018 ウンピコの等級
オリマスさんとイズールさんが宿屋へ来たのは、街へ戻ってきてから一日明けた次の日だった。
申し訳なさそうな二人が言うには、召喚した精霊を一度神殿へ連れて来るようにと指令が出た、との事だった。
おそらくあの異常な魔力値が信用されなかった為だろう。そりゃ誰だって信じないよな、前例が無い訳だし。
了承した俺たちは皆で神殿へと向かった。
またウンピコが頭に乗ってこようとしたが、元気になった俺はしっかりとガード。諦めて肩に乗ることで納得したようだ。
…ん?これ、結局目立つからどっちでも変わらないんじゃ…。
そうして俺たちは、上級居住区の入り口前にある精霊神殿へと到着した。
精霊神殿には毎日多くの人達がやってくる。
その大半は精霊神の神像へ祈りを捧げる人達で、冒険者や商人が多い。あとは神官からの説法を聞きにくる人とか、種族進化の儀式を受ける人って感じだ。
種族進化っていうのは、規定のレベルに達した人間が種として一つ上の存在に進化することだ。
俺みたいな唯人族だったら、次は剛人族に進化できる。
レベル10、30、60で計3回の進化が出来るらしく、その進化のための儀式を行える場所が神殿という訳だ。
人でごった返している神殿の中、俺たちは一番混んでいる大聖堂の手前を曲がり、神官長の待つ執務室へと向かう。
途中何人かの神官とすれ違うが、俺の肩の上に鎮座するウンピコを見た瞬間、皆一様に固まってしまった。
後でヒソヒソ噂話するんだろうなぁ…。
そして気品のある扉の前へと到着した俺たち。オリマスさんがコンコンとノックし、「失礼します」と扉を開いた。
中にはすごく長〜い帽子を被った初老の男性が立っており、俺たちを待っていた。
「皆さんようこそいらっしゃいました。
私が神官長のステイブです。以後、お見知り置きを」
と挨拶をされ、「よろしくお願いします」と皆揃って頭を下げる。
「オリマス、イズール。この子が?」
「ええ、彼が召喚士ネクスです。そして…隣のお方が精霊ウンピコ様です」
そう言って皆一斉に俺を見る。いや、肩の上のウンピコを見ているのか。
「うむ、俺が精霊ウンピコだ」とウンピコが発言すると、ステイブ神官長は深々と頭を下げた。
俺の肩に集まる視線に緊張していると、ステイブ神官長がやや重たい口調で問いかけてきた。
「それで…初回の召喚にも関わらず魔力値が3万を超えていたというのは本当なのですか?いえ、疑っている訳ではありませんが、何分今までに前例が無いものでして…」
「いえ、当然そう思いますよね。でも、どうやってそれを証明すれば良いのか」
と俺が返すと、ステイブ神官長は目盛りの付いた細長い道具を手に取った。
「これは相手の魔力を測ることの出来る魔道具『魔力はか〜る君ハイパー』です。上位の精霊様にも対応しており、何と3万まで数値化する事ができるんです」
この神官長、口では色々言ってるけど、俺の言ってることを信じていないみたいだ。
俺は3万超えてるって報告したのに、3万が限度の魔道具を持ってきたのがいい証拠だ。
「では…」と神官長が魔道具をウンピコに近づけ作動させた。
その瞬間、魔道具の針がグルン!と一周回り、その針がボヨョ〜ンと飛んで神官長の鼻の穴に刺さってしまった。
精密な魔道具は魔石を多く使ってるから、壊れる時は派手に壊れると聞いたことがあるけど、こういう感じなのか…。
悶えながら紙を丸めて鼻に詰める神官長を見ながら、俺はそんなことをボーッと考えていた。
「コホン…。お見苦しいところを見せてしまい、大変申し訳ありませんでした。では、改めてこちらの『魔力はか〜る君ウルトラ』にて計測させて頂きます」
鼻に紙を突っ込んだ神官長が改めて手にしたのは、魔力値を8万まで測れるという魔道具。最初からそれ使えよな…。
再計測をした神官長は「おお、確かにこの数値は…」と目を見開き、結果を紙に記録した後、改めてこちらに向き直った。
「無事確認が取れました。只今よりウンピコ様を4級精霊と認定させて頂き、各地の神殿にもそのように通達致します」
と告げる神官長。
4級精霊が一体どんなものなのかよく分からない俺は首を傾げたが、丁度ウンピコが「4級とは何だ?」と疑問を口にし、神官長はそれに答えた。
「級というのは格付けの目安にございます。それぞれの能力によりますが、大まかに下位精霊様は5、6級。中位精霊様は3、4級。上位精霊様は1、2級といった具合に区分けされます。もちろん6級の精霊様でも一般兵士1000人分の戦力があると言われていますので、6級でもかなりの強さであるということをお忘れ無く」
「そしてウンピコ様、あなた様の魔力は3万を超えている。上位精霊様でも2万前後である事を考えると、この数値は実に異常なのです。何せあなた様は初めて顕現されたとのこと。この先の事を考えると正直私は恐ろしくてたまりません」
と言い額の汗を拭う神官長。
そ、そんなに凄いやつなのか、こいつが…。
チラリと横のウンピコを見ると、顔はいつも通り無表情だが、体が超小刻みに震えている。こいつ…嬉しがってるのか?
「そしてあなた様の魔法は威力が凄まじく、発動、操作も非常に精緻で美しいと、オリマス達から聞きました」
「しかしながらあなた様はまだ顕現されたばかり。経験も浅く、何より召喚者の能力が低すぎるのです。この先、魔物を討伐して共に成長して頂きたい」
「以上のことを加味し、今回はウンピコ様を4級精霊と認定させて頂いた次第でございます」
説明を終え、ペコリと一礼する神官長。
「そうなりますと神官長、任地はどこに…」
とオリマスさんが発言すると、「そうですね…少々お待ちください」と神官長が執務机の引き出しをゴソゴソとし始めた。
疑問符が頭にある俺たちをよそに、「ふむ…ここが適任ですかな」と言い、一枚の地図を手に神官長が戻ってきた。
またもウンピコが「任地とは何かね」と質問すると、神官長はまた恭しく頭を下げ地図を広げた。
「召喚に成功した者は、精霊様が滞在されている間、強力な魔物がいる地へ赴いていただきます。国内の目ぼしいポイントは我々の方で把握してあり、各地の脅威度もランク分けしてあります。精霊様にはそのランクに見合った場所へ行って魔物を駆除して頂くことになります」
そして神官長は広げた地図を指し、話を続けた。
「そういう訳でして、ウンピコ様にはこの魔境都市アニアンへ赴いて頂きたいのです。この都市の近くには三箇所の魔境がありまして、その内の一つであるBランク魔境を任地とさせて頂きます。もちろん冒険者ランクがBランク以上でないと入れないところです。今回ネクス殿は召喚中限定ですが冒険者ランクをAランクに上げるよう、ギルドへ通達しておきます」
「そして、その魔境での任期は、まずは一年となります。一年後、残りの魔力や周囲の状態を見て、次の任地が決まるという流れになります。その時になったら、アニアンの神殿にてご確認ください」
そしてこれは当面の資金になります、と神官長から金貨袋を渡された。
一応毎月神殿から給金が貰えるということなので、アニアンに行ったらしっかり神殿に挨拶に行かないとな。
そして「大事なことを忘れていました」と、金色の下地に白金の細工で装飾された玉を渡された。
中央は茶色い紋様になっており、とても豪奢だ。
これはウンピコが入れなかったあの玉(精霊球)の上位精霊用のものだという。魔力値的にこれくらいのランクじゃないとダメなんだとか。
「では、忘れずに冒険者ギルドで手続きをなさって下さい。それでは、お早めの出発をお願い致します」
深々と頭を下げる神官長にお礼を言い、俺たちは神殿を後にした。
金貨袋を開けてみると何と50万ペスも入っていて、皆でビックリしてしまった。俺たちの所持金3万ペスだったんだぜ…ビビるよそりゃあ。
「よし、それじゃ色々と準備が必要だな。冒険者ギルドも行かなきゃならないし、色々と買い出しもしないといけないな」
と俺が切り出すと、。
「これだけお金があったらいい弓が買えるわ!私、欲しかったのがあるのよね〜」
とヴィーカ。
「いいや、このお金は防具に回すべきでヤンス。オイラたちはこれからBランク以上の魔境へ行かなきゃならないんでヤスよ。今のオイラたちは実質Eランクの実力。せめて命を守るための強力な防具が必要でヤンス」
おお、ニクソンはやっぱり冷静だな。ヴィーカも「確かにそうね…死にたくないわ」と頷いている。
「そうそう、武器や防具を買うならアニアンで買った方が良いよ。あの街はここより規模が大きいし、魔境都市っていうくらいに冒険者が集まる街でもあるから、きっと高性能の武具が売ってるよ」
とパックが言い、皆それで納得した。
あとは冒険者ギルドに行って手続きして、アニアンの街への行き方を調べて、必要物品の買い出しか。
と予定を考えながら肩の上のウンピコを見ると、何だかボーッとしているようだ。相変わらずよく分からんやつだな。
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