ハンターの子かな?大丈夫だろうか。」

「何か聞いてるか?」

「いや何も。」


 なお、訓練と言ってもイネアちゃんがやっているような訓練はまるで無い。

 1000の訓練より1の実戦だからだ。

 人は経験値を稼がねば強くなれない。


 では何故訓練場があるかと言えば、武器の取り扱いについておさらいする事と、連携の確認だ。

 連携はスキルが無いのでこちらは各々の判断となる。

 よって、連携については訓練する必要がある。らしい。


 しかし、統率のスキル持ちが率いるとそれはとてつもない効果を発揮するようで、連携の効果が倍増する。

 スキル外のものに効果がある統率はすごいなーと思う。


 パーティーリーダーはだいたい集団行動スキルを覚えるが統率は稀だ。

 統率のスキル持ちは将軍というか、部隊長あたりに抜擢されるエリートコースだ。お給料も兵士とは比べ物にならないらしい。羨ましい。


 つまり何がいいたいかというと。

 『兵士たちと連携訓練するのか?』

 と言うこと。


「あ、いえ、僕は剣振ったり個別で鍛錬するだけですので。許可は館の方から頂いてます。」

「ふーん、なんか面倒な事をするんだね。」


 兵士たちは口々にそんな事を言う。

 僕が奇特な事をしている自覚はある。あるが、あの悪魔イネアちゃんには逆らえないのだ。

 でも、無駄とは最近思えない。


 細かい取り回しが容易にできるようになったし、槍のレベルも比較的上がりやすい気がするのだ。


「端っこでやってますので。」

 

 ペコペコと兵士たちにお辞儀すると、準備運動から始める。

 この準備運動は癖になりつつあるが、イネアちゃんが言うには、体の筋を傷めないようにするために必要な事だと言っていた。

 確かに動きやすくはなるので、納得はしている。


 準備運動が終わると走り込みだ。

 レベルアップしなければ体力や持久力は増えないと思いつつ、走りこみをしている。

 でも確かに、前より長い距離を走り込めるようになった。

 レベルアップも確かに一因だとは思うが、やはり持久力が増えた気がする。

 まあ気がする程度の話なんだろうけど強制されてるし仕方ない。


 次に素振り。

 小剣ショートソードは余り訓練していないが、中心に据えると言うからには仕方ない。

 1000回を1セットとして各10セットづつ行う。斬る、払う、突くは剣でも基本だ。

 

 終わる頃には槍が欲しくなる。

 やはり槍もやらないとなんかムズムズするな。


 そう思っていると、側に槍がたてかけてあるのに気がついた。

 持ってきてくれたのか、助かるな。


 そう思い、更に槍を1000回5セットづつやる。

 

 


 ふう、だいたいお昼までに終わったな。

 基礎訓練も5時間の枠に収まってきたか。


「お昼ごはんを持ってきたわよ。」

 丁度汗を拭いている所に、イネアちゃんがご飯を持ってきてくれた。

 もぐもぐ。パンにパンにパンか。まあいいや。


 後ろに見える柵のようなものはなんだろうか。

 あれで訓練するのかな。


「あー君。ちょっといいかね。」

 なんか朝会った執事風の若い方だ。


「なんでしょうか。」

「君は何時もあのような練習を?」


「まあ、時間的に暇ならあんな感じです。」

「君はレベルが上がらなければ、威力やスキルが上がらない事は知らないのか?」


 あー、そうですね。

 町でもそれ結構言われてたけど、結局変な目で見られるけど止められなかった。というか止めさせてくれなかった。


「知っていますよ?」

「では何故、あんな訓練を?」


「ん~、最初は僕もそんな感じの疑問を持っていましたよ。」

「ふむ、何かあるという事か。」


「何かっていう確かなものは無いんですけど、そうですね。

 同じスキルレベル同士でも、こう幅があると思うんですよ。

 これをやっていると、同じスキルレベル同士でも勝てるようになる…んじゃないかなと。多分。」

「ふむ、そこは昔から言われていた事だな。まあ細かくはそこに敏捷による器用さ補正が入るらしいが。」


 まあ敏捷が違うと同じレベルでも若干違うらしい。

「まぁ、本人が納得しているなら良いか。」


 それで興味を失ったようで、若執事は去っていった。



 食事も終わり、迷宮用の練習に入る。

 左右を柵に囲まれた閉所。つまり、柵は迷宮の壁だ。


「左右を意識して振るのは小さくしかできない。回避も前身か後退ね。暫くはここで素振りしてもらうけど、まずは連携。

 どんな連携が良いと思う?」


 最近は意地悪な感じだけど考えさせるように言ってくる。

「えーと。どうすればいいんだろう。」


 暫く悩んだが連携などした事が無い。多分イネアちゃんも無いはずだ。一人で突っ込んでいけばいいだけだからね!

 

「うん。私も思いつかないけど、魔法の邪魔になるね。」

「後ろで回復しかできないのは不味いね。」


「魔法には、詠唱があるらしいんだ。だから準備できたら声をかけるから、そっちが避ける時に合図してくれたら、撃てる…と、思う。」

「詠唱してたっけ?」

「…」

「…」


「それはともかく、こちらで準備ができたら『セット』とか言うわね。」

「『セット』ね。じゃあ僕は『ショット』って言えば良いかな。」


「ふうん。まあ弓でも使えるし良いかな。試してみましょう。」


 そう言って隊列通りに並ぶ。

 僕は剣を一度振り、二度振り、素振りをする。

「セット!」


 準備できたか。

 ならばもう二度振って。

「ショット!」


 言ってからしゃがむ。

 僕の上を何かが通り抜けた。

 火ではない。石か何かだろう。投擲したのかな?

 

【火炎】(フレイム)ではないのか。」

「当たると死ぬのに、練習でできるかっ。」

 あーそういえばそうですね。

 まあ確かに後ろからそんな強力な魔法が当たったらヤバイ。


 それから暫く連携の練習をした。

 不具合がありそうなら今のうちに相談し、左右への対応とかも話した。


 それから閉所での素振りをして本日は終わる。

 基本的に、日が昇ってから落ちるまでがワンセットなのだ。


 


 そうだ、道中敵を倒してたし、レベルアップしてないだろうか。

 久しぶりに確認してみよう。


職業:戦士Lv7

体力:12

敏捷:11

知力:8

生命力:12

魔力:0

特性:痛覚耐久Lv1

技能:槍Lv5

   小剣Lv1

   羊飼いLv5

   鉈Lv2



 お、技能のレベルが上がってる。

 この戦闘技能は、敏捷補正があるらしいのだが詳しい補正方法は分からない。

 槍のLv5+敏捷×0.6くらいだと聞いた事がある。モノによっては×0.4とかもあるらしい。

 それで結局槍の値は…えーと…

 えーと。

 

 

 うん。イネアちゃんに計算してもらった。

 槍Lv5の技能値は11.6くらい。11相当で見るといい。

 技能値というのが補正後の値で、この値が高ければ高いほど有利になる。

 

 この時9~11は普通に扱えるレベル。7~9が初心者、6以下が才能なしみたいな感じかな。

 

 12から熟練になって、16から達人と呼ばれるらしい。

 槍レベルをあと5あげれば達人と呼ばれる感じだね。頑張ろう。


 まあ今までと違って上がりにくくなるらしいけど。


 そういう訳で、僕の仲間を集めるなら10~12くらいのスキルレベルで集めたほうが良いだろうなぁ。


 とにかく、事件を終息させるまで我慢我慢だ。


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