ケモ耳メイドはひっつき虫と化す
そういえば、ゲームでお嬢様が拐われる……というストーリーがありましたね。
私、ぽきっとフラグ折りさせて頂きました。
ぽき? あれ? ばっきばきに(物理的にも)折ったのでしたっけ、誘拐犯達?
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お嬢様に助けていただいたのが今から6年前の9歳の時でございました。
お嬢様と同い年という事、獣人であっても幼い子が拐われ、監禁環境が最悪な場所で何ヶ月もまともな食事ももらえずガリガリになっていた私をボルク家の皆様は『頑張って逃げたね』『もう大丈夫よ』と頭をなでなで、ぎゅっと抱きしめながら言ってくださいました。
一番最初にぎゅっとしてくれたのはお嬢様でしたねぇ。ふふっっ
温かい食事とお日様の匂いのするお布団に包まれた私は、今世の人達がくれた温かさに報いたいと思いました。
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身体が丈夫な獣人でも、さすがに回復までに一週間ほどかかりました。
ボルク家当主様に執務室に呼ばれ、お会いできた時、私はお嬢様を護れるように武術を習わせて欲しいとお願いしました。
旦那様は『まだ幼い子なのだから、邸で娘と守られていて良いんだよ?』と、優しく言ってくださいました。
多分、ゲームのノワールはこの言葉に頷いたんでしょうね。
でも私はそんな性格ではないのです!
旦那様に喰い気味にお願いしました。(まだお作法とかを知らないので許してください!)
最初のうちは、邸中の皆さんが擦り傷や切り傷のついた私を心配してくれたんですが、獣人の回復力、すごいっ
一晩寝たら、あら! ビックリ!! こんなに美しくなりました〜っっ的な、夜中の通販も驚く様な体の回復力に、自分で自分を褒めてしまったくらいです!
指導してくれる公爵家の私設騎士団団長様(渋カッコいい47歳のおじ様)も、旦那様に頼まれたとはいえ、小さい子ども相手の訓練(騎士見習いと一緒のメニュー)に眉に皺を寄せて、どこか遠慮がちな指導だったのです。
でも、それも最初だけで、訓練すればするだけ打てば響く私の体捌きに楽しくなってきたみたいで。
今では短剣はもちろん、その他の暗器も私専用の物を準備してくれましたーーっ わーいっっ
団長様、ありがとうっっ
お嬢様をイジメるヤツはヤっちゃうので任せてくださいね〜っっ
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ゲームでの誘拐は公爵家の令嬢が対象者ということで失敗できないと、貴族派がプロを雇って実行される予定です。
既にこの時、お嬢様はアスラン王子の婚約者として極秘ではありますが内定しています。
お嬢様を亡き者とする為に雇われた闇ギルド内でも指折りの暗殺集団が動くことになっているはず。
依頼主が貴族派一派であるのは確実なのに肝心な証拠が逃げて、首謀者を追及できなくて……このままだとお嬢様の心に大きな傷を残すことになってしまいます。
月華は、【クロ恋】をプレイしていた訳でなく、幼馴染の一樹の横で相槌を打っている程度で正直ストーリーを事細かに覚えてはいません。
誘拐も然り。
いつ、どこで、何をしていて、その様な事になったのか?
うろ覚えの記憶だけれど、私がするべきことははっきりとしています!
外出先での襲撃だということは憶えているから、お嬢様にべったりべっとりくっついていようと思います!!
読んでいただきありがとうございます。