Fall Holiday Ⅰ
始まったのは、選択肢の一つだった『 』
「明日から秋休みだが、部活動は普通にあるから間違えないようにな」
帰りのホームルーム、谷門先生の挨拶が終われば、秋休みだ。
クラス中皆、まだか早くしてくれと声に出さないが、思っている。
「よし、じゃあ終わりだ。秋休みにあまりハメを外すんじゃないぞ。日直、号令」
日直が速やかに全員を立たせ、令をする。
その瞬間、秋休みになったクラスメイト達が一斉に騒ぎ出した。
待ちに待った休日に予定を立てる話を者、部活へと向かう者、何か予定があるのだろう教室を出ていく者とに別れている中、俺は、
「はぁー……」
ため息をついていた。
「どうかしたのか? 彰」
「陽斗か……実はな、こんなのが届いてよ」
昨日管理人の人に渡された一枚のプリントを陽斗へと見せた。
「あーそれ、オレももらったぞ」
「え? マジか」
「マジマジ。つか、他にも何人かもらってる奴いるぞ」
そうだったのかー。なら落ち込む必要はないな。
「じゃさっさと行って、さっさと終わらせちまおうぜ」
「それが出来れば理想だけどな。そんな簡単には終わらないと思うぞ」
だろうなー。特に俺とか、全く決めてない人は……
……まてよ。アイツはどうだ? 昨日電話してきた、アイツ。
断定していい訳じゃないが、確か前、決まっている風な話をした気がするんだが……?
まぁ、行けば分かるか。
陽斗と共にやって来たのは、職員室の隣に配置された、出来ることなら、入ることなく卒業したかったと思う生徒が何人もいるだろう部屋。
その名を、生徒指導室という。
「失礼しまーす」
実は初めて入る生徒指導室。少し興味を持って入ってみると、中は普通の教室とあまり差がなかった。
違うところといえば、廊下側の壁と後ろに何かの入ったファイルの収まった棚がずらりと並んでるところと、黒板の向こうに扉があることだ。
「あの先、なんだろうな」
「そこにいる常連に訊けばいいんじゃね?」
常連?
陽斗が指さした先、俺達より唯一先に部屋の中にいたのが。
「よっ、彰と陽斗も呼ばれてたのか」
確かに指導室の常連、黒石が座っていた。
黒石は色々と企んでは先生を困らせていた。なのでここに呼ばれたことも一回や二回ではないだろう。俺と陽斗は黒石の隣と一つ後ろの席に座った。
「それでよ黒石、あの扉の先、何があるか知ってるか?」
「あの扉? 向こうは倉庫で、そこに収まらなかった資料とか入れてあるんだよ」
「へー、さすがに詳しいな」
「常連だからな」
そんなたわいのない話をしていると、何人もの生徒が、俺達と同じようにあのプリントをもらってきたのだろう三年生達が入ってきて、それぞれ好きな席に座っていく。
その中に、
「雀耶さん?」
「え……あ、緑葉くん」
雀耶さんの姿を見つけ、こちらへ呼ぶと俺の隣に座った。
「緑葉くん達も呼ばれていたんですね」
「そういう雀耶さんこそ」
「つうても変わった時期に転校してきたのもあるし、案外早く終わるんじゃないか?」
「そうだと嬉しいですね。色々と、やることもありますので……」
「?」
雀耶さんはなにやら思いつめたような表情になって呟いた。やることって、いったいなんなんだ?
その時、指導室の扉が開いた。
「静かにしなさい。始めますよ」
入ってきたのは、三年生の担当教員である大菊先生。谷門先生と共に体育教師をする、女の先生だ。
あれ? そういえばアイツの姿が見当たらないが……?
「これで全員?」
教卓についた大菊先生は室内を見回してそう訊く。中には20人程の三年生が集まっている。
その中に、アイツの姿は……
ガラリ
扉が開き、今まさに思っていた生徒が入ってきた。
「……」
「早く席につきなさい」
「……」
一言も発さず室内を見回した後、その生徒は何故か、黒石の後ろで俺の隣に座った。
いやまぁ、空いてたから別に良いんだが……
なんでわざわざそこの選んだんだ? 玄平?
秋休みが始まり、進むべき道が見えてきたという感じです。
しかし、これはあくまでも一つの道、まだまだ話は続きますので、どうかご拝読を。
それでは、