18.追われる少女
暗い夜道の中、数少ない電灯の近くに一人のシルエットが照らされていく。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…、もう…ダメ…、もう走れない…」
淡いピンク色の少々派手な魔法少女のコスプレをした女の子が、コンクリートの壁に手を付きながら道を歩いていた。
髪の色もピンク色に染めてあり、まさにコスプレという風貌であるが、彼女はれっきとした魔法少女であった。
マホリアの輝石を狙ってくる人達…、確か【黒の軍団】って言ってたっけ。
黒の軍団の人達はだいたい優しいので、学校が終わった時間しか襲って来ず、しかも夕食前には戦いを切り上げてくれる、かなり優しい集団なのだけど、今日はその後に別のものが襲ってきた。
最近ニュースにもよく報道される【怪人】である。
今日は黒の軍団と戦ったお陰で魔力残量も少なく、どうしても怪人と戦うにはジリ貧であった。
何とか全力を尽くして逃げていたのだが…。
「鬼ごっこは終わりか?魔法少女…」
追いつかれてしまった。
全身が刺々しい灰色の化け物が、電灯が付いてない一つ向こうの電柱の上にしゃがんで立っていた。
想像以上に力が強く、魔力の少ない私では歯が立たない程強かった。
いや、魔力があっても勝てるか分からないほど強い。
黒の軍団の人達が作り出す魔法の兵士【悪魔の兵士】が束になったとしても、この怪人より遥かにマシな方なのだ。
何度か戦ったことのある猫耳人間くらい強い。
あれ?犬耳だっけ?
…忘れたが、とにかくケモ耳のイケメンさんくらい強いのは確かだ。
ただスピードはケモ耳イケメンさんよりマシなので、何とか逃げ切れた、と思ったんだけどなぁ。
「早い…ですね…はぁ、はぁ…」
「体力消耗してるガキに遅れは取らねぇよ」
「出来れば今日は遠慮して欲しいのですが…、また明日、という事はできませんか?お母さんが料理を作って、お家で待ってるので…」
黒の軍団の人達が相手ならば、こう言えばだいたい帰ってくれるのだが…。
「残念だが、今日の料理も、これからの料理もお預けだな。来世にでも期待しろ」
怪人は電柱から飛び降り、そう言いながらゆっくり近づいてくる。
怪人は背中から生えた長めの骨のような棘を両手で2本抜き、まるで剣を構えるかのように構える。
次の瞬間には、怪人は魔法少女へと肉迫していた。
咄嗟に持っていた杖でガードする魔法少女だが、怪人の余力が想像以上にでかい。
ミシリミシリと杖が悲鳴をあげ、ついにはバキリと折れてしまい、骨のような棘棒が顔面を強打する。
その勢いのまま吹き飛んでコンクリートの壁へ激突し、壁が崩れた。
きっと私が魔法少女じゃなければ、今の攻撃で死んでいただろう一撃。
鼻に違和感。
これは鼻血が出たかなと鼻を手の甲で擦ると、そこには案の定血がこびり付いていた。
黒の軍団の優しい襲撃者達なら、割と軽い怪我でも心配してくれるし、体調が悪い時などに本気でお願いしたら、大体休戦してくれるのだが、目の前の怪人は普通の化け物だ、休戦なんてしないだろう。
むしろ【黒の軍団】という組織が甘過ぎるのだが、それを置いておいても、この怪人が強いというのもあるだろう。
どうしよう、このままじゃ本当に死んじゃう…。
「それじゃあ死ね」
怪人は持っていた長い棘を、槍投げの様に構え、凄まじい速度で投げつけてきた。




