第11話 いつもの日常へ
俺と石咲アンナは友人関係から恋人関係になった。
とはいっても今までの日常となんら変わることはない。
元々、雨洞亮介の部屋というたまり場に集まる仲良し四人組だったのだ。
「有島。そこにある漫画取って」
「どれだよ?」
「12巻」
「だから何の12巻だよ……」
そう言いながら、床に寝転ぶアンナにアオハル的な少年少女が表紙の12巻を渡す。
「わかってんじゃん」
にや~っとアンナが笑う。
雨洞亮介の部屋の中。
俺とアンナは床の上で漫画を読み、亮介と春はベッドの上に座ってピコピコとゲームをしている。
しばらくそろわなかった四人がようやくいつも通りになったという感じだ。
「……おい、お前ら彼氏彼女になったんだよな?」
だら~とした時間が流れている中、亮介がゲーム画面から目を離さずに唐突に口を開いた。
「ま、まぁ……そうだけど? おかげさまで」
一応亮介にはアンナとの関係性を悩んでいた時に励まされた。それにそもそもが亮介が春に告白しなければ、俺もきっかけがなくてアンナとの仲を進展しようとしなかったかもしれない。
そういう意味で言うと亮介には感謝しかない。今は素直にそれを伝えることはできないがいつかはちゃんと行動で示さなければならいと思う。
「なら今度ダブルデートするぞ。そういうのがどういうのかやってみたい」
「亮介。お前って意外と青春願望があんだな……」
「うるせぇよボケカス」
「顔真っ赤」
「へぇ、ダブルデートって何するつもりなの?」
横からアンナの声が割って入る。
「そりゃ遊園地行って、四人で一緒にジェットコースターに乗ってさ」
と、悦に入ったようなことを言う亮介に対してアンナは、
「そんなことより、釣りに行かない? 四人でさ」
と提案する。
「そんなんいつもと変わらんだろ。特別感がない。それにお前そんなに釣好きじゃないだろ」
亮介が眉を顰めるが、
「そんなことないよ。いつもの私たちみたいでそっちの方が楽しいよ」
と石咲は平然と笑う。
「そうかぁ? ……そうか」
そして亮介は折れたようにフッと息を吐いて肩を落とした。
「変わらんな。お前は」
「ま、そんなもんだよ」
と言いつつも、アンナは俺の手に自分の手を重ねて、亮介に見えないところでこっそりと指を絡めてきた。
その温かさをしばらく感じていたいと思った。




