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社会不適合者達による成り上がり英雄譚  作者: 鳩理 遊次
二章 貧乏鍛治師と始まりの出会い
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2章 59話 忘れられぬ過去は灰の上に

(何でこんな昔の記憶が…)


意識が朦朧としつつも目が覚めると、懐かしい記憶にオストは困惑する。

何より何故こんなところで寝ているのかも気になる。

あいも変わらず汚い廃墟に暗い空。

寝転がっている場所が地面なのかゴツゴツして痛い。

確認した訳では無いが、それだけで恐らく自身は地面に寝ているのだろうと寝ぼける頭で考える。

だからこそ昔の夢を見たのだろうと考える。

首を少し動かすと、焼け落ちた廃屋が視界に入りどこか見覚えがあった。

どこだったかと思い出すと、跳ねるように上半身を起こす。

周りを確認するとすぐそこには焼け焦げた灰の山が目に飛び込む。


(嘘だろ、どうしてこんな…)


状況が飲み込めずに唖然としていると、不意に灰の山の一部がガラリと崩れ落ちる。


「メル!?」


安否の分からぬ幼馴染の名を呼ぶも、そこから姿を表したのは全身真っ黒になっていたシナであった。

そして、姿を確認した事で全てを思い出す。

帰る場所、家が燃えていたこと。

それを見て飛び込もうとしたオストを、シナが押さえつけて気絶させたことを。

考えるよりも先に体が動きシ、ナに駆け寄ると胸ぐらを掴み低い声で問う。


「メルは!メルはどうなった!」


「わからない」


「分からないってどういう事だ!助けられたんじゃないのか!」


「ごめん」


「ふざけんなよ。じゃあ何で助けられたかもしれない時に俺を止めたんだ!あの時なら…メルを、助けられたかもしれないだろ…」


オストは絞め殺す勢いで胸ぐらを掴みながらも、言葉の最後の方になると力が抜けて行くように膝から崩れ落ちる。

これがただの八つ当たりなど承知している。

どうしようも無い怒りがあるが、それ以上に自身の無力さが許せない。


(俺はまた、失うのか…)


失意の渦に飲まれかけていた。

シナは襟を適当に正すしゃがみこみ、オストの肩に手を置く。


「まず落ち着いて聞いて欲しいんだけど、僕はメルを助けることは出来なかった。多分生きているよ」


「本当か!?」


シナがそう零すとオストは反射的に顔を上げる。


「今あの中を探してきたけど、人っぽい物を見つけられなかった。だからどこかに避難していると思うよ」


「そ、そうか…」


その一言を聞くと、オストは張り詰めた心が解放されてその場にへたり込み、大きく息を吐く。

焼け跡を改めて見てみると、かなり荒らしたようで所々に退かしたであろう焦げた木材が積まれていた。


「わるい、冷静じゃなかった。あれも俺を心配してやってくれたことなのに、ありがとうな」


「いいよ気にしなくて。大切な人のために本気になれる人の方が好感持てるし」


一先ずは、シナの言葉のお陰で冷静さを取り戻す。

しかし、メルが見つかった訳でもなく、もしかしたら怪我をして動けない可能性もある。

これは何かあったと考えるのが妥当だ。

そう思うと居てもたってもいられないのか、オストは体を起こし聞き込みに行こうと人集りに向かおうとする。


「無駄だよ。もうここら辺にいた人はソボックくんが聞き込みをしたあとだから」


「だがッ!」


「まず落ち着いて。一旦集まってからの方が早いよ」


「そのことなんだが俺から話がある」


急に第三者の声が聞こえてきたので二人が道の方に視線を向けると、神妙な顔をしたラフスが立っていた。

当然ながら、オストはお前が何故ここにと疑問に思いながらも、混乱する頭でひとまず声をかける。


「ラフス、どうしたんだ」


「昨日お前の家が火事にあったのを聞いてな、仕事を切りやめて来たんだ」


「そうか、ありがとうな」


「礼はいらない、それよりもこれを見てくれ」


そう言うと手に持っていた手紙をオストに差し出してくる。


「これは?」


「最初この中身を見る前に絶対に暴走しないことを約束してくれ」


「どういうことだ?」


「端的に言う。メルが拐われた」


「拐われた!?」


拐われたと言う一言を聞いた瞬間、驚愕の表情で聞き返す。

次の瞬間には張り詰めたように顔を歪めると、頭よりも先に体が動く。

予想通り、ラフスはこうなるかとオストの前に立ち塞がろうとするが、それよりも早くシナが肩を掴む。


「ほら落ち着いて」


「詳しくは手紙を見てくれ」


ラフスから手渡されると、破るように手紙を開けて中身を読む。


●


私達の情熱的なプレゼント気に入ってくれたかな?

私達はリキシア王国革命派だ。

要件は君の持っているその本を返して欲しいんだ。

おかげで予定も大きく狂ってしまっており、更には中々強い護衛を雇っているそうじゃないか。

こちらとしても、こういう手段に出なくてはならなくなったのは不本意だということを知って欲しい。

本の中身を見て使用者にならなければ渡してもらうだけで解決出来たのだが生憎、使用者の変更方法は私達も知らないため君の身柄ごと貰い受けたい。

そのつもりがあるのなら下記の場所にやって来るように。期限は明後日の日没までにしよう。ちなみにそちらに居る護衛の方は遠慮願いたい。

断るというのなら、君の家に居た可愛い娘の安全は保証できないのでそのつもりでいてほしい。

色良い返事がもらえると期待している。


●


「なんだよこれ…」


「人質になっちゃったか」


「助けにいかねぇと!」


考えるよりも先にオストは走り出すが、またも襟を掴まれることにより阻止される。

その際に「グェッ!」とカエルが潰されたような音が出たか、今は気にする余裕はない。


「オストくん、君が行ったところでどうするの?このままだと両方助からないよ」


「ゲホッゲホッ!」


「聞いてる?」


「お前が襟を掴んでて息できねぇんだよ!」


「おーい」


「離してやれよ!」


止めるまでは良かったのだが、その後も襟を離さずにそのまま振り始めるという鬼畜っぷりを発揮しする。

それを見かねたラフスが止めにかかる。

お陰で空気を吸えるようになったオストは、咳き込み呼吸を整えるとまたもシナに掴みかかる。


「これで落ち着いたでしょ」


「もっと他の方法にしやがれ!」


「ダメだ、もう一回ほど試す必要が…」


「するなッ!」


とりあえずのところ、怒りが焦りを超えたため今すぐ走り出すということは無なる。

冷静とは違うが、何度走り出そうとしても止められるのは学習した。

しかし、もっとやりようがあったのでは無いかと思うがそこは所詮シナスペックなのだ。

やることがサドである。


「オストさん、目が覚めたんですか!」


「ソボック!」


二人でじゃれ合っている(オストに限り真面目)とソボックが声をかける。


「すみません、僕もあのままオストさんを火の中に飛び込ませるのは…」


「こっちこそ迷惑かけたな」


「お互い様ですよ」


「ところでソボックくん、町はどうだった?」


「そうですね。どうやら革命派が急に動きが活発化して来ていますね、オストさんの家以外にも燃やされている家があります。貴族街なんかは被害が酷いらしいですよ。それからメルさんは見つかりませんでした…」


未だにメルの安否がわからないソボックは、オストを横目に言い淀む。

しかし、それは今しがた居場所は分かったので問題は無い。


「ありがとう。それなら、メルちゃんの事は場所が分かったから気にしないで」


「そうなんですか!?」


町の様子を伝えたあとに、代わりにシナがメルについて説明する。

最初はまさか、ここから動いて居なかったオストとシナが先に見つけたのに驚きながらも、期待するように話を聞いていた。

しかし、雲行きが怪しくなり、最後に結論を聞くと顔を伏せる。


「メルは今反乱軍に捕まってる…」


「そんな!」


「だから俺が今から助けに…」


そう呟くと決心を固めたように拳を握る。

さっきシナに言われたように無策で突っ込んでいたら、オストがただ捕まるだけになっただろう。

だが、シナのおかげで少し頭が冷えたことで一つ策も思いついた。

ここに来る途中にシナがこの本を燃やせばと言っていたのだが、こうなればそれも一考の余地が生まれた。

それを敵の前でやろうとすれば交渉の余地は生まれる可能性はある。

そうなれば、少なくともメルだけは助けられるはずだ。


「まぁ待ちなよ。ここはボクにまかせなよ」


「お前に任せるのが一番不安なんだよ。それよりも俺がこれで脅迫すればメルは助けられると、思う…そのあとにメルの事を頼みたい」


「そんな、それじゃオストさんが犠牲に」


「だけどこれしか手段が…」


オストとしても死にたい訳では無い。

しかし、これ以外に取れる手段は思いつかない。


「いや、手段はある」


その思っていた時に、静観していたラフスが言う。


「本当か!?」


「ああ、幸いこちらにも戦力はいる。つまり、メルを革命派にバレないよう助けちまえばいい」


「そんなことが出来るわけ無いだろ」


「俺は今でこそこんなんだが、昔は騎士の隊長をしてたんだぞ。そんな俺を不意打ちとはいえあっさり倒したこいつも居るんだ。不可能じゃないはずだ」


普段の態度で忘れ勝ちになるが、ラフスは元々この国の騎士団で隊長をしていたのだ。

騎士団の隊長ともなるとそこら辺にいるような兵士より余程強く、革命派の雑兵に遅れをとることはないだろう。

更に、ラフスを一撃で倒してしまったシナもいる。

二人を戦闘階級に当てはめるなら、ラフスが上級、シナに至っては超越級にとどきうるとオストは思っている。

これは自分の問題だから一人で解決する予定だったから思いつかなかった。

だが、確かに潜入してメルだけを助け出すだけなら出来るかもしれない。


「それだとお前らに迷惑が」


「オスト、おらぁお前には借りが数えられないほどある。こういう時だけお利口ちゃんしてんじゃねぇぞ。みずくせぇ」


「元を言えばボクのせいで追われ始めた訳だしね。それに仲良くなったのに危なくなったらさよならは薄情過ぎてボクは好きじゃないんだ。手伝うよ」


「僕は強くないですけど…それでもオストさんを見捨てることは僕にはできません」


そう三人から言われ、思い詰めた顔をしていたオストは大きく頭を下げ。


「三人とも俺に力をかしてくれ!」


それに三人は各々返事を返した。

各々が異なる感情を抱きつつも、果たすべき目的を見定めると言う一点を誓うのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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