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【冷たい結晶華】  作者: 石田ヨネ
第二章 調査、華と鋸、フロリストについて

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5/28

5 は? 冗談だったの? 冗談はよすぽよ




 表面構造が持つ印象は、花や植物の色による個性にも影響します。例えば、ビロードのような質感を持つ赤いアマリリスは、同じ赤でもつやがあり冷たい印象のアンスリウムに比べると、赤い色をより温かく感じさせてくれます。表面構造の性質は、花や植物の視覚的な重さにも影響します。ツバキやストレリチアの葉などは硬く重いイメージで、ルナリア、コスモスなどは繊細で、軽い印象の表面構造を持ちます。また使用する器が持つ材質感や個性も、作品のテーマと関連づけなければなりません。


**『フロリストマイスターが教える 花の造形理論 基礎レッスン』(橋口学)より



          (1)



「――てな、わけー」

 と、話を結んだのは、パク・ソユンだった。

 場面は打って変わって、夜の、ソウル市内にて。

 まだ雪が少しばかり降る中、SPY探偵団の四人はそろって、キム・テヤンの屋台にて酒を飲んでいた。

「ちっ、何だよ? お前が容疑者じゃなかったのかよ?」

 と、その屋台の店主こと、キム・テヤンが舌打ちしして言った。

「だから、何故ぽよ」

 と、トッポギを半ば口にしつつ、パク・ソユンが聞く。

「ああ”? 何だよ? その、『何故ぽよ』って?」

「ああ、この前、日本に行った時からさ? 時々、語尾に『ぽよ』が、つくようになっちゃって。まあ、その日その時の、設定によるけど」

「けっ、ふざけたヤツらが、ますますふざけたヤツらになりやがってよ」

「は? なんで私まで、ヨンファと同じ、ふざけたカテゴリになるわけ」

「いや、『何故ぽよ』は、常人からすると、けっこうふざけてるようにしか聞こえない」

 と、ふざけたカテゴリに指定されたドン・ヨンファがつっこむ。

 そのように、どうでもいいことを喋りながら、酒とともにトッポギやらオデンをつつきつつ、

「――で、結晶華事件」

 と、キム・テヤンが仕切りなおして、本題へと戻る。

「うん。そうぽよー」

「……」

 と、パク・ソユンの『ぽよ』に、キム・テヤンも調子を狂わされるように顔をしかめる。

 そうして、オデンの湯気の中、少し遡ること――


     ***     


「――で、お前が犯人じゃ、ないんだな? パク・ソユン」

 と言ったのは、刑事のマー・ドンゴンだった。

「だから、何故ぽよ」

 パク・ソユンが表情を変えず、ジトッとした目で聞き返す。

「いや、『何故ぽよ』って何なんだよ?」

「いや、『何故か?』って、理由を聞いているぽよ」

「いや、『何故』の部分じゃなくて、『ぽよ』のほうを聞いてんだよ! 『ぽよ』のほうを!」

「そうですよ。何ですか? 『ぽよ』って、」

 とは、暑苦しいマー・ドンゴンとは対照的に、クールそうな相方のチャク・シウが呆れたように言う。

 気を取りなおして、

「まあ、お前が犯人か――? ってのは、冗談としてだな、」

「は? 冗談だったの? 冗談はよすぽよ」 

「「……」」

 と、本題に入ろうとした矢先の『冗談はよすぽよ』に、さすがのマー・ドンゴンとチャク・シウのふたりも沈黙する。

「まあ……、とりあえず、調べていくか」

 マー・ドンゴンが言って、仕切りなおす。

「うん。調べるぽよー」

「調べるぽよー、じゃねぇっての、ったく」 

「そうですよ、あまり邪魔しないでくださいね」

「うん、分かったー」

「絶対、分かった時の返事じゃないよね、ソユン」

 と、気の抜けた返事のパク・ソユンにドン・ヨンファもつっこみつつ、遺体を見ていく。

 白を基調としたファッションの、女の遺体。

 それにアレンジメントされるのは、白と、ワインのように濃いレッド、それから赤とは対照的な濃い緑の、月桂樹の葉などを基調にした装華。

 さらに、それらを彩るのは、雪やジャックフロスト、もしくは樹氷のように伸びる、わずかに青白さを帯びた白色か透明な結晶華、と――

 また、さらに、

「うん? これは?」

 渋い顔で、マードンゴンが見た先――

 そこには、“金色のように見える”、ほぼ正方形のキューブリックと、それらの大小の集合からなる造形。

「ああ、黄鉄鉱? 黄銅鉱じゃ、なかったけ?」

 美祢八が後ろから、遅れて答える。

「黄鉄鉱――?」

 怪訝な顔するマー・ドンゴンに、

「ああ、愚か者の金とかいうヤツですね」

 と、チャク・シウがピンと来た。

「おうよ」

「おお、そうだ、そうだ。確か、その、黄鉄鉱だったな」 

 と、マー・ドンゴンがうっかり忘れてたかのように、思い出しつつ、

「しかし、どうして、黄鉄鉱が?」

 と、ドン・ヨンファが単純な疑問を投げる。

「まあ、フラワーアートに鉱物、黄鉄鉱とは、なかなか斬新ではあるのう」

「何だい? 結晶華との組み合わせで、無機的な、鉱物なんかを添えているってわけかい」

「うん。そうじゃないけ。知らんけど」

「知らんけどって、ねぇ……」 

 と、美祢八とドン・ヨンファが話しているところへ、

「ああ、そう言えばですけど、あまり近づかないほうがよかったかもしれませんね」

 と、チャク・シウが言うと、

「へ――?」

「おい、何け? その、過去形は?」

「ああ、そうだぜ。過去の、この結晶華事件の中にはな、毒劇物でできた“結晶” が使われてたこともあったからな」

「そりゃ、早く言えっちゅんがぜ!」

 と、美祢八がマー・ドンゴンにつっこんだ。

 その傍ら、

「まあ、たぶん、ソユンは大丈夫なんだろうだけど」

「はぁ、何よ? その、カッコ、パク・ソユンを除くみたいな」

 と、ドン・ヨンファに言われ、パク・ソユンがつっこんでいたが。

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