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茶色転生 〜インパクト最強の異形精霊はクールに無双したい〜  作者: 花祭きのこ
第三章 『悪魔の精霊』編
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038 ヤミナ・アステカランド②


「おい、この窓と床の隅まだ汚れてるぞ。早く掃除しちまえよ」


「は、はい。今やりたす」


「ちっ…何で俺がこんな小悪魔族の子供の面倒見なきゃならねえんだよ」



そう言って執事服を着た男、パインさんはブツブツと文句を言いながら、私の仕事を手伝ってくれる。


パインさんは一応私の教育係っていうポジションの人。

どう見ても周りから押し付けられたって感じだけど、文句を言いながらもちゃんと色々教えてくれる。

口は悪いけど、このパインさんが今のところ私が唯一話の出来る相手。年も高校生くらいでちょぅと親近感わくし。


というか、私が他のメイドから毛嫌いされてるせいで、この人の所にいるしか無いんだけどね。



「…おい、今週の献上品はもうできてんのかよ」


「いえ…。でも今回は何と、公爵様の方からリクエストがあったんですよ!ご子息のコロン様に食べて頂く、新しい食べ物っていうお題なんです」


「あーそりゃまた大変なお題だな。あの坊ちゃん、すんげーワガママだからな」



そう言って少し同情的な目を私に向けるパインさん。なんだかんだ言ってこの人、優しいんだよなあ。



「大丈夫です、私の知識と発想は留まることを知りませんから」



そう言って薄い胸を張る私に、心配そうな目を向けるパインさん。



「それならいいんだけどよ…。お前成功してるからな、あのメイド長とかすげえ敵視してるぜ。気をつけろよな」


「メ、メイド長、怖いですもんね…。分かりました、気を付けます」



冷たい目をした三十路のメイド長の顔を思い出し、私は思わず身震いする。



このお城に来てから、もうすぐ二ヶ月が経とうとしてる。

これまでオセロ、バネ、鉛筆なんかを形にして公爵様に献上してきた。


一番最初のオセロは大喜びされて、早速量産体制に入ったみたいで、貴族の間で今一番流行している。

バネや鉛筆も仕組みに驚いて、これもすぐに試運転されてる。


大きな儲けが出ているみたいで、最近公爵様はニコニコだ。

私にも当たりが柔らかいし、報酬も何と金貨を一枚もらえた。すごくない?金貨だよ、金貨、


でも私が成功して、待遇が良くなってることに不満を持つ人達も多いみたい。

さっきも言ったメイド長を筆頭に、ベテランのメイドたちや執事、厨房の人なんかも私を良く思っていないぽい。

いつも睨まれるし、口すら効いてくれたことないし。


とにかく後ろから刺されないように気をつけよう。


             



〜〜〜




私は小さな厨房に来ていた。


この場所は新人の料理人が練習する場所で、この時間だけ使って良いって言われてる。


色んな食材(の端材)や調味料を前にして、私は何を作るか考える。


「うーむ…」



するとその時、後ろのドアがガチャリと開き、誰かが入ってきた。

その人間を見て私は一瞬凍り付く。



「メ、メイド長!」



入室してきたのはメイド長。おそらくこのお城で一番私を嫌っている人だ。



「あ、あの、何か…」


「…様子を見に来たのよ。あなた、ここを使うのは初めてでしょう?」




その言葉を聞いて私は目を丸くした。

今まで口も効いてくれなかったのに、突然優しくなるなんて。これはデレ期来た?来ちゃった?



「は、はい。心配して下さってありがとうございます!」


「フフ、いいのよ。ところで、何を作るかもう決めたのかしら?」


「いえ、それがまだ…コロン様が好きなものとか何も知りませんし」



私がそう言うと、メイド長は少し思案し、答える。



「…卵。コロン様の好物は卵よ。今回の献上品には、ぜひ卵を使ったものを作ると良いわ」



そう言ってにっこり微笑むメイド長。

うわ、この人超良い人じゃん!私今まで誤解してた、本当に申し訳ありません!



「あ、ありがとうございます!分かりました、卵を使ってみます」



私の返答を聞いて、「じゃあ頑張ってちょうだいね」と笑顔で退室するメイド長。

その優しさに報いねば!



「異世界で卵って言ったら、やっぱりアレだよね。うん、油とお酢もあるし」



そうして私は異世界転生の定番、マヨネーズを作り上げた。やっぱり王道を行くのが安全牌でしょ。


「ペロッ…うん、これはマヨネーズ…!」



しっかりマヨネーズになっている事を確認し、野菜スティックとセットで皿に盛る。


「よし、いざ出陣!」




              



私の目の前で、性格の悪そうなクソガキ様ことコロン様が、訝しげにマヨネーズを見つめる、

今年8歳になった愛息を公爵様が見守る中、私の作ったマヨネーズの試食会が始まったのだ。



「ボク野菜嫌い。こんなの食べないよ」



しかし、野菜嫌いが仇となり、食べてすらくれなそうな空気になってしまっていた。



「も、申し訳ありませんでした。あの…良ければそのマヨネーズだけでも舐めて頂けると…」



野菜スティックにディップしてもらうことは諦め、とにかく味だけ見てもらうよう、私は懇願した。



「このよく分かんない白いやつ?…ちょっとだけだぞ。不味かったら死刑だからな」



そう言ってコロン様は人差し指でマヨネーズをすくい、口へと運んだ。


その瞬間、コロン様は目を見開いて叫んだ。



「う、うまぁーーーっ!な、何これ?何これ!?うっま!うまぁーーっ!」



よほど美味しかったようで、語彙力が無くなったコロン様は器のマヨネーズを次々と指で舐め取り、さらには器を直接ペロペロと舐める勢いになった。


「おおっ!」とその様子を見ていた公爵様も身を乗り出し、私も手応えを感じてガッツポーズををする。



そしてコロン様は喉を掻きむしり、口から泡をふいて倒れた。



          

「えっ」







一瞬の沈黙ののち怒号が飛び交い、場が騒然とする。

ヒューヒューと喉を鳴らすコロン様を、やけに手早く救護していくメイド長の背中を見ながら、現実感の無い私は兵隊さんに取り押さえられた。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





カサカサと虫が這い回る音が聞こえる。


気持ち悪いけど頭が回らない。



ここはジメジメと薄暗い石畳の部屋。頑丈な鉄格子が嵌め込まれている地下空間、つまりは牢屋。


創作物ではよく出てくるけど、まさか自分がこんな所に入れられるとは思わなかった…。どうしよう、怖い。寒い。嫌だ。



そもそもあれって絶対アレルギー反応とか、アナフィラキシーショックだよね。

多分、マヨネーズに使った…卵。アレルギーが出やすいのは卵しか考えられない。


…だとすると、メイド長が卵を使うように推してきたのはおかしい。絶対に。


はあ…つまり私は見事に嵌められたってことか。

…いくら目障りだったとはいえここまでする?この世界の人ってホント怖い。怒りより恐怖が勝っちゃうよ。



あれから丸一日経つけど、まだ私の処分は出てない。

公国の王子様を殺しかけたんだから、多分大変なことになってるんだと思う。

死刑だけは嫌だな…異世界転生して、まだ何もしてないのに。



床に座り込み、そんなことを考えているとコツコツ、と足音が聞こえてきた。

見ると、護衛兵を二人連れた公爵様が上階から降りてくるところだった。



「こ、公爵様…」


「喋るな。私はまだ貴様への怒りが収まらん。うっかり首をはねてしまいそうだ」



低く、憎悪を感じさせる声音の公爵様の言葉を聞き、私は「ひっ…」と喉を詰まらせる。



「貴様に処分を下す。今後はこの牢にて生活し、週に一度貴様の知恵を献上し続けろ。期間は無期限だ」



それを聞いて頭が真っ白になる。


む、無期限…そんなの無期懲役と変わらないじゃない。もしかしたら一生このまま…そんなの嫌だ!


「こ、公爵様、私はただメイド長に言われた食材を使って…」


「黙れ!!死刑にせんだけでも有り難く思え!!貴様に発言権は一切無い。話を聞いて欲しくば、せいぜい金になる案を出し続けろ」



私の発言を一蹴し、公爵様はカツカツと去っていってしまった。



…確かに死刑にならなくて良かった…のか。まだ私には利用価値があるってことよね。


もうこれにすがるしかない。

現代知識をフル活用して、私は必ずお父さんとお母さんがいるあの村に帰るんだ!



そう決意を固めた私は、来る日も来る日もアイデアを出し続けた。



            


〜〜〜




質素で最低限の食事が続き、私の体はガリガリに細くなった。

そして狭い牢なので歩くことも出来ず、私は立つことすら出来なくなってしまった。

当然風呂にも入れず、私の体は汚れ放題だ。



年に何回か、執事先輩のパインさんがこっそりやってきて、パンをくれた事もあった。

普通のパンなのに涙が出るくらい美味しかった。そんな私の様子を見て、パインさんは何だか辛そうな顔をしてた。優しいね。




それでも毎週毎週必死に、公爵様に知識を献上し続けてもうそろそろ多分3年が経つ。


これはいつまで続くんだろう。


私の気力はそろそろ尽きそうだ。





そんな時、久しぶりに公爵様がやってきた。


「目も黒くなってすっかり小悪魔族だな。汚らわしい」


私の様子を見て鼻をつまみ、嫌そうな顔をしながらそうな事を言う公爵様。

そして、私の前にポイと袋を放り投げた。



何だろう?固いものがいっぱい入ってる音がする。

      


「開けてみろ」



公爵様の命が出て、私はゆっくりと袋を開けた。



「…え」







ツノだった。



ツノが何十本も。



あ、あ、、見覚えがある。

すごく、見覚えがあるツノが、ある。


これ…



この模様は…



         


「…ぉ…父…さん」




父のツノだった。お母さんのも、あった。



小悪魔族のツノは頭蓋骨から生えてる。

だからこんなの取れる訳がない。絶対に。生きてたら、絶対に無理だ。


私は震える手で2本のツノをギュッと握り、ゆっくりと公爵様の顔を見た。


公爵様はニヤニヤと笑みを浮かべていて、満足そうに言った。



「貴様の罪は、代わりに家族に償ってもらったぞ。ついでに汚いあの村も全部炎で消毒しておいた。感謝しろ」




……ぅ



「あ…ああああぁぁああああーーーーーーっ!!!!!」




嘘、 


嘘、嘘嘘嘘嘘嘘!!


何で?何で何で何で何で何で何で、何で、何でこ、んな、こと…?


お父さん、お母さん、村のおじちゃん、おばちゃん、ミッちゃん、マー君、みんなみんなみんな、何で?

死んだ?殺した?誰が?公爵様が?…私が?


私が殺した…の




「…ごめん…なさ…い……」



「フハハハハハ!こいつは傑作だ!見ろ、こいつ黒髪が真っ白になっとるぞ!」



何も考えられない頭の上で笑う声がする。

何を言ってるのか全然頭に入ってこない。



「ふう。何にしろ、貴様の運命は明日決まる。貴様は明日で15歳になるな。よって明日、貴様には成人の儀を受けてもらう」


「そこで使えるスキルがあれば生かすし、なければ首を刎ねる。ふん、生きる機会をやるのだ、泣いて感謝するんだな」



…何を言ってるの。

私はもう限界。生きる?何で?何のために?

意思とは無関係に涙が溢れてきて、涙で窒息しそうだ。




「ああ、そうそう。貴様と仲良しだったあの執事のガキな。手足を切り落として街の外に追い出したからな。反逆者の仲間を排除できて清々したわ」




…何も分からない。考えたくない。



私は。


私は———




             

〜〜〜




「では、これより成人の儀を始めます」


「うむ。さっさとやれ」



牢屋越しに神官服を着た人が私に何かブツブツ言ってる。


何だか体が暖かい。

頭の中で声が聞こえる。


でも分からない。


スキル?知らない。

何でもいい、好きにして。




「無事、終わったようです」


「うむ、では鑑定水晶で結果を見ろ」


「はい。…ええと、【共感】【黒霧】…あまり聞いたことがありませんね。それと…えっ!な、何と、召喚があります!しかも【水・土精霊召喚】です!に、二種召喚とは、これはかなり珍しいですよ!」


「おお!でかした!!フハハ!おい貴様、聞いたか!?運が良いな、生き延びたぞ!」



何?


何言ってるのこの人達。


もういい。早く楽になりたい。

お父さんとお母さんに会いたい。



…前世のお父さんとお母さんにも、会いたい。死ねば会える?

またアニメ見て漫画読んでスマホいじって、それで、それで…



「確か今は土精霊が足りなかったな。よし貴様、土精霊を召喚しろ。今すぐだ」



頭が回らない。ボーッとする。

何?召喚?


分からない。



「…【土精霊召喚】…」




私の口がそう動いた時、床に魔法陣みたいな模様が浮かんだ。


そして目の前に黄金の光が集まり、目も開けられないくらい眩しくなった。




そして光が収まった時、私の前には精霊?がいた。


すごくムキムキの体をした、濃い顔の精霊。

一番特徴的なのは、頭の形が小学生が描いたみたいな、アレな形をしてるってところ。



そしてその精霊は言った。


その言葉を言ったんだ。


      


「我と契約して、魔法少女になろうぞ」




そんな言葉を聞いて、私は涙が出た。

そして笑ってしまった。



「あは…。インキュベートする、白いやつじゃないんだから」



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[一言] 温度差で風邪ひくwww
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