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【07】 冷たい結晶華   作者: 石田ヨネ
第三章 ラブ・レター
14/28

14 と、これは異世界時間は何時何分か――?



          (2)



 パク・ソユンとドン・ヨンファが調査(?)をしているいっぽう、並行して、カン・ロウンとキム・テヤンのふたりは、正攻法(?)で調べていた。

「マーたちにも聞いてみたがな、今回のガイシャに関して、目ぼしい通信記録や、監視網から得られる有用な情報ってのは、今のところ無いとのことだ

 と、わざわざ警察署に足を運んだのか、キム・テヤンが、そうカン・ロウンに報告して言った。

「そう、か……」

 カン・ロウンが頷く。

「他にも、情報部時代の連中や、ツテも使ってるけどよ……、あまり有用な情報は期待できねぇぜ」

 ソファに座るキム・テヤンは言いつつ、これまでの事件に関する資料を表示させて、ダーッと流し見してみせる。

「う~む……、なかなかに、神出鬼没的な存在だな、フロリストというヤツは」

 中腰の状態で、カン・ロウンもどれどれと、ざっと見て唸る。

 そのまま、カン・ロウンは立つなりコーヒーを淹れに「いった。

「ちなみに、何か、それっぽく唸って考えているけどよぅ……、実質、今のところ何もしていねぇじゃねぇか? ロウン」

「まあ、そう言うなよ。いちおう、コーヒー淹れてやってるじゃないか」

「けっ、」

 キム・テヤンが舌打ちする。

 その背後から、

「砂糖は、どうするか? テヤン?」

 と、カン・ロウンの声が聞こえてくる。 

「ああ”? 入れんじゃねぇよ。入れたらタダじゃすまねぇぞ、ミルクもな」

 キム・テヤンが、治安の悪そうな返事をする。

 そうしながら続けて、キム・テヤンが、切り出す。

「しかし……、さて? どうするよ?」

「そうだ、なぁ……」

 と、コーヒーの香りとともに、カン・ロウンの相槌が返ってくる。

「このまま、何か、“パンチの効いたこと”をするかしないと、進展しねぇんじゃねぇか?」

 キム・テヤンが言う。

 いわゆる、何かトリッキーなことをして調べる的な意味で。

「まあ、あのふたりが色々調べてくるのも、待たないか?」

 と、盆にコーヒーカップを載せて、カン・ロウンが戻ってきた。

「けっ、あのふざけたヤツらの、何が期待できるんかってんだよ」

 舌打ちしつつ、キム・テヤンが受け取る。

「テヤンも、いるか?」

「ああ”? いいよ、俺は、甘いのは」

 と、甘党派のカン・ロウンが、韓国版どら焼きとでもいうべきスイーツを見せるが、反対にキム・テヤンは辛党というか、少なくとも甘党ではないので受け取らない。

 その、どら焼きを見ながら、

「ああ? そう言えば、もしドラえもんだとすると、こういう、話が進展しない時には、ドラえもんを頼るんだろうな」

 ふと、カン・ロウンが、ドラえもんを連想したかのように言った。

「ああ”? 何だっ、て……?」

 キム・テヤンが怪訝な顔をしつつ、

「――また? あの、タヌキを頼るのか?」

 と、ピンと来て思い出した。

「ああ……」

 カン・ロウンが、頷いた。

 タヌキ、――ではなくてキツネ、“妖狐”の、神楽坂文のことを思い出した。

 SPY探偵団とは協力関係にあり、これまでのいくつかの事件の調査においても、助けを借りたことがある関係である。

 なお、その助けを借りるとは、妖狐の妖力であったり、ドラえもんの秘密道具よろしく、妖具を出してもらったりといった具合であり、妖狐とはいいながらも、さながらドラえもんみたいなナニカとして扱われているという。

「まあ、いいんじゃねぇか。俺は、あのタヌキ、あんま好きじゃねぇけど……。てか? 俺よりも、ソユンのヤツが嫌な顔するだろ」

「だから、今のうちに、こっそりとだよ」

 と、確かに嫌そうな顔して言うキム・テヤンに、カン・ロウンが答える。

「ちっ、仕方ねぇな」

 キム・テヤンが舌打ちしつつ、カン・ロウンの提案を渋々のむ。

 すると、カン・ロウンはスマホを手に取って、

 ――プル、ルルル……、プル、ルルル……

 早速妖狐へとかけ始めていた。

「何だ? もう電話してんのかよ?」

「ああ、思い立ったが吉日、とかいうじゃないか」

 と、しばらく待つと、

『――何だ?』

 と、これは異世界時間は何時何分か――? 金沢は兼六園のごとく、雪の庭園を眺めるドラえもんみたいなナニカこと、妖狐の神楽坂文が電話に出た。

 ちなみに、そのタヌキこと妖狐のなりはというと、某スパイ家族マンガのような黒髪にアサシンドレスに、雪をモチーフにした友禅を肩掛けした、狐耳の美麗な女の姿であった。

 その妖狐に、

「お久しぶりです、タヌ、キさん」

『だから、いつもキツネと言っておるだろ、』

 妖狐は、やれやれと返す。

 もう、キツネではなくタヌキと呼ばれるのがデフォルトだった。

 この妖狐も、性格こそクズであるが、ここは「いい加減にしろ」と言ってもいいものの、諦めているのだろう。

 その妖狐の手には日本酒があり、館のような室内は、ガヤガヤと喧しかった。

 神そうなヤツラはだいたい友達な面々が、花札や賭博と、酒宴に興じて騒いでいた。

 妖狐は、そこから離れて、小休止というところなのだろう。

『――で? 何の用だ?』

 妖狐が、カン・ロウンに聞く。 

「ええ、その……、ちょっと、新しく、事件を調べてましてね」

『はぅ、』

 妖狐が相槌する。

 なお、「何? その、『はぅ』って」と、カン・ロウンは一瞬つっこみたかったが、スルーして。

『それで、また私の妖力か、妖具を使いたいというわけか? まったく、人のことを、ドラえもんみたいなナニカと思っているんじゃないだろうな?』

「すみません、思ってました」

『思ってましたじゃないが』

 正直に答えるカン・ロウンに、妖狐は言いながら、

『まったく、仕方がない、』

 と、協力の依頼を受けようとした、その時、

「おい! 何してんだ! タヌキ!」

「おうよ! 戻って来いや! クソダヌキ!」

「そうよ! 犯すわよ! 何、休憩なんかしてんの?」

 と、神そうなヤツラはだいたい友達が、雪崩ように縁側に押しかけて来た。

 たぶん、貸した妖力のツケやらで逃がさない的な感じで。

 そんな神そうな彼らから、

「おっと! ちょっと、相談ごとが入ってな? しばらく外すから、さらばだじょ」

「おおぉい!!」

「さらばだじょじゃねぇぞ!! 殺すぞゴラァ!!」

 と、そういうわけで、


 ――ギュ、イイーンッ――!!


 と、こちら側の世界の時空間に穴が開き、妖狐の神楽坂文が現れた。

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