Autumn Holiday epilogue
「おーい、こっちこっち」
秋休みの最終日。俺は紀虎に呼ばれて、何故か河川敷に来ていた。
「やっぱり彰だけか。まぁこっちの懐的には助かるかな」
竜華達も呼んだらしいが、皆予定が合わず、俺だけになった。
「陽斗や山吹は部活。竜華は実家だし、雀耶さんも外せない用事があるって言ってたしな」
「んじゃーしゃあない、彰と2人で軽く盛り上がるか。ほら」
手渡されたのは、缶のコーラ。ここに来た時から紀虎が両手に持っていた内の片方だ。
受け取ってフタを開け、
「高校最後、狼への勝利を祝して―――」
カン!
コーラを飲み終え、缶を横に置いて河川敷の土手に腰を下ろした。
「ありがとな、彰」
「いきなり何だよ」
「いや、あん時狼に勝てたのは、彰や、竜華達のおかげだと思ってな」
「何言ってんだよ。勝てたのは狼の実力だろ?」
あんな雨の中でも練習してたんだ。
「その成果が出てたんだよ。俺は何もしてないぜ」
「……いんや、まぁ実際には関わってはいないけど、そうじゃなくて、彰達には助けられたんだ。だから、ありがとな」
「はぁ……」
関わってないのに助けられたって、どういう意味なんだ?
「けどまぁ、高校卒業したら竜華や灰中との勝負は出来なくなるんだな。灰中とは知らないけど、竜華との勝負は見てて楽しかったし、大学でまたライバルでも作るのか?」
「え?」
そう言うと、紀虎は目を丸くして首を傾げた。
「アタシ言ってなかったか。狼、アタシと同じ大学行くんだぜ。だから大学でも勝負は続くんだ」
そうだったのか、2人同じ大学行くんだな。ライバルだからそんなに仲良さそうなイメージはなかったのに、めちゃめちゃ仲良いじゃんか。
「そういう彰こそ、卒業した後はどうすんだ? 前話した時はまだ決めてないとか言ってたけど」
「あー……」
卒業した後……か。
「紀虎、お前が行く大学ってどんな所だ?」
「あ? 陸上が有名だけど、体育大学って訳じゃない割りと有名な大学だぜ」
そうか、なら……俺も平気かな。
「じゃあ、俺もそこ目指す」
「は……ま、マジ?」
「普通の大学だろ? なら勉強次第では入れるかもしれないし、それなら知り合いのいる方がいいからな」
「へー…………こりゃ、マジっぽいな」
後半は小声で聞き取れなかった。
「なんだ?」
「なんでもねぇよ……そっか、アタシと同じ大学をね…………へへ」
「?」
急に笑ったりして、どうしたんだ?
「しゃあねぇな! アタシが手伝ってやるよ。まずは大学の情報からだな」
それからしばらく、紀虎が推薦をもらい俺が受けようと思っている大学の花を聞いていた。
―――すると、
「……ん?」
何か、気配を感じた。
「でな、結構有名な人も出てたりして……彰?」
気配の正体を探して立ち上がり土手の下に降りた俺を紀虎が呼んだ時、
その正体を見つけた。
「……」
それは、一人の女の子。全身白色の服で、長い明るい茶髪を一本結びにしている。
「あ―――」
思い出した。この子、あの時の手話の子……
……あの時? あの時は確か、秋休みの最終日。
そう、今日と同じ日だ。
並木道で、雀耶さんと一緒に出会った。
その子が何故、河川敷にいるんだ。
いや違う。俺が何故、同じ日の筈なのに違う状態で会っているんだ?
「……」
何の表情もうかがえない目のまま、あの時と同じように女の子は手話を開始した。
あの時は急なことで分からなかったが、今日は何故か二回目だ。
目で冷静に、手の動きを追った。
『右手の人差し指で前をさす』
『右手で何かを持つようにして手首を二回ひねる』
『両手の指を軽く曲げて円を描く』
『両手を曲げて向かい合わせて左右から寄せる』
『右手の指先を左に向けて左手のひらまで動かしてくっつける』
『両手のひらを下に向けて並べて下げる』
『前から顔に両手を二回手前に動かす』
『両手の親指と人差し指をくっつけて輪を作り前に出す』
「……」
それで手の動きは終わった。
終わった……けど、今になって手話を知らない俺がそれを知ったところで通訳出来ない。
じゃあ何で、俺は今動きを見たんだ?
「彰」
紀虎に名前を呼ばれて、紀所は手話が分かるかもと期待して向くと、
「ほい、コレ、持っていけな」
紀虎に何かを投げ渡された。
それは、松笠だった。
改めて思い出す。あの時も、雀耶さんからイチョウの葉を貰った。コレもそれと同じなのか?
「紀虎……コレって……」
「彰。やっぱ選ばれると嬉しいもんだけど、まだ選択肢を全部見てねぇんだよな。残りも全部見た上で、出来れば、ここに戻って来てくれよ」
やっぱり、紀虎も雀耶さんと同じような事を言っている。
全部は見てないというのは、まだ選択肢があるって訳だが、
「その選択肢って、誰が持ってるんだ」
「すぐに分かるさ。彰の近くにいる、アイツ等だよ。じゃあな彰、また会おうぜ」
その瞬間、パチン、という音が響いた。
それは、手話をしていた女の子が指を鳴らした音で。
その音が止んだ時、俺の視界はまっしろになり、
だんだんと―――
感覚で言えば、ここで6分の3。つまりは2分の1で、約半分となりました。
思えばこの物語を書き始めたのが秋だったので……時の進みは早いものですね……
さて、これで、Autumun Holidayはエピローグを迎え、また、新たな始まりを迎えます。
まだまだ続きますので、よろしかったらご拝読を、もしくはここまでの感想を頂けたらと思います。
それでは、次はいつもより早く送れればと願いながら、




