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第五議題 後編

【水泳部顧問溺死事件 後編】



勤務時間外であるにも関わらず何故か現場に居た国語教師の文香の悲鳴によって事件発生直後と思われる現場に居合わせた依斗と輝。


文香の通報から約20分ほどして警察が到着、遺体となった水泳部顧問の岩浦は運び出され、プールサイドで横たわっていた美術教師の筆井は気絶しているため病院へ搬送された。


第一発見者である文香は念のため身体検査を行い、空いた教室で事情聴取を受けている。


一通りの現場検証を終えた仁と依斗が、事件現場であるプールサイドに立ち、現在出ている情報をまとめていた。


「岩浦孔子はスタンガンで気絶させられた後、プールで溺れさせられ死亡、死因は溺死だ。死亡推定時刻は21:50~22:30。遺体の顔は何度もプールの側面に打ち付けられて損傷している。」

「生活反応が無いところを見るに、亡くなった後にやられてるみたいだねぇ。」



現場からスタンガンは見つかっておらず、鑑識が校内を探しているところだった。



「まぁこの状況じゃ犯人の目星はつかないだろうねぇ。」

「今、教員全員に連絡を取っているところだ。」



「餅田刑事、お話中よろしいですか。」


呼び止められて振り返ると、文香の事情聴取と身体検査を担当していた鑑識の一人が何やら焦った様子でやってきた。


「どうしたんだ?」

「第一発見者の袖端から塩素が検出されました。」

「…!プールの水の塩素か。」

「はい。アリバイもありませんし、依然として何故勤務時間外に現場に居たのかも黙秘しているのです。」

「第一発見者が犯人の可能性は高いな。被害者の筆井が目覚めてくれれば確実なんだが…」

「…山木くんが…」


依斗は渋い顔でプールサイドを出て、文香が事情聴取を行っている空き教室へと足を進める。

その途中、保健室から葉月が出てきた。


「佐久間さん、お疲れ様です。」

「…岩倉くんか。飯塚くんの様子は…?すまないね、付き添ってもらって。」

「構いませんよ。…少し前に…過呼吸もおさまって、落ち着いたところです。」

「……そうか。」

「今は眠っています。…飯塚さんは何で…あんな事に…?」

「…彼女、感受性が強くてね。遺体を見たのも初めてだったのさ。」

「へぇ…。」


葉月は浅く息を吐くと、目を細めて依斗を見る。


「…心配、ですか?」

「………まぁね。」

「心配ないです。俺がついてますから。」

「…頼むよ。目が覚めたらおしえてくれ。」


挑発的な言い方でそう言われるも、依斗は特に表情を変えることなく、目的の教室へ行こうと話を切り上げて、一歩足を進めた。


依斗の背中に葉月は大きめの声で再度挑発的に話しかける。


「……彼女を、まだ巻き込むつもりですか?」

「……岩倉くんは、何か飯塚くんに特別な感情でもあるのかい?」


明らかに不機嫌な顔になった葉月。睨むように依斗を見つめる。


「…無いと言ったら嘘になります。でも、それ以上に飯塚さんをもう事件に関わらせたくない。」

「私だって、事件に関わってほしくはないさ。だけど…飯塚くんは変わろうとしてる。…自分と向き合おうとしてる。彼女自身が関わろうとする以上、私に止める権利は無い。」

「飯塚さんはあのままで良い…!変わる必要なんて無いです!!」


噛み締めるように言った葉月は、少しだけ冷静さを欠いているように見受けられた。

今にも掴みかかりそうなのを理性で無理やり押さえつけている様な顔だった。


「……あの。」


ピリピリとした空気の中、扉が開く音と共に遠慮がちな声が割り込んでくる。


「い、飯塚…さん…!」

「…目が覚めたようだね。大丈夫かい?」

「は、はい。あの、ご迷惑おかけしました。もう大丈夫です。」

「これから山木くんの事情聴取に立ち会うんだが、来るかい?休んでいても構わないが。」

「行きます。…行かせてください。」


元気無さそうに見える輝だったが、これ以上迷惑かけまいと力強く答えた。


「飯塚さん…!」

「岩倉くん、付き添ってくれてありがとう。もう、大丈夫だよ。」

「………そっ…か。わかった。良かった。…じゃあ、俺は餅田さんの所に戻りますんで。」

「………。」

「じゃ、また後でね。飯塚さん。」


葉月は心配そうに呼び止めたが、輝の意思を汲み取って続けようとした言葉を飲み込んだ。そしてなんとかいつもの笑顔を浮かべてから小走りで去っていった。


「……さっきの、聞いてたのかい?」

「…え?」

「私と岩倉くんの話さ。」

「はい、少しだけですけど…。」


輝は少しだけ照れたように頬を染める。そしてチラリと依斗を見て恥ずかしそうに笑った。


「…私、変われるでしょうか。」


葉月の言葉は聞こえていなかったのか、それともそれ以上に変わりたいのか。

依斗は質問の真意を聞きたかったが野暮だと思い、止めた。



「……君は確実に前に進んでるさ。前を向いているのだから。」



それは依斗なりの肯定。

そして、激励の言葉だった。


--------------------------------------------




空き教室では文香が口を閉ざしたまま、重要な部分の黙秘を続けていた。

このままでは埒が明かない、と事情聴取をしていた刑事が困ったように頭を掻く。


「どうして現場に居合わせたのか…納得できる理由を聞かないことにはこちらとしても……状況証拠などを合わせて容疑者として扱うしか……」

「私は犯人じゃありません!…それに、何度聞かれても同じです。私はたまたま校内に居て、窓から誰かがプールサイドから出て学校外に出ていくのを見かけたから現場に居合わせたんです。…校内にいた理由は申し訳ないですがお話できないです。」

「その理由が重要なんです!貴女が一番今疑われているんですよ!?」

「……すみません。申し上げられません。」


捕まることに怯えている様にも、自信があるから嘘をついている様にも見えない、只何か確固たる意思があって黙秘しているのだろう。

文香は冷や汗を流しながら、背筋を伸ばして座っている。


状況が動かないまま時間が流れていたが、仁が教室に入ってきた事で一度空気が変わる。



「何か新しい証言は?」

「いいや、無いよ。『申し上げられません。ですが私は犯人ではありません。』の一点張りだ。」

「…そうか、まぁ犯人ならそう簡単に言わないだろうな。……それより、一課総動員で教員全員に連絡を取った所、アリバイの無い関係者をこちらへ連れて来た。…葉月には念のため被害者の筆井に付き添うように言っている。」

「…わかった。」

「アリバイが無いのは、そこに居る…山木文香と、校長の桜宮、養護教諭の沢倉、そして被害者の岩浦孔子の妻の岩浦佳代の四名。」

「…そうか、私が事情聴取をしよう。」

「させられるか、お前はもう一般人だ。」


仁が遮るように言い渡すと、依斗は拗ねたように口を尖らせる。


「ぇー。」

「仕方ねぇから立ち会いだけはさせてやる。立ってろ。」

「仁くん、やっさしい~。」

「…チッ。」


仁が椅子に座ってしばらくすると、教室に容疑者候補の三人が刑事に連れられて入ってきた。

三人が入ってくるなり、文香はハッとしたように目を見開き、さらに固く口を紡ぐ。


(誰かを…庇ってる……?)


輝は文香の様子を注意深く見ているが、発言に基本嘘はない。只、何故そこに居たのか、という理由を黙っているだけだった。


(微かだけど覚えてる、事件現場で…文香さんは、遺体を見て驚いてた。………文香さんは犯人じゃない気がする……!それよりも…!)


新たにその場に増えた容疑者候補を流し見て輝は気を引き締める。この中に、岩浦と筆井を襲った犯人が居るかもしれない。

輝はまだ息苦しさを感じながらも、深呼吸をしてから集中して容疑者候補達を観察する。


誰が嘘を付き、誰が何を隠して何を思ってるのか。

それを読み解くのが輝の役目だ。


「夫を殺したのが私だって言うんですか!?」

「いえ、アリバイが無いだけでそこまでは…」

「私は夫を心から愛しているんです!そこに嘘はありません!!お願いですから今すぐ夫の近くに居させてください。せめて、最後に姿だけでも…!!近くで見ていたいんです!」


仁に掴みかかる様に佳代は涙を流しながら必死で詰め寄った。佳代をなだめるように桜宮校長が肩に手を添える。


「気持ちはわかるが…落ち着いて。犯人でないならすぐにでも孔子くんの元に行ける。だからせめて知っていることを話そう。」

「…校長先生…!」

「孔子くんを殺害した犯人を、捕まえる為だ。………ね?」

「…っ……ぅう……。」


泣き崩れる佳代は、輝からみても本当に悲しみに暮れている。


(私じゃない、私じゃない…あれは私じゃない……)


むしろ強い悲しみに同調しそうになりながらも、輝は頭の中で繰り返し自分と佳代は別人であると唱える。

そうしなければ、今にも目の前の悲しみの感情に飲み込まれそうになっていたから。


隣に立っていた養護教諭の沢倉が号泣する佳代をチラ見した後、仁に詰め寄った。


「…刑事さん、筆井先生は無事なんですか?」

「…スタンガンで意識を失ってましたが、命に別状はありません。すぐに目を覚ますでしょう。」

「…そう。良かった…。」


沢倉も本当に筆井を心配している様に見え、輝は少し混乱した。


今此処に居る誰一人として。嘘を言ってはいない。佳代は本当に夫の死を悲しみ、桜宮は本当に犯人逮捕に協力的であり、沢倉は本当に筆井を心配している。


そして、文香も本当に犯人じゃないんだろう。


ただならぬ輝の様子に、依斗は少しだけ顔をしかめる。もうひとつの可能性があった。



それは、犯人が教員ではなく生徒であった可能性だ。



「…ちょっと思うんだけど、犯人が生徒だったらどうするんだい?」

「…学校の生徒に関しても同様。恨みを持ってそうな生徒の家に片っ端から電話をしてる。特に水泳部の部員は念入りにな。」

「へぇ、一時間足らずでそこまで情報を拾ったんだねぇ。」

「………まぁな。今回の事件は二人狙われて一人は未遂だ。……つまり、さっさと捕まえねぇと仏が増える。」

「……そうだねぇ。」


依斗は呑気に返事するが、目は刃のように鋭く虚空を見つめている。


正直言えば状況証拠だけ集めれば文香が犯人だ。しかしどうにも腑に落ちない。動機も不明だ。


「埒が明かないから、とりあえず山木文香は後回しにして、他の三人から一人ずつ事件の事を聞く。……すみませんが皆さん、一度ご退室いただけますか。」


全員が退室したところで、仁のスマホが大きく着信音を鳴らした。


「失礼、出ます。…もしもし、葉月か。…………あぁ。……はぁ?…そうか……なるほど。」


仁はしばらく相槌をうちながら眉間にシワを寄せ、容疑者候補達を見渡す。

スマホの通話を切ると、文香の腕を掴んだ。


「…被害者の筆井が目を覚ました。……証言によると…『山木文香に気絶させられた』との事だ。署までご同行願えますか?」

「…っ、違う…私は!私が行った時には既に二人とも…!それに、スタンガンだって持ってません!私はあの場所で目撃してからずっとここに!それに動機も無いです!!!!」

「そういうことは署で聞きますので、とにかくご同行を…!」


「ま…待って下さい、刑事さん!」


文香を連れていこうとすると一際大きな声が上がり、仁は驚いた顔で振り返る。

声を上げたのは、校長の桜宮だった。



「私達は事情聴取の為に、ここへ来ました…!話を聞いてからでも…遅くないのでは…?」

「…っ、桜宮さん……!」

「ですが…被害者の証言が…。」

「そうです!………私達はまだ話も聞かれてません!それに、外は暗いし…!見間違いの可能性もありませんか…?」


そして被害者の妻である佳代までもが、たどたどしくも、文香が連れていかれる事に抵抗するかのように加勢した。

仁は少しだけ考えた後、あっさり文香の手を放した。



「……決定的な証拠がなきゃ納得いかないってんなら、それで良い。……山木文香さん。」

「…は、はい。」

「貴女は、被害者である岩浦孔子さんをストーカーしていた。………違いますか?」

「!!!」

「筆井さんの証言はもうひとつありましてね?あなたの鍵付きのデスクに、大量の写真があるそうじゃないですか。今から鍵付きのデスク、見せてもらえませんか?」

「…っ……」


文香は汗だくになりながらも、諦めたように肩を落とし、デスクの鍵を仁に渡した。

仁は渡された鍵を持って職員室へ向かう。それに続くように全員が職員室に移動した。


鍵付きのデスクを開けると、いくつかの封筒や過去問の資料など、国語教員らしいものがつらなっており特に目立つものは無い。


何故か桜宮と佳代がホッとしたように仁を見て表情を緩めていたが、文香は先ほどから会話に参加していない依斗を見つめ、固い表情のまま直立不動だった。


仁が封筒の中身も一つ一つ確認したりしている中、ずっと黙っていた依斗がふらふらっと引き出しを触り始める。


「…どうした?」

「いや、この引き出し…ちょっと底が厚くないかい?」


依斗が言い終わらない内に、鍵付きデスクの引き出しの底がパカっと外れ、中から封筒が一つ出てきた。


中身を改めると、そこには大量の写真が入っている。


「…へぇ、全部、仏さんと一緒に写ってる筆井さんじゃないか。」


どれもこれも、親しげに夜の町を歩く岩浦と筆井の写真であり、枚数や写っている服装を見るにかなり長い期間後をつけている様に見える。


「…決まりだな。」

「……っ……。」

「何か弁明はあるか?」

「私は犯人じゃない…です…。」


何故かここまできても黙秘を続ける文香に、輝は思わず声を上げそうになったが、依斗に止められ、パクパクと口を虚しく開け閉めするしかない。


「……山木さんは、犯人じゃ、無い…!」


代わりに声を上げたのは、妻の佳代だった。


  


「どういう事でしょうか?」

「……ごめんなさい、山木さん。私が何も言わないからずっと黙っていてくれたのよね。」

「……佳代…さん。」


全く会話についていけていない仁と輝、そして眉間のシワが無くなった依斗。

佳代は先程までとは別人のように背筋を伸ばし、静かに事実を話始める。



「山木さんは、ストーカーではありません。」

「では、何故こんなに写真を?」

「山木さんは…元々私が浮気調査を依頼した探偵さんです。」

「探偵………だぁ?」

「あのっ…じゃあ、国語教師っていうのは…?先生に、哲学者の卵とか言ってましたよね!?…あれは…?」

「嘘じゃありません、教員免許も持っていますし、佐久間先生を尊敬しており、哲学者の卵であることも本当です。」


佳代の話によると、岩浦は水泳の現役時代から浮いた話も多く奔放であり、噂の絶えない人物だった。

それ事態は大抵の者は知っているが、当事者である妻として、見逃せる訳もなかった。


「私の家は、自分で言うのもなんですが、それなりに大きな家です。夫とは恋愛結婚をしたつもりでも、噂を聞いたらそれを確かめずにいられませんでした。」

「噂…ですか。」

「はい、愛人や裏金などの噂の様に、見てみぬフリのできないものでした。」


本人からは言いづらいのか歯切れの悪くなった佳代を補正する様に、今度は文香が喋り始めた。


「岩浦孔子…旧姓『落合孔子』は、水泳選手として確実で最も大きなスポンサーを得るために、日本を誇る岩浦商事の令嬢である佳代さんと結婚したんです。」

「……。」

「…事実だったんですか?」

「それを探るために、私はずっと彼を尾行していました。」


今の話だと、文香が犯人である可能性は一気に低くなった。もちろん、二人が共犯である可能性を除けばだが。


ボロボロと涙を流す佳代に、悲しげな表情を浮かべる文香、仁はずっと眉間にシワを寄せていたが輝と同じ様に二人が共犯である可能性を口にした。


「なるほど、それなら山木さんが殺害した可能性は低くなりますが、今度は奥さん、あなたが容疑者として一番可能性が高くなりますよ?」

「そ、それは…!」

「なんなら、二人が共犯である事もありえます。」



すると、今度は校長である桜宮が重々しく口を開く。



「…それは、あり得ない事です。」

「……と、言いますと?」

「私も、この調査に関わっておりました。佳代さんから相談を受け、山木さんを教員としてこの学校に勤務させながら彼を見張るように依頼しました。校長として一人間として、岩浦くんの行動は目に余るものがあったので。それを正そうとしたのです。」

「…なるほど…。」

「彼は元々名のある水泳選手でしたから、学校の体育教師として来てくれた日には、それはそれは嬉しかった。しかし、すぐに後ろ暗い噂を耳にし、更には前の学校や企業からも良くない話を聞きました。」



それはありきたりな噂から、校長としてはゾッとするような噂まで様々であった。

生徒にまで手を出してただとか、多数の女性教員と不倫関係を持っていただとか、辞めさせられた学校をまるで自分が被害者の如く酷評していただとか。


「佳代さんと離婚できない岩浦くんに、集めた不倫の証拠を突きつけ、彼に自らこの学校を辞める選択をさせた後、社会的に制裁を与えるつもりでした。」

「はい、彼は絶対にスポンサーである私を手放さないとわかってましたから。」

「佳代さんは、それでも岩浦くんを愛していると、仰っていました。もし制裁を与えられた彼が変わったのなら、隣で支え続けていくつもりだ、と。」


桜宮校長が話終わると、今まで黙っていた依斗がまた素直に疑問を口にする。


「文香くんはどうして、今の今まで黙ってたんだい?早く話してしまえば良かったじゃないか。」

「……探偵として、クライアントの情報を勝手に出すわけにはいきませんでした。」

「…なるほど、探偵の鑑だねぇ。」

「…餅田刑事…。」


文香は仁の前に改めて立ち、背筋を伸ばした。


「私のせいで捜査に遅れが生じてしまいました事、深くお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。」

「……いや、しょうがねぇよなぁ、守秘義務ってやつだし。」



仁は自分の推理が全て外れ、さらに捜査が振り出しに戻った事にため息をついた。


   


------------------------------------------------




事件から約半日経った次の日の朝。


アリバイの無い容疑者候補である四人からは、持ち物や衣類を押収し、さらには家宅捜索が入ることになった。四人とも身柄を拘束され、現在事情聴取という体で署に向かい、文香、佳代、桜宮校長は捜査にかなり協力的であり、家宅捜索も二つ返事で承諾した。


養護教諭の沢倉は元々岩浦の事を良く思っておらず『岩浦の為に何故こんな事を』と捜査に非協力的であったが、友好関係である筆井も被害者であるため為渋々家宅捜索を承諾、署での事情聴取にも応じた。


学校は校内での殺人事件、教員の不足に伴い一週間閉鎖され、生徒は外出禁止であると保護者にも伝えられる事になった。

もちろん寮生も同じであり全生徒外出禁止となっている。



そして、輝と依斗は学校周辺の住宅の聞き込み調査のために仁に同伴していた。



「なるほど、では夜の十時半前後に大きな悲鳴を?」

「あぁ、女の声だった。ベランダで煙草吸ってたら、急にでかいのが聞こえてさ。何事かと思ってずっと見てたら、警察の車やら救急車やらいっぱいで…何だか怖くてなぁ、寝れなかったよ…。」

「ここは、窓を閉めたら外の音は聞こえないのでしょうか?悲鳴を聞かなかった、と仰る方も大勢おられまして。」

「あぁ、たしかに、このマンションは防音がすげぇからな。俺は夜風が好きで夕方くらいから窓開けてたから聞こえてきただけだぜ。」


少し眠そうな男性は怠そうに証言をし、仁は発言をメモしながら礼を言う。男性は満更でも無さそうにお辞儀をして玄関のドアを閉めた。


そして扉が閉まると同時に、メモした内容を改めながら深いため息をつく。


「はぁ……俺はあと何回『十時半前後に大きな女性の悲鳴』ってメモすりゃ良いんだよ。」

「ほとんどが『何も聞こえなかった』か『十時半前後に女性の悲鳴が聞こえた』だからね。」

「通報が22:36だからな。間違いなくお前らが聞いた山木文香の叫び声で間違いないだろう。」

「でも、探偵なのにどうしてあんなに慌てていたんでしょう?なんか、探偵ってもっと冷静なイメージありますよね。」


輝の想像では、探偵は現場慣れしていて悲鳴を上げたりせず冷静に状況を判断している像が出来上がっていた為、文香が探偵であるということにかなり驚いた。


「そんなもんだよ。尾行が得意なところを見ると、彼女は浮気調査や素行調査等の情報収集専門の探偵だったのかもしれないね。」

「そうなんですね…。」

「普通の探偵は滅多に殺人事件なんかに出くわさないさ。」


依斗は少し意味ありげな表情を浮かべ、小さな声で自嘲ぎみに呟く。


「不幸を呼び寄せる…死神でなければね。」

「……先生…。」


輝は『そんなことありません』と否定できなかった。安易に依斗の苦悩をわかった風に言いたくなかったからだ。

依斗の苦悩は常人の輝には理解できないくらい、大きく定められている事だろう。


本人が何度その運命を呪ったのかも想像はできたが、気休めの言葉は無責任であると判断した。


「そういえば、餅田さん!」

「………。」

「餅田さんってば!」

「…違うだろ、おい。」


仁が不貞腐れた様に眉間にシワを寄せている。輝には一瞬何がなんだかわからず、自分が失礼な事をしてしまったのかと焦ったが、怒っているというよりも、拗ねているという表現が似合う顔をしていた。


記憶を辿る必要もない、輝はすぐにその理由に気付く。


「あっ、そうだ、仁さん!」

「なんだ?」

「良かった、合ってた…!」

「なに?…仁くん飯塚くんに名前で呼んでほしくて眉間にシワ寄せてたの?…流石の私でも引くよ。」

「うるせぇ。」


沈みかけていた依斗の気持ちが元に戻ったのを感じ、輝は少しだけ仁に感謝した。


「そんで?…何だよ。」

「あっ、えっと…筆井さんってもう目を覚ましたんですよね?」

「あぁ、記憶は曖昧みたいだがな。異常は無いらしい。念のため二日間入院するそうだ。」

「…そうですか…。」


命があって良かったと安心する反面、輝は違和感を覚える。


(…どうして筆井さんは……文香さんが犯人だって嘘を付いたのだろう…?)


過呼吸で薄れ行く意識の中で見たものを一つ一つ思い出す。

あの時は驚いて溺死した遺体の感覚を考えてしまって苦しくなったが、今なら冷静に思い出せるかもしれない。


プールサイドの入り口側に頭、プール側に足がくる状態で横たわった、ずぶ濡れの筆井。プールに浮かび上がった岩浦の遺体。二人ともうつ伏せ。


現場にスタンガンは落ちていない。

プールへの入り口は二人が倒れている場所と近いためプールの中もハッキリ見えた、遺体はプールの手すりに頭が引っ掛かっている様に浮かんでいた。



(あ…れ………?)



どうして、筆井さんは……?


輝はどうやってもこの違和感を拭い去ることができなかった。


--------------------------------------------



近隣住民への聞き込み調査の中、現役選手時代の岩浦と知り合いだったという人物の家に訪れていた。

なんでも彼が大学時代、同じサークルの仲間だったらしい。


一人暮らしの男性らしい少し散らかった和室、テーブルを囲む様に同級生の男を含む四人は腰をおろした。

座った男は複雑な半笑いで言葉を吐いた。


「…そっか…。孔子、死んだのか。」

「はい、心苦しいでしょうが…お話を聞かせて頂けませんか?」

「…はは、心苦しい…訳では無いんですよね。もうずっと連絡なんて取ってませんでしたし。」

「…何か、トラブルでも?」


男は気まずそうに唇を噛んだ。


「…いや『俺は』別に。…でも実はずっと苦手で。ああいう性格の奴とは合わなくて。」

「岩浦さんは、大学時代から色々なトラブルを?」

「…大学どころじゃないと思いますよ。まぁ、大学時代程酷くも無かったかもしれないけど。」

「詳しく、お話し頂けませんか?…怨恨の可能性がとても高いので。」

「…いっすよ。…あー…、そこのお姉さんにはちょっとキツい話になるかもしれないけど、大丈夫?」


突然目線が合って驚く輝に、男は心底心配そうに顔をしかめている。


「…私…ですか?」

「女性とか、感受性高い人にはちょっと辛い話なんだよ。…聞いても良いし、席をはずしても良いと思うよ。」


自分の感受性が高いことは輝が一番よくわかっている。男の気遣いが本物であることもわかった上で、輝は気を引き締める。


「…大丈夫です。」

「……キツかったらすぐ言うんだよ、飯塚くん。」

「はい。」


仁が力強く肩を、依斗が包み込む様に背中を、支えてくれていたのが心強かった。

男は深く息をすると、肩の力を抜いて自分の大学時代の事を一つ一つ話し出した。


「孔子は、カリスマ性があって実力もあったし顔も良かった。表向きには良い奴だし先生達からも一目置かれてて、後輩からもすごい慕われてた。俺もいつも尊敬してたし、すげぇ良い奴だって思ってた。友達であることを誇りに思ってたくらいだよ。だけど、一年くらい経った秋頃、ちょっとした飲み会で孔子の高校の同級生だった女に会った。」


その女性は岩浦孔子と同じ高校を卒業していた。会話の流れでたまたま判明した事だった。


「『あいつには気を付けなよ』って言われたんだ。正直その時は何の事だかわからなかったんだけど、すぐに意味がわかった。孔子は昔から水泳が得意で、オリンピックだって目指してる位だったし、すごいストイックで努力してた。……けど、国体選手への道としてかなり重要な大会で、孔子は同級生の霧島正樹に負けた。」


男は頭を抱える様に辿々しく、ため息をつく。


「…そこからだよ。孔子が本性現したのは。」


岩浦孔子はその大会の後祝勝会と言って無理やり酒をたくさん飲ませ、飲酒運転をさせてわざと自分が轢かれた様に見せかけた。


更にはその時ライバル選手だった霧島正樹の足を故障させ、選手としても二度と表に出来なくなるほどになった。



「…っ…そんな……!」

「俺や他のやつらも一部は手伝わされた。……逆らえなかった。もし逆らったら自分も同じ事をされると思って。そんで……大学卒業してからは、どんどん疎遠になっていった。」

「今、その正樹さんって方は…?」

「……卒業前…入水自殺したらしい。」

「……!」

「…俺…本当に取り返しのつかない事したんだなって…。後悔してもしきれなくて…でも、誰にも言えなくて…。」


男は正座し、両手を地面に付いて頭を下げた。


「刑事さん、お願いします。犯人を捕まえて下さい。孔子を止められなかったのは俺の責任です。そのせいで、恨みを買ってしまった。」

「全力を尽くします。」

「……君は、後悔してるんだね。」


依斗がテーブルに体重をかけるように両肘をつきながら首を傾け、薄い笑みを浮かべた。


「…大丈夫、君はちゃんと進んでる。悔いることができてる。その気持ちを忘れてはいけないよ。もう、他人を悪意で傷つけてしまわないように。」

「…っ…ぁ……はい、すみません…ありがとうございます…!」


依斗は嬉しそうに目を細める、その片手はしっかりと輝の肩を支えていた。


輝はというと、それどころではなかった。


思い出してしまった忌まわしい記憶。封印していた記憶。嫌でもズルズルと吹き出してくる。

そして悪寒。なぜ気づかなかったのだろう。


話の中でわかっていた筈だ。何度か出てきていた筈だ。


岩浦は結婚後の名前。

旧姓は、落合。彼の名前は落合孔子。



(また……また…!)


そう、彼はかつて輝をいじめていた男。


(…私の同級生……!)



偶然とは、思えなかった。



-------------------------------------------------------



「飯塚くんお昼何食べる??」

「そうですね~。午後からも聞き込みらしいので、しっかりしたのが食べたいです。」


午後になり、仁が捜査資料をまとめるために一旦解散することになった。輝達は食事をする場所を探す為、駅周辺への道を歩いていた途中で桜宮高校の制服を着た人物と出会った。


「…あれ?町田くん…?」

「…あっ、あなた達は……!」


向かい側をとぼとぼと一人で歩いていた町田は、二人の姿を認識すると慌てて身を翻して逃げ出す。


「町田くん!!待って!」


走り出そうとして自分がパンプスを履いている事を再認識する。追わなければいけないと直感した輝は、パンプスを脱いで裸足で後を追おうとしたが、依斗が片手で制した。


「脱がないで、そのまま歩いておいで。」


それだけ言うと、サンダルにも関わらず依斗は簡単に走り出していく。しかも現役の運動部の男子高校生に負けず劣らずの速さで。


数十メートル先であっという間に追い付いてしまった。


小走りで追い付く輝でさえ息が少し上がっているというのに、依斗は汗一つかいておらず涼しい顔をして町田の手を掴んでいた。


町田の方はかなり息が上がっており、全力疾走していたのが良くわかった。


「…はぁっ……はぁっ……。」

「町田くん…大丈夫…?」

「どうして逃げたりしたんだい?」

「先生、たぶん今それどころじゃないですよ。息も絶え絶えじゃないですか。」


輝はガサゴソと鞄を漁ると、少し中の水量が減ったペットボトルを町田に差し出す。


「飲みかけだけど、嫌じゃなかったら…!」

「飯塚くんありがとう!」

「先生にじゃないです!!!!!」


漫才の様なやりとりを見せられ、逃げる気も無くしたのか、おずおずとペットボトルを受け取り乾ききった喉を潤す町田。

やがて息も整って落ち着き、放った第一声は純粋な疑問だった。


「…佐久間先生何者ですか?……速すぎ。」

「そうかな?」

「あっ、町田くんお腹すいてない?ご飯食べる?」

「…いや、あの……別に…」


拒否しようとした町田だったがタイミング良くなのか悪くなのか、腹の虫が大きく鳴った。


「………相当お腹空いてるんだね……一緒にお昼食べよ!」

「今日は学校も休みだからね。私達と食べても問題ないだろう?」


そこで輝は一瞬町田に違和感を覚える。一見して何もおかしくない。だが、今日は学校は休みなのだ。


何故、町田は制服を着ているのか。

しかし、輝はその核心的な質問をぐっと呑み込む。


(今聞いたら、また逃げ出そうとする可能性が高い…。もっと、話をするべきだよね。)


依斗も同じ事を思っているのか、触れないように当たり障りのない会話でなんとか引き留めている。輝以上の観察眼がある依斗ならとっくに町田の重要性に気づいているだろう。


だからこそ、自ら足止めをしに走ったのだ。


「私はやっぱりご飯食べたいなぁ。近くに牛丼屋とかってある?」

「それなら…家の近くにあるんで…。話したい事もありますし…持ち帰りにして家で食べませんか?」

「…良いね!じゃあそうしようか。」



依斗と輝は町田の案内により牛丼屋に立ち寄って、町田の家で昼食を共にする事になったのだが、牛丼屋へ途中で輝のスマホが鳴った。


「もしもし?仁さんですか?」

『あぁ、急で申し訳ないんだがちょっと行って欲しい所がある。今どこだ?』

「学校近くの牛丼屋で昼食を取るつもりで向かってるところです。」

『悪いが、今から位置情報を送るから!そこへ向かってくれねぇか?』

「どうしたんですか?」

『ライバル選手の霧島正樹について調べたんだ。霧島正樹、三年前に橋から落ちて死亡。遺書も残されてたから自殺で間違いない。霧島の母親はそれを境に精神病を患い、妹は不登校になっている。別居に至る程に家庭は崩壊してるそうだ。…その原因を作った被害者を殺害するには十分な動機だ。』

「なるほど…!恨んでいる可能性は高いですね。」

『…あぁ、都内に霧島の父親が経営している店がある。少し話を聞きに行ってくれないか。大至急だ。頼む。』



いつものようにスマホを挟むようにして輝の真横に顔をくっつけていた依斗も、仁の話を聞いて頷く。



「りょーかい。すぐ行くよ。」

『助かる。頼んだぞ。』

「はい!」


通話を切った後、輝は申し訳なさそうに町田に向き直った。


「ごめんね、今からちょっと行かなきゃいけない所があって…。」

「…そ、っか…。」


残念なのかホッとしたのか、町田はそわそわした様子で両手の指先をくるくると遊ばせている。

依斗はチラリと横目で確認した後、落ち着いた声で声を発した。



「…町田くん、君も来るかい?」



今度は拳を握って緊張してしまうが、本人はその言葉を望んでいたんだろう。

すぐに町田は力強く頷く。


仁から送られてきた位置情報を元に三人は歩き出した。



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目的地に近づくにつれ、見慣れた場所になっていく気がしていた。

否、元々地区を見てなんとなく知っている場所では無いのかと察してしまっていた。


自殺に追い込まれたライバル選手、霧島正樹の父親が経営してる店の前に立った三人。

依斗も流石にこれには驚く他無かった。



「…。」

「あれ?佐久間さん!輝ちゃん!いらっしゃい。」


新しく店員となった美琴が出迎えたその店は、かつて依斗が働き、今や行きつけとなった紅茶の専門店だった。


「お、佐久間くんじゃない。どうしたんだい。」

「霧島…店長。」

「どうしたの。すごい顔だね。」


依斗が尋常じゃないほどに言葉を選んでいるのが誰にでもわかった。あれほどまでに思ったことを考えなしに言ってしまう依斗が、今言葉を絞り出して探している。


「…とにかく、僕の二階の私室においで。何か訳があるみたいだし。」

「……」

「美琴ちゃん、店番お願いするよ。」

「はい!わかりました。」

「あ、あのっ…!」


ただならぬ雰囲気に、町田がキョロキョロと視線を飛ばしながら後退りした。


「僕、ここで待ってます…!紅茶見てます。」

「…!」

「…大丈夫です。ちゃんと、待ってますから!」


町田自身、おそらく話したいことがあるから二人について来たのだろう。しかし空気が読める町田は、ここに部外者である自分は居てはいけないと思ったのだった。


依斗と輝が案内されるままに二階に上がると、初めて見た私室はとても片付いており、棚にはトロフィーや楯、表彰状や写真が飾られている。


「…これ…」

「息子だよ。3年前に亡くなったけどね。」

「……店長が、正樹さんのお父様だったんですね。」

「……。」


依斗は眉を寄せて一言も発せず口を固く閉ざしている。輝は自分が黙ってしまうと絶対に無言になってしまうと思ったのか、とにかく静かにならないように喋り続けた。


「それにしても、二階に住まいがあったんですね…!」

「昔はここは倉庫の一つだったんだ。妻と息子と娘の四人で、隣の地区の家に住んでいたんだよ。近所の家とも仲が良くてね。お姉さんのように慕ってる子も居て、皆仲良かったんだけど。……息子が亡くなってからは、妻が気を病んでしまってね。僕はここに住んだり、あっちに住んだりって感じさ。」

「そうだったんですか…。」

「息子関連の物は、妻の目に入らないように全部ここに置いてあるんだよ。」


店長はいつもの様な飄々とした雰囲気でありながらも、どこか悲しげな顔をしている。


「…水が大好きな子でね。泳ぐのはとても速かった。娘もそんな兄が自慢だったろうし、妻も僕も、本当に応援してた。」

「……っ…霧島さん…」

「…輝ちゃん、変わりに泣いてくれてありがとう。僕はなんだか泣けなくてね。あれからずっと泣いてないんだよ。悲しすぎたのかな。」


そこまで店長が話したところで、依斗がようやく口を開いた。


「…自殺の原因は…知っていたんですか?」

「…まぁ、知ってるよ。一時期復讐してやろうと思ったこともあったからね。」

「じゃあ、岩浦孔子の事は…?」

「…?…あぁ、落合の事かな?」

「あぁ、そうでした。旧姓は落合です。落合孔子。」

「うん、知ってるよ。」


輝と依斗は言うべきか否か迷ったが、依斗は真っ直ぐ店長を見て告げる。


「…彼は、何者かに殺害されました。」


その瞬間、店長の曇っていた目がスッと透き通るように潤った。そして、膝をつくように崩れ落ちて両手でなんとか体を支えていた。


「霧島さん!!」


輝がかけよって顔を除き混むように近づくと、店長はその瞳からボロボロと雫をこぼしていた。


「ダメだね。僕は。」

「……店長…。」

「息子の葬儀でも泣けなかったのに、こんな…!こんな所で…泣いちゃってさぁ。」

「どうして…復讐を踏みとどまったんです…?」

「息子が、店に並べてる紅茶を大好きでね。僕が復讐して店を畳むことになったら、娘も妻も困る上に、息子も悲しむと思ったんだよ。」


店長はよろよろと立ち上がり、たくさんのトロフィーや写真が置いてある棚を指差した。


「見てよ、あの笑顔。うちの紅茶を買ってくれた人達はね、みんなあんな顔になるんだ。……その方が、息子も喜んでくれる。この手を血に染めるよりもずっとね。」


写真立てで飾ってある写真はどれも霧島正樹が写っており、屈託の無い笑顔をカメラに向けていた。


優勝トロフィーを掲げた写真がいくつかある中に、見覚えのある顔を見つけて思わず輝は写真を手にとってしまう。


「こ、これ……!」

「あぁ、乙女ちゃんか。その頃からずっと息子と付き合っていてね。素敵なお嬢さんだよ。今でもよく線香をあげに来てくれる。」

「先生!!!この人…!」

「…養護教諭の…沢倉乙女…?」


トロフィーを持つ霧島正樹の隣で寄り添う様に微笑んでいるのは髪型や服装は違えど、間違いなく沢倉乙女その人だった。


  




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