1.私は王の首が欲しい
私はとても恵まれた家に生まれた。
コランダム王国の王弟の3番目の子として生まれた私は、望めばほとんどの物が手に入った。父は兄弟の誰よりも私を愛してくれている。アレが欲しいコレが欲しい、モノという観点から言えば私は満たされていた。
上には兄と姉、下には弟と妹。5人兄弟の真ん中が私。
賑やかな声が庭園の方角から聞こえる。皆楽しそうに家族団らんのひと時を過ごしているのだろう。
私もあの輪の中で笑うことが出来たのなら――。
そんなことが無理なことくらいは理解している。理解できないような幼い子供のままではいられなかった。
父は私を愛してくれるし、兄妹も多少ぎすぎすはするけれど嫌われてはいない。どちらかと言えば、憐み――そんな眼差しで私を見てくる。
とにかく私は母に嫌われているのだ。だから私はあの輪の中には行けない。
実の母だ、生母だ。なのに私が少しでも視界に入ると、彼女はヒステリックに泣きわめき、暴れ、手が付けられなくなる。
昔はどうしても母に構って欲しくて、愛して欲しくて……。今ではそんな感情は無くなってしまった。
私は母にとって存在しないもの――皆が幸せでいるためには、私は存在をかき消して、父に与えられたこの豪華な離れで過ごすのだ。
何故? 何故私のことだけを母は嫌うのか?
何年も前に侍女たちが噂しているのを聞いてしまった。
私は――父の子ではなく、王が母に乱暴して出来てしまった子であると。
嘘? 真実? そんなものは確かめようがない。
事実たるのは、私が母に嫌われているということだけ。ただそれだけ。
私が家族の輪に入れない理由、母に愛されない理由、その可能性である王。
だから――だから私はいつの日か、王の首が欲しいと思うのだ。
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