表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
fall〜coda〜autumn  作者: 井能枝傘葉
44/65

Fall Holiday epilogue

秋休み最終日。俺はある人に電話で呼ばれ、学校の屋上に来た。

というか、屋上って入って良かったけ? とか思いながら、屋上への扉を開けると、

「心配ない。どうせ秋休み、誰も来ない」

「おぉ!?」

開けてすぐ出た横に、玄平が立っていた。

「驚きすぎ」

「いや普通こうなるだろ」

誰もそこに立ってるなんて思わない。

「そう」

玄平は歩いて屋上の真ん中へ向かった。俺も後を追い、扉を閉める。

「そういえば、ここの鍵はどうしたんだ?」

いつもは閉まっている筈。使う人のいない秋休みとなればなおさらそうだ。

「開けてもらった。古い鍵だから簡単だったと言っていた」

「そ、そうか」

それ以上は聞かないことにした。

「で、俺を電話で呼んだ理由はなんだ?」

「昨日、生徒指導室に来てなかったみたいだけど」

あぁ、進路を決めたかどうかってことだな。

「まぁおかげで、話がすっきりと終わって。過去話が多めになったみたい」

「は?」

「こっちの話。それで、緑葉の進路は?」

「あぁ、それはな…」

俺は色んな資料を読みまくった結果。ある一つの大学に目が行き、そこを詳しく調べた結果。そこにすることにした。先生にそれを伝えたので、最終日にはいなかったんだ。

俺がその大学の名前を言うと、

「……ワタシと同じ」

「え?」

玄平もその大学を選んだのか?

「でもここ、玄平が前に言っていたような医学とかは関係ないぞ?」

「そういうのは、今までも独学で学べたからいい。他に必要なことを、ここで学べると思って選んだ」

ここでしか学べないことがあるって、そういう学校だったか?

「……なるほど、そういう流れになるのか」

「何か言ったか?」

小声で呟いていて、聞き取れなかった。

「別に。という訳だから……彰」

あれ? 玄平、今俺を名前で……

「もし、同じ大学に行けたら、よろしく」

玄平はすっと手を伸ばした。

「あ、あぁ、よろしく」

伸ばされた手を取って、なぜか握手を交わした。

「さて、帰ろう」

「え? まさかそれだけの為にここへ呼んだのか?」

俺の進路を訊く為のだけに?

「そう」

本当にそれだけらしく。玄平はスタスタと屋上の扉へと向かって歩いていった。

「……少なくとも、今の彰には」

また何か呟いた気がしたが、聞き取ることは出来たかった。







同じ大学を目指していると分かった俺と玄平が並んで学校から帰っていた。玄平は寮じゃないが、方向は同じなので、色々と話しながら歩いていると、

「……妙な感じだな」

「?」

首を傾げる玄平。こうして一緒に、しかも秋休みの最終日に歩いているというのが考えられない。

それなのに、その玄平が声水を使わずに、自分の声で話しているのだから、もはやそれは、

「確かに、妙な感じだ」

「だろ?」


「けど、それも、もう終わる」


「え?」

終わる? 寮はまだ先のはずだが……

「……ん?」

何か、気配を感じた。

それを探そうとおもったが、正面にすぐに見つかった。

それは一人の女の子。全身白色の服で、明るい茶色の髪を一本結びにしている。

「あ―――」

そうだ、思い出した。

秋休みの最終日。並木道で雀耶さんと、

秋休みの最終日。河川敷で紀虎と、

そして今も、秋休みの最終日。

俺は何回も秋休みの最終日を、色んな人と迎え、そして、この子に会っていた。

「……」

何の表情も伺えない目のまま。あの時と同じように女の子は手話を開始した。

すでにコレも三回目。前の記憶も合わせて、手の動きは理解できる。

そして、玄平の家で俺は手話の本を読まされた。

全てを覚えているわけではないが、女の子が使う手話の解読は出来た。


解読すると、こうなる―――



『あなた』


『鍵』


『全て』


『集める』


『まで』


『今』


『秋』


『続ける』


足りない言葉を加えて、女の子は伝えたいだろうことを、言葉で伝えた。


「あなたが鍵を全部集めるまで今の秋を続ける」


「……」

女の子はこくりと頷いた。どうやら当たりらしい。

ということは、俺は、その鍵というのを集める必要があるらしい。

「彰、これで7割方理解したと思う」

隣にいた玄平が女の子を見ながら俺に言った。

「玄平も、雀耶さんや紀虎も、これを知ってるのか?」

「そう、始めた人と、初めた人の下、ワタシ達はこの秋を開始し始めた。それが、終わるまで」

「終わるまでって……俺が鍵を全部集めるまで、だよな?」

「その通り。そして、これがその一つ」

玄平に渡されたのは、赤く紅葉したモミジの葉。

「正確には、カエデの葉。モミジとは紅葉(もみじ)と書き、紅葉(こうよう)黄葉(こうよう)した葉の全てをそう呼ぶ。だから実は楓も銀杏も、紅葉(もみじ)の一種」

「へ、へぇ……」

何だその豆知識。

「ま、これもすぐに忘れてしまう」

玄平は俺を真っ直ぐに見た。

「7割方終わった。ということはまだ、彰を待つ人がいるということ。それを終わらせればこの秋が終わる。それからまた、選択したいなら、ワタシを選択すればいい。ほんの少し、期待はしておく」

ほんの少し、か。まぁ玄平らしい言い方だな。

「一つ教えてくれないか? 鍵を持ってるのは、後何人いるんだ」

「その質問は、次の人が答えてくれる。その人はすぐに見つかるだろうから、またこの時に同じ質問をすればいい。それじゃ、彰。また次の秋で」

その瞬間、パチン、という音が響いた。

それが手話をしていた女の子が指を鳴らした音で、


その音が止むと、俺の視界はまっしろになって……




だんだんと……







……他に、鍵を持っていそうな人は―――

ついに、主人公もこの話の根本に触れてきました。

というか、本当に玄平のチート気味は恐ろしいです……


さて、文中の通りこれで7割方の終了です。

残り3割方。いったいどうなるのか、読んでいる方がいましたら、お待ちのほどを。


それでは、

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ