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ケモ耳メイドは困惑する


「………はぃ?」


 突然の発言にまともな返事を返す事も出来ないくらい混乱しまくる私の後ろで、お腹を抱えながら声にならない笑いと大粒の涙を浮かべているせっちゃん………いつまで笑ってらっしゃるんですかね? 

 それにこのお嬢様方は何を言っているのでしょうか? 

 ……おかしいですね。獣人の私が聞き間違えるとは。


「……申し訳ございません。今、何と仰りました?」

「えぇ! ですからぁ、ノワールさんってぇバーンズ卿の婚約者様なんだとぉ、巷でも有名なんですよぉ」

「いつもお二人で一緒にランチを取られてますし、この前は仲良く街中デートされてたとか!」

「ノワール様を見つめるバーンズ卿の瞳が甘く蕩けていると、周囲の者も口を揃えて言ってるそうですわ〜!」

「国王と王太子殿下、それにボルク公爵様とバーンズ伯爵様も認める結婚だとか!」

「是非、我が家の取り扱うアナンド産のシルクで婚約式のドレスを!」


 きゃっきゃと、楽しげに私に話しかけてくる彼女達の言葉が理解不能です!

 ……若干名、商売っ気見せている方もおります。さすが、国内の物流、販売を一手に引き受けるホンディア商会の後継者である令嬢です。商魂逞しく天晴れでございます……なんて逃避してる訳にはいかなかったのです。


 冷静になって。私、頑張れ!!


 お嬢様方の言葉を反芻する事暫し。

 冷静に説明しなければ!と思い出していきます。

 ………ぁ、いや……うん。ランチは毎日の様に取ってた……。あ、でも二人きりなんて一度もないからお嬢様方の思ってる様な甘い時間ではないです! どちらかといえば、()()()()という任務についているので殺伐としているでしょう!


 街中デートというのは、王城にお嬢様と一緒に上がった時に、王太子殿下に『フェリア宝石店とティーナドレス工房とネービル靴店とモンデール菓子店に注文している物があるから取りに行って来てくれ』と、にっこり微笑みを浮かべながら『二人の時間を邪魔する気はないよな?』と言外に私に言い放った()()()の事でしょうか?


『本来であれば、各店の代表が王城まで届けてもよいものを! この男は!!』と思いながらも表情には一切出さず『大事なお役目賜り光栄です。それでは暫し下がらせて頂きます』と頭を深く下げ、少しでも早くお嬢様の元に戻る為、この部屋から出たら窓から飛び出してやるっっと算段してましたのにっっ


『あ、そうだ。大事なカルディナへの贈り物だからとあれもこれもと注文したら大量になってね。荷物持ちにルカを連れて行くと良いよ』


 と、余計な提案(命令)をして下さりましてねぇ〜!


『いえ!! その位持てますっっ』と断ろうとした瞬間、お嬢様が女神の微笑みを浮かべながら手をぱちんと叩いて、


『まぁっ ありがとうございます! 私もノワールを一人で街に行かせるのは不安でしたの。私の可愛い侍女に何かあってはいけませんし。ルカス卿、よろしくお願い致しますね』


 なんて心から言われたものですから……そんなお嬢様の好意を無碍に出来ないじゃないですか!と泣く泣く一緒に行く事になったあの時のことですよね?!


『何をどう取ったらそうなる!』

 握った拳をふるふるさせているとせっちゃんが肩をぽんぽんと叩いてきました。


 せっちゃんに()()はどう言う事なのか問おうと口を開いたのですが、間なく笑顔満開のせっちゃんが周囲の人達にも聞こえるように喋り出したんです……。


「ノワールさんは、王国では知らない人がいない位の腕前で公爵令嬢の命の恩人としても有名人ですし。国からもその働きに見合う貴族籍を、という話もあったと聞きました。ノワールさんは辞退されたそうですけど」


 ええ、だって爵位を賜ったらお嬢様の側にいられる時間が減ってしまうかもしれないじゃないですか!


「国王と王太子殿下の覚えもめでたく、公爵様も幼い頃より可愛がっておられるノワールさんならばと後ろ盾となられるようですし。上の方々(貴族)もただの平民とは考えてはいない様で縁談の話が公爵家に数多く来ていたと耳に挟んだ事がありますよ」


 えっ? 何ですか、それ? ……初耳ですが??


「あ、それにそもそもバーンズ伯爵家は実力主義で通ってますから、今回の縁談、伯爵家は狂喜乱舞してるそうですね!」


 ……………………。


「まあ!! そうなんですねっっ 周りに祝福されての婚姻なんて、まるで小説の様です!」

「両家でお話が進んでいらっしゃるのなら、近々発表されるんでしょうね〜」

「王太子殿下の側近であるバーンズ卿と、殿下の婚約者のバルク令嬢の侍女様の婚約式……。その事によって王室の守りは堅牢となり、次代王室のお二人の叡智があればこの国の未来は安泰ですわ〜!」


 

 ………私のきゃぱを超えた話題は放課後の鐘が鳴るまで続いたのでした。



読んでいただきありがとうございます。

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