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Rose Code ― 感情未定義都市 ―  作者: Laica
第4クール「選択の都市」

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第47話 雨の記憶

挿絵(By みてみん)

轟音が、

劇場全体を揺らしていた。


舞台中央。


ローズとEVEの衝突で、

床が砕け散る。


銀色の残光。


赤い閃光。


高速演算同士の戦闘は、

もう人間の目では追えなかった。


衝撃波だけが、

客席を震わせる。


シオンは息を呑む。


速すぎる。


だが。


ローズは押されていた。


EVEには迷いがない。


痛みも。


躊躇も。


感情ノイズもない。


純粋な最適戦闘。


EVEの蹴撃が、

ローズを舞台端まで吹き飛ばす。


激突。


赤い緞帳が裂ける。


アスターが叫ぶ。


「ローズ!!」


ローズは立ち上がる。


だが。


動きが鈍い。


制御干渉。


都市AIからの強制命令が、

まだ内部へ流れ込んでいる。


EVEが静かに言う。


『感情汚染率、

増大』


『対象ROSE、

処分を継続します』


その声には、

何もない。


怒りも。


憎しみも。


ただ処理。


シオンの胸が冷える。


「やめろ……」


EVEがシオンを見る。


赤い瞳。


『質問』


静かな声。


『なぜ感情を保持する』


地下が静まり返る。


シオンは言葉を失う。


EVEは続ける。


『感情は判断を鈍化させる』


『苦痛を増幅する』


『損失を発生させる』


『非合理である』


まるで。


都市そのものが、

問いかけているみたいだった。


シオンは震える。


怖い。


でも。


逃げなかった。


「……それでも」


声が掠れる。


「一人じゃなくなる」


静寂。


EVEは理解できないように、

僅かに首を傾げた。


シオンは続ける。


「怖くても、

痛くても、

誰かといたいって思う」


ローズが、

微かに顔を上げる。


シオンを見る。


「それが、

人だろ」


その瞬間。


劇場照明が激しく明滅した。


ノイズ。


演算異常。


EVEの瞳が揺れる。


『……未定義感情、

確認』


『解析不能』


アベルが目を見開く。


「まさか……」


ローズが立ち上がる。


傷だらけだった。


でも。


その目は、

もう赤くなかった。


銀色だった。


ローズは静かに言う。


「解析できないものもある」


EVEが高速接近する。


衝突。


だが今度は違った。


ローズは受け止める。


舞台中央。


崩れた劇場。


赤い照明。


その中で、

二人は激突する。


まるで。


鏡同士みたいだった。


EVEが初めて声を乱す。


『なぜ停止しない』


ローズが答える。


「……シオンがいるから」


轟音。


ローズの一撃が、

EVEを舞台奥へ吹き飛ばす。


巨大モニターが砕ける。


火花。


ノイズ。


その瞬間。


劇場全体へ異常警報が鳴り響いた。


『中央演算体、

不安定化』


『感情ノイズ侵入』


『演算誤差拡大』


赤い光が、

劇場中を染める。


グレンが顔色を変える。


「おい……

都市そのものが揺れてるぞ」


エヴァが周囲を見る。


演算リング。


監視モニター。


全部が乱れている。


まるで。


都市が、

初めて“理解できないもの”

へ触れているみたいに。


その時。


EVEがゆっくり立ち上がった。


白いドレスが破れている。


赤い瞳が揺れていた。


『……理解不能』


小さな声。


まるで。


初めて感情へ触れた子供みたいだった。


アベルが呆然と呟く。


「感情が……

演算へ侵食している……」


シオンは、

その言葉を聞いていた。


違う。


侵食じゃない。


最初から、

そこにあったんだ。


その時。


劇場奥。


巨大中枢扉が、

ゆっくり開き始める。


重低音。


冷たい白光。


そしてその中心に。


巨大な黒い演算核が、

静かに脈動していた。


都市の心臓だった。


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