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019 旅程

ふむ、どうやら俺の等級は4級精霊とやらに決まった模様。


4級ね、いかんせん下っ端感は否めないが、飛び級だったことについては素直に嬉しい。まあ、クールムーブを貫くためにも喜ぶ顔なんぞは見せんがな。



しかし、任地がBランクねぇ…。

いや、俺は全然大丈夫よ?何なら一人でもいいくらいだよ。

問題は他のやつらだ。あいつらって確か冒険者ランクEでレベルは7くらいだったよな…。


ううむ…つまりはコレ、俺によるパワーレベリングをしてね⭐︎って事だよな。共に成長、とはよく言ったもんだ。


以前ゲーム内で、リアル金によるパワーレベリングの依頼は何回かあった。 

ステータスを上げるだけなら時間効率は確かにいいと思う。でも結局、戦い方が身に付いてないからその後の鬼畜ダンジョンとかでついて行けず、最終的にゲーム自体を辞めてしまうのだ。  


ではこの世界ではどうだろう。

パワレベにて高ランクのレベルやステータスをゲットしたところで強魔物の討伐依頼。

例えば、何らかの理由でその時精霊が不在だったとする。では精霊抜きで強敵と相対した、その結果は?

…うむ、良くない結末が想像出来てしまうな。


ネクスとはまだ付き合いが浅いが、俺のせいでこの先困る事にはなって欲しくないな。

うん、よし。最初にある程度レベル上げたら、ちゃんとこいつらにも戦わせて経験を積んでもらおう。



こんなことをボヤ〜ッと考えていたら、ネクスが訝しげな顔で俺を見てきた。

おっと、いかんうかん。頭を切り替えねば。



「そういえば、さっきもらった玉。あれ使ってみようよ!」


とヴィーカが提案した。

すっかり忘れていたようで、「ああ、そういえば」とさっき腰に付け替えた豪華な玉を手にするネクス。 


それをおもむろに俺へ近づけ、「ほら、入ってみろよ」と玉を俺の顔に押し付けてきやがる。

少しイラッとしたがそこは大人。話に乗ってやり、玉の中央の茶色い部分へ意識を集中させた。


するとやはりグィーンと吸い込まれるような感覚が俺を襲い、気がつくと俺の体は密閉空間にいた。


あ…でもこれ、何かちょっと気持ちいいかも…。

優しくフィットしててすごく安心する。玉の中、暖かいナリィ…。


そして外へ意識を向けると、ネクスの腰のあたりからの視点で外の様子が見えた。おお、こりゃ便利だわい。



「うむ、中は快適だぞ。外もしっかり見える」


と俺が話すと、「おわっ!」とネクスがビックリしてた。



「そ、その状態で話せるのかよ!ふう…ビックリさせんな」


と焦りながらも、どうやら俺が街の奴らから見られなくなったことに安心した様子だ。

ちっ、つまらん。今度ここぞという場面で登場して嫌がらせしてやろう。




そして一行は冒険者ギルドに到着。


カウンターにて無事、限定Aランクの冒険者証を受け取ったネクスは、やけにニヤついていた。うへキモッ。


限定というのは、精霊を召喚している間はAランク、不在の時は元のEランクという事らしい。でもどの道、高ランク魔境で魔物狩りしてたら依頼達成でどんどん元のランクも勝手に上がっちゃうんだろうな。


うむ、やはり俺がしっかり鍛えて、ランクに見合う実力にしてやらねば。


そして「何ぃ〜〜!?お前みたいなガキがAランクだぁ!?」とかいうテンプレイベントも起きなかった。

というか他の奴らも知ってたみたいで「頑張れよ!」とか言って応援してたし。


クソッ!チンピラに絡まれたところで俺が尻(実際は腰)から登場。「こ、こいつクソ漏らしやがった〜〜!」と大騒ぎになって『Aランク冒険者、チンピラに絡まれて脱糞!』みたいなニュースにしてやろうと思ってたのに!



そして冒険者ギルドを後にした一行は、食料の買い付けなどの旅の準備を済ませて、宿へと帰るのだった。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




「では皆、気をつけてな」


「パック、皆をしっかり守ってあげるんだよ」



そう赤緑のおっさんズに見送られ、馬車に乗り込んだネクス一行。

人数が多いとマナが分散されすぎて成長が遅くなる、という理由で、おっさんズの同行はここまでになったらしい。まあ元々デーコンに勤めてる騎士らしいしな。



「では行ってきます。師匠、本当にお世話になりました」


そう言って4人は頭を下げ、一行を乗せた馬車は出発した。

いや、馬ではないな…何コレ?どうみてもでっかいハムスターだわ。ハムスターが2匹。

玉の中から「この生き物って何なの?」と聞いてみたら、「これはポワポラットですよ」とパックが教えてくれた。ポワポラット…名前も可愛いじゃないか、俺からするとけしからんね。



そして馬車、もといハム車は予想に反して中々のスピードで進んでいった。

道は舗装などされておらず、踏み固められた地面なのだが、意外と揺れも少なく、中の4人も快適そうだ。



「このラット車は神殿からの借り物でヤンスからね、丁寧に扱わないと」


「むー、ラットは可愛いし、乗り心地も良いんだけど、アニアンまで2日かぁ…やっぱり遠いわよね。デーコンの街にもBランク魔境があれば良かったのにな」


「デーコンの街にはEランクの小魔の森しか無いからな、仕方無いだろ、我慢しろよ」


そんなネクスたちの会話を聞きながら、半日ほどハム車に揺られる。


「そろそろ暗くなってきやしたね。今日はここまでにして、そこの岩陰で野営にするのがいいでヤンス」


そう言ってニクソンが道の脇にある大岩あたりを指差し、野営の流れとなった。


ネクスとパックが簡易テントを組み立て、ヴィーカが魔道具で火を起こす。そしてニクソンが食材を出し、夕食の準備を始めた。


気分転換に玉から出た俺はニクソンの横でジッと調理の様子を眺めていた。


何せ初めて見る食材ばかりなのだ。

肉の塊は良いとして、黄色い根菜、紫と赤のまだら模様の葉物、トゲトゲした芋など、異世界の野菜に見入ってしまう。



「ニクソン、この黄色いぶっとい野菜は何だ?」


「それはダイクンでやすね。デーコンの名産品でやすよ。ほのかな甘味が特徴でヤンス」


「ほう、見た目は黄色い大根だな。ではこっちの野菜とこの芋は?」


「その葉っぱはカベツで、こっちの芋はパキイモでヤンス。どっちも一般的な野菜でヤンスね」



「ほぅ…」と興味津々で見ている俺をよそに、芋のトゲをパキパキと折っていくニクソン。

このトゲは食感が良いから最後にスープへ入れるでヤンス、と教えてくれた。面白いな。



「生で食べても結構美味しいんでヤンスよ。試しに食べてみやすか?」


と聞く二クソン。

そういえばこの体って買い物食えるんか?内臓無いし、さすがに無理だと思うんだが…ううむ。


俺は触手でパキイモのトゲを受け取り、じっと見て、とりあえず口に咥えてみる。あ、これ無理だ、本能的に飲み込めないって分かるね。構造的にも無理だわ。


そう諦めようとした時、俺は咥えた野菜の中にとある感覚を感じた。

あれ…これ…金色だ。うす〜くキラキラした金色のやつが入ってる。

これは…もしかしてマナ?前に魔物倒した時に体に入ってきた金色のやつじゃね?

あ、それと…魔素もだ。魔素の感じもちょっとだけする。こんな形で魔素を摂取できるのか?


しかし何で芋の中にマナと魔素が?と思いながらも、芋をチュウゥ〜ッと吸ってみる。

すると、本当にうっすらボンヤリとだがマナと魔素が吸収できたのだ。味は何にも感じないんだけど、何というか…そう、満足感をちょっとだけ感じる。


そして吸った芋のトゲはポロポロと乾いて崩れ去ってしまった。

ふむ…そうか、作物の中には超微量だけどマナと魔素が存在したのか。

もしかして人間はこうやって魔素を取り込んで魔力の回復してるのかね。


そして今度は丸ごと一個のパキイモをニクソンからもらい、同じようにチュウゥ〜ッと吸う。

目の前で芋がシワシワポロポロと崩れていく様子をニクソンは目を丸くして見ていた。


ふう、と全部吸い切った俺はステータスを見てみたが、残念ながらマナも魔力も全く増えていなかった。うむむ、単純に量が足りないのか、そもそも質が違うのか、よく分からないな。



その後、肉を切ろうとして「ナイフの切れ味が悪くなっちまったでヤンス」と困っていたニクソンに鋼鉄のナイフを生成してやると、自分の武器よりも上等でヤンス!と喜んでいた。

でもそれ、込めた魔力が切れたら消えるぞ、と伝えたらかなりガッカリしていた。


その様子を聞きつけたネクスが「俺にもカッコいい槍作ってくれよ!」と調子に乗って言ってきた。

俺は虫歯菌が持ってるようなほそ〜い三又の槍を土で作って渡したが、「何でだよ!ダセェよ!」とすぐにポッキリ折りやがった。

頭に来たので魔力触手でカンチョーしてやった。



いつの間にかニクソンが切った具材を鍋に入れ、それをを火にかけたヴィーカが「ごはん出来たよー」と皆を呼び、夕食となった。 


一応俺も鍋を一杯もらい吸収してみた。

スープの水分まで枯れ果て、干からびた具材がポロポロと砂のように崩れていく。だが、やはりステータスに変化は無かった。


俺の吸い込みを見ていたニクソン以外の三人は目を丸くしていたが、「…まあ、ウンピコだしな」というネクスの一言で何だか納得されてしまった。解せん。


食事らしきものを終えた俺はチュルンと玉の中に入り、ふうと一息つく。



「…こいつは本当によく分からんやつだ」



というネクスの笑い声を聞きながら、俺は自然と口元に微笑を作り、ゆっくりと休眠していった。


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