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fall〜coda〜autumn  作者: 井能枝傘葉
34/65

4th day patternⅤ

開始した、秋の物語。

若干変わった文章の書き方をしていますが、どうぞお楽しみください。

〜HR前〜


教室に入り、鞄を机の上に置いたところで、

「緑葉、先生が配当係探してたぜ」

とクラスメイトに言われて、職員室へと向かった。

そういえば、D組もう一人の配当係である玄平がいなかったけど、もう行ってるのか?

と思ったその時、

「やっぱジョウハイは面白ぇよな」

前から紀虎の声が聞こえた。誰かと話しているようだが、

『おー、あのやっぱりか! って感じが良いよな』

会話に応えた声もまた、紀虎の声だった。

……コレ、知らない人が聞いたらただの一人会話の寂しい奴に聞こえるが。知ってるから違うと分かった。前から会話をする2人がやって来る。

「よっす、2人共」

「ん? おぉ、彰、よっす」

先に気付いた紀虎が声をかけ、

『おぉ、彰、よっす』

続いて、紀虎の声に変わった玄平が声をかけてきた。2人共に手には紙の束を持っている。

「え、もしかして紀虎が手伝ってくれてるのか?」

「いや? アタシも配当係で、玄平とはそこで会っただけだぞ」

よく見れば2人が持っている資料は違う教科のものだ。

「B組のもう一人は?」

「分かんね、まだ学校来てねぇのかもな」

ふむ……改めて、2人の持つ物を見る。

紀虎の持つのはノート。多分クラス全員分で、普通に2人で運ぶ量だ。

一方玄平はプリント。量はあるがノートほどかさ張ってはいないし、ここまで1人でも良さそうだ。

けどそう考えたら紀虎の方も1人で運んでるしな。


紀虎を手伝うか、平気と思って自分のクラスを手伝うか……


  □紀虎を手伝う   △自分のクラスを手伝う




△…… まぁ、紀虎なら平気だろ。体力あるし。

「それじゃ、俺は自分のクラスを手伝うことにするよ」

「ことにってか、それが普通だけどな。んじゃ、また後でな」

荷物を持ったまま、紀虎は一人行ってしまった。





Select → △






半分持ち、玄平と共に教室へと向かう。

『別に向こう手伝ってきても良かったんだぜ?』

そう言ったのを聞いて、なんというか、妙な気持ちになった。

向こうが紀虎で、こっちも紀虎(の声に変えた玄平だけど)、

「妙な感覚にもなるさ……」

『ん? どした彰』

「いや……どっちも紀虎だったなって、少し混乱してた」

今さら思えば、さっき紀虎、よく自分の声と話してたな。

『んー……じゃあ、まぁ、あれだな』

あれだな?

『ちょいコレ持ってて』

玄平が持っていた半分のプリントを俺が持っている上に置くと、ポケットから何かを取り出して、

『んぐっ……』

その何か―――試験管に入っていた液体を一気に飲んだ。

いや、何で試験管なんてポケットに入ってるんだ? まぁ答えてくれるとは思わないので口にはしないけど。

『ふぅ……これでいいかな~?』

その声が、山吹のものに変わっていた。

「あ、あぁ……うん」

ひょっとして、わざわざ変えてくれたのか?

というか、声水は一度効果が切れるまで他の声には変えられないって、聞いた気がするんだが。

『これはちょっと特別製でね~。重ね掛け専用なんだよぉ』

そんな物をわざわざ使ってまで……

「えっと……ど、どうもな」

『ど~いたしまして~』

玄平が再び半分持ち、その後は無言のままで、教室へと向かった。







~休み時間~


授業が終わり、休み時間になったところで、こんな会話が聞こえた。

「なぁ、あのプリントやったか?」

「まぁね、でも昨日出して今日提出はヒドイよね」

プリント? そんなのあったか?

「よっす彰、お前プリント終わったか?」

陽斗が訪ねてきたが、全く知らないぞそんなの。

まさか……

「陽斗、そのプリントが出たのって、昨日の5限か?」

「そうだけど?」

俺は机の中に手を入れ、中を探ってみる。すると手に紙のような物が触れた感触があり、掴んで引き出してみる。

「……コレか?」

そこにはくしゃくしゃになった白紙のプリントがあった。

「どう見てもやってないな」

昨日の5限と言えば、寝ていた時だ。一番後ろの席だし、渡されてはいたんだな。

この授業は、まさに次の時間じゃないか。

「陽斗、写させてくれ」

「無理だな、なぜならオレもやってないからだ!」

「いばることじゃないよな?」

「彰を頼るつもりだったんだけどな。ここはお互いに誰かに写させてもらうしかないぜ」

「だな」

と言っても、誰にだ?


写させてくれそうで、頼みやすそうなのは……


  〇やはり竜華だ   △玄平はどうだ?




△…… 玄平とか、真面目にやってそうじゃないか?

悪い考えかもしれないが、あの喋りたがらない玄平に頼めば、断わるよりも無言で見せてくれる気がする。

よし、行ってみるか。

「よし、お互い頑張ろうぜ」

「だな、オレは……ナツ辺りに訊いてみるわ」

互いの健闘を祈り、俺達は行動を開始した。

目指すのは、玄平だ。





Select → △






玄平は自分の席に座っていた。

「玄平、ちょっといいか?」

「……」

声に気付いた玄平は、鞄の中に手を伸ばして水筒を取り出し、中の声水を一飲み。

それが毎回の事なので、クラスの皆はもう分かっているから俺も素直に待った。

『何か用か? 彰』

げ……よりにもよって竜華の声に変わりやがった。これじゃあ竜華に訊きに行ったのとあまり変わりがないぞ。

『どうした?』

……いやいや、確かに声は竜華だが、これは玄平だ。だから大丈夫……の筈。

「昨日の5限にプリントの宿題が出たよな?」

『あぁ、コレだな』

机の中からプリントが出された。よく見れば、全て書かれている。つまりやってあった。

「頼む。写させてくれ」

『……』

竜華なら怪訝な顔を浮かべるだろうが、玄平は全くの無表情を浮かべていた。

『……仕方ないな』

おぉ、竜華が言いそうな割り切り方、

『ただし全てはダメだ。途中からは自分で解け』

うわぁ、竜華の言いそうな台詞だ……けど、全部ではないが写させてはもらえるんだ。

「サンキューな、竜華(・・)

『……』

あ、しまった。間違った。

「わ、悪い間違えた。サンキューな、玄平」

『あぁ』

声が竜華で台詞回しも竜華だからつい間違えちまった。


でも、ちょっと意外だったな。

自分で声変えてるのに、呼び間違えれられたら、少し眉をひそめていたのは。

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