5 は? 冗談だったの? 冗談はよすぽよ
表面構造が持つ印象は、花や植物の色による個性にも影響します。例えば、ビロードのような質感を持つ赤いアマリリスは、同じ赤でもつやがあり冷たい印象のアンスリウムに比べると、赤い色をより温かく感じさせてくれます。表面構造の性質は、花や植物の視覚的な重さにも影響します。ツバキやストレリチアの葉などは硬く重いイメージで、ルナリア、コスモスなどは繊細で、軽い印象の表面構造を持ちます。また使用する器が持つ材質感や個性も、作品のテーマと関連づけなければなりません。
**『フロリストマイスターが教える 花の造形理論 基礎レッスン』(橋口学)より
(1)
「――てな、わけー」
と、話を結んだのは、パク・ソユンだった。
場面は打って変わって、夜の、ソウル市内にて。
まだ雪が少しばかり降る中、SPY探偵団の四人はそろって、キム・テヤンの屋台にて酒を飲んでいた。
「ちっ、何だよ? お前が容疑者じゃなかったのかよ?」
と、その屋台の店主こと、キム・テヤンが舌打ちしして言った。
「だから、何故ぽよ」
と、トッポギを半ば口にしつつ、パク・ソユンが聞く。
「ああ”? 何だよ? その、『何故ぽよ』って?」
「ああ、この前、日本に行った時からさ? 時々、語尾に『ぽよ』が、つくようになっちゃって。まあ、その日その時の、設定によるけど」
「けっ、ふざけたヤツらが、ますますふざけたヤツらになりやがってよ」
「は? なんで私まで、ヨンファと同じ、ふざけたカテゴリになるわけ」
「いや、『何故ぽよ』は、常人からすると、けっこうふざけてるようにしか聞こえない」
と、ふざけたカテゴリに指定されたドン・ヨンファがつっこむ。
そのように、どうでもいいことを喋りながら、酒とともにトッポギやらオデンをつつきつつ、
「――で、結晶華事件」
と、キム・テヤンが仕切りなおして、本題へと戻る。
「うん。そうぽよー」
「……」
と、パク・ソユンの『ぽよ』に、キム・テヤンも調子を狂わされるように顔をしかめる。
そうして、オデンの湯気の中、少し遡ること――
***
「――で、お前が犯人じゃ、ないんだな? パク・ソユン」
と言ったのは、刑事のマー・ドンゴンだった。
「だから、何故ぽよ」
パク・ソユンが表情を変えず、ジトッとした目で聞き返す。
「いや、『何故ぽよ』って何なんだよ?」
「いや、『何故か?』って、理由を聞いているぽよ」
「いや、『何故』の部分じゃなくて、『ぽよ』のほうを聞いてんだよ! 『ぽよ』のほうを!」
「そうですよ。何ですか? 『ぽよ』って、」
とは、暑苦しいマー・ドンゴンとは対照的に、クールそうな相方のチャク・シウが呆れたように言う。
気を取りなおして、
「まあ、お前が犯人か――? ってのは、冗談としてだな、」
「は? 冗談だったの? 冗談はよすぽよ」
「「……」」
と、本題に入ろうとした矢先の『冗談はよすぽよ』に、さすがのマー・ドンゴンとチャク・シウのふたりも沈黙する。
「まあ……、とりあえず、調べていくか」
マー・ドンゴンが言って、仕切りなおす。
「うん。調べるぽよー」
「調べるぽよー、じゃねぇっての、ったく」
「そうですよ、あまり邪魔しないでくださいね」
「うん、分かったー」
「絶対、分かった時の返事じゃないよね、ソユン」
と、気の抜けた返事のパク・ソユンにドン・ヨンファもつっこみつつ、遺体を見ていく。
白を基調としたファッションの、女の遺体。
それにアレンジメントされるのは、白と、ワインのように濃いレッド、それから赤とは対照的な濃い緑の、月桂樹の葉などを基調にした装華。
さらに、それらを彩るのは、雪やジャックフロスト、もしくは樹氷のように伸びる、わずかに青白さを帯びた白色か透明な結晶華、と――
また、さらに、
「うん? これは?」
渋い顔で、マードンゴンが見た先――
そこには、“金色のように見える”、ほぼ正方形のキューブリックと、それらの大小の集合からなる造形。
「ああ、黄鉄鉱? 黄銅鉱じゃ、なかったけ?」
美祢八が後ろから、遅れて答える。
「黄鉄鉱――?」
怪訝な顔するマー・ドンゴンに、
「ああ、愚か者の金とかいうヤツですね」
と、チャク・シウがピンと来た。
「おうよ」
「おお、そうだ、そうだ。確か、その、黄鉄鉱だったな」
と、マー・ドンゴンがうっかり忘れてたかのように、思い出しつつ、
「しかし、どうして、黄鉄鉱が?」
と、ドン・ヨンファが単純な疑問を投げる。
「まあ、フラワーアートに鉱物、黄鉄鉱とは、なかなか斬新ではあるのう」
「何だい? 結晶華との組み合わせで、無機的な、鉱物なんかを添えているってわけかい」
「うん。そうじゃないけ。知らんけど」
「知らんけどって、ねぇ……」
と、美祢八とドン・ヨンファが話しているところへ、
「ああ、そう言えばですけど、あまり近づかないほうがよかったかもしれませんね」
と、チャク・シウが言うと、
「へ――?」
「おい、何け? その、過去形は?」
「ああ、そうだぜ。過去の、この結晶華事件の中にはな、毒劇物でできた“結晶” が使われてたこともあったからな」
「そりゃ、早く言えっちゅんがぜ!」
と、美祢八がマー・ドンゴンにつっこんだ。
その傍ら、
「まあ、たぶん、ソユンは大丈夫なんだろうだけど」
「はぁ、何よ? その、カッコ、パク・ソユンを除くみたいな」
と、ドン・ヨンファに言われ、パク・ソユンがつっこんでいたが。




