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07 【冷たい結晶華】  作者: 非常口どん八
第三章 ラブ・レター

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16 ガバガバタヌキ



          (3)



「――はぁ、ダメダメじゃん」

 と言ったのは、パク・ソユンだった。

 再び――、いや、何が再びなのか? 時間は進んで、夜のソウル市内の、キム・テヤンの屋台にて。

 SPY探偵団の四人は集まって、今日の調査に関して、あれこれ話をしていた。

 まあ、ただ酒を飲んでいるだけでもあるが……

「ダメダメじゃんって、お前は、どうなんだよ? ソユン」

 とは、チジミ屋のオヤジこと、キム・テヤンと、

「そうだよ。ソユンこそ、何か調べれたのかい?」

 と、ドン・ヨンファが便乗した。

「いや、別に」

 パク・ソユンが、チジミを口にしながら答える。

「けっ、お前も、ダメダメじゃねぇか」

「それに、何だよ? 『別に』って、そんなシチュエーションで使わなくないかい」

「はぁ、うるさいわね」

 と、パク・ソユンは鬱陶しそうに答えつつ、

「ああ、そう言えば、さ?」

「「う、ん――?」」

 と、キム・テヤンとドン・ヨンファのふたりが相槌する中、

「まあ、特に、どうってことでもないんだけど、さ? その、犯人の、フロリストだっけ――? から、手紙が来たんだけどさ?」

「な、何だって――!?」

 と、ドン・ヨンファが、また胡散くさい某ミステリーマンガばりに驚くが、

「……な、何と?」

「……あ、あ”ん?」

 と、カン・ロウンとキム・テヤンのふたりは遅れて、ぎこちなく反応した。

 当然のことか、

「ん? 何? ふたりは反応、薄くない? てか? 何か、ぎこちなくない?」

 と、パク・ソユンが、その違和感に気がつく。

 続けざま

「……」

 と、パク・ソユンは無言ながら、ジィッ……と、カン・ロウンとキム・テヤンの目を見た。

 その圧に、

「ぬっ……、」

「っ……!」

 と、ふたりは思わず、動揺し、たじろいでしまう。

「は? ふたりとも、もしかして、知ってたわけ? この、手紙が来てたの」

 パク・ソユンが、キレる寸前の、イライラが高まるときの顔でふたりに迫る。

「い、いや、」

「まあ、そんなことは、」

 ふたりは、思わず後ずさりした。

 すると、


 ――ギュ、ィィイイン――!!!


 との凶悪な音とともに 何か、物騒な回転機械を召還する。

 それは、まるで、トラクターなどの大型農業機械の如き、回転シャフト――!!

 うっかり触れるものを巻き込み、一瞬で原形のないミンチにしてしまう凶悪に悍ましいシロモノ!! 

 それを、パク・ソユンは手に具現化していたのだ!!

「うッ――!?」

「ちょッ!? まッ、待てって、ソユンッ!! やるなら俺たちじゃなくて、ヨンファのヤツにでもやれって!!」

 さすがのカン・ロウンとキム・テヤンでも、ビビり、慌てる。

「い、いや!? 何でそこで僕!?」

「何でそこで僕じゃねぇってんだよ!! こういう役はてめぇって決まってんだろが!! タコ!!」

 自分に振られて動揺するドン・ヨンファに、キム・テヤンが理不尽に怒鳴る。

 そうしつつも、回転数を上げて突きつけてくるパク・ソユンに、

「あ、ああっ!! わ、分かったよ!! あの、ポンコツタヌキを呼んだんだよッ!! そんで、アイツの“葛葉”で調べたら、たまたま、お前の情報が引っかかったんだよッ!!」

「は? また、あのガバガバタヌキを頼るワケ? ガバガバな妖具とか出してもらって」

「いや、ガバガバダヌキって、」

 とは、傍らでドン・ヨンファが、ガバガバダヌキとの謎ワードに反応する。

 そうしている間にも、パク・ソユンは嫌っている妖狐の名を出されて、機嫌はますまる悪くなるパターンに思えた。

 そのまま、いつものパターンでキレるだろう。

 そう、思いきや、

「はぁ……、まあ、別に、いいけど」

 と、フッ……と、まるで急に失速するかのように、パク・ソユンはシャフト回転を緩めた。

 それを見て、

「へ……?」

「あ、ん……?」

 と、解放されたかのように、カン・ロウンとキム・テヤンのふたりは、気の抜けた声を出した。

 すると、パク・ソユンが、

「まあ、言うて……、あのポンコツダヌキには、色々助けられているからさ? 嫌いではあるけど、キレたりしないわよ。アイツを呼んだくらいで」

「何だよ? キレないのかよ?」

「いや、キレてないんだけど、さ? てか? 私、そんなにキレるキャラだっけ?」

「いや、どっちかというと、気性は荒いほうだろ」

 と、キム・テヤンが答える。

 また、ドン・ヨンファも加わって、

「確かに、そう言えば……? 最近、キレてそうで、意外にキレきってないというか……、むしろ、最近は、ふざけているときのほうが多いような、」

「はぁ、だから、前から言ってんじゃん? ふざ―「―はいはい、はい。もういいから。その、ふざけているかふざけてないかの重ね合わせ量子理論は」

「ぽよ」

「「ぽよ、じゃないってんだよ」」

 と、ここで珍しくか、ドン・ヨンファとキム・テヤンが、そろって『ぽよ』につっこんだ。

 本題に戻って、

「――で? この、フロリストから手紙が来ちゃったから、さ? 囮作戦でも、するんでしょ? まあ、私が言い出しっぺなんだけどさ」

 パク・ソユンが、確認するように皆に聞く。

「まあ、そうだなぁ……?」

 と、カン・ロウンが考えるように仕草をし、

「手紙では、『一度、お会いしませんか?』みてぇなことが書いてあるんだろ? どっちにしろ、フロリストのヤツは、お前に接触しようとしてくるだろうからな」

 と、キム・テヤンが答える。

 また、パク・ソユンが、

「それで、さ? 囮になるって話はいいけどさ? そのあと、どうやって私を追跡する感じ?」

「ああ、それなら心配すんな?」

「う、ん?」

 と、首をかしげるパク・ソユンに、

「実は、すまんがな……、お前の食ったオデンの中にな、あのタヌキの妖具――、を仕込ませてもらった」

 と、キム・テヤンが答えた。

 なお、妖具と続いて、魔界植物と言いかけたのだが、それはさすがに言わないでおいた。

 それを聞いて、

「は? ちょっと、何すんのよ?」

「そう言うなよ。だって、最初から食ってくれって頼んでも、お前、絶対食ってくれないだろ」

「そりゃ、そうでしょ」

 と、パク・ソユンは答えつつ、

「まあ、いいわ。とりま、このままフロリストがコンタクトしてきてくれるなら、囮になるから。アンタたち、頼むわよ」

「ああ」

 と、カン・ロウンが答えながら、

「ちなみに、だが……、ワンチャン、犯人のフロリストは、『ソユンが囮になって調査する』っていうことも、想定してたりしないかな?」

「ああ”ん?」

「すると、自分が追跡されることも分かってうえで、ソユンにコンタクトしてくるってことかい? 別に、僕たちから追跡されても、何とでもできる前提で」

 と、ドン・ヨンファが聞いてきた。

「まあ、そういうことだな。可能性、だが」

「まあ、別に、いいんじゃない? それでも。ポーカーだって、カードを表にした状態でもポーカーできるし」

「いや、それは無理くないか? いや、微妙にでき――、……いや、やっぱ無理くないか?」

「けっ、何がポーカーだ、ったく」

 と、ポーカーに例えるドン・ヨンファに、キム・テヤンが舌打ちする。

 そうしながらも、

「まあ、いい……。その、フロリストってのが、いつ、お前にアプローチしてくんのかは分かんねぇけどよ……、とりあえず、無茶はするなよ」

 と、キム・テヤンがパク・ソユンに言った。

「うん。分かったー」

「「いや、絶対分かってなさそうな、分かっただな」」

 キム・テヤンとドン・ヨンファがともにつっこむ中、

 ――コン……!

 と、パク・ソユンが、空になったグラスを置いた。

「はぁ、飲んだ飲んだ。とりま、今日は、そんなところでいいわよね」

「ああ」

 と、カン・ロウンが答えると、

「じゃあ、帰るぽよー」

 と、パク・ソユンはそのまま席を立ち、帰って行ってしまった。

 そのパク・ソユンの後ろ姿を見送りながら、

「ったく、やれやれ……」

「さて、ソユンが囮となったあと、どうするか? を考えておかないとな」

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